ISSN2189-1621 / 2011年8月27日創刊
歴史学に VR技術を利用する実験をやってみようか。そう考え始めたのは、2年ほど前のこと。カイロ留学組の先輩でもあり、研究仲間でもあった亀谷学氏(弘前大学、イスラーム初期史)が、飲み会の席で、歴史学でもVR 技術の応用について考えていく必要があるのではないか、という話題を提供してくれたのがことの始まりだった。VRについて突如として考えさせられることとなったそのタイミングで、帰宅途中に聞いていたラジオから、藤村シシン氏による『アサシン クリード オデッセイ』(ユービーアイソフト、2018年発売)の解説が流れてきた。3Dで描かれる古代ギリシア世界がいかに高い精度で再現されているかについての同氏の解説を聞き、興味を持った。そして後日、プトレマイオス朝エジプトを舞台にした『アサシン クリード オリジンズ』(同、2017年発売)を購入した。エジプト史研究者としては、古代エジプト世界を見てみたいという気持ちがあった。
いずれの作品にも、「ディスカバリーツアー」と呼ばれるコンテンツが追加されている。これは、古代の世界を巡りながら、当時の歴史や文化についての解説を得ることができるというものだ。例えば、『オリジンズ』では、かの有名なアレキサンドリア図書館を訪問し、そこで当時の図書館についての情報を得ることができる。また、鷲に変身して上空を飛び、鳥の目で街を探索することも可能だ。注目すべきは、そこで得られる情報の専門性の高さであり、単に娯楽としてのゲームの域を超えている。それもそのはず、これは歴史研究者の協力を得ながら制作されたものなのだ。教材として使われることも想定されており、「ゲームの世界観を楽しみながらインタラクティブな体験ができる点が、教材として楽しんでもらうための重要なポイント」とされている[1]。文字情報と画像情報の組み合わせに、体験・参加型という要素が加わっていることが、同コンテンツの成功の秘訣なのだ。
これにインスピレーションを受けて、2019年度に、小さなプロジェクト「Qalawun VR Project」を立ち上げた[2]。メンバーは皆、VRには縁もゆかりもない歴史研究者だ。専門的な基盤がない筆者には、VRの専門家と知り合う機会がなかったためだが、まずは素人でもできるところから始めよう、という前向きな気持ちで発信した。そして、エジプト・カイロにあるカラーウーンの寄進施設の VR 化に目標を設定した。カラーウーンというのは、中世マムルーク朝(1250–1517)のスルターン(君主)の一人だ。彼が寄進した病院・学院・廟からなる施設は、カイロの歴史的建造物の中でも壮麗さに秀でている。また、ほとんどの寄進施設が宗教・教育施設であるのに対し、この寄進施設は当時中東随一とも言われた総合病院を擁したことも特長である。このような歴史建造物を題材にして、VR技術を歴史研究や教育にどのように活かすことができるのかについて問うことが、プロジェクトの目的である。
まず、同寄進施設の全天球画像の撮影と、パノラマ・ツアー作成の2点に取り組んだ。機材は、手の平サイズの小型カメラである RICHO THETAZ1(2019年5月発売)を使用した。エジプトでは、テレビ用カメラなどの大きな撮影機材を使用するには許可が必要になり、許可の取得には相当な時間と労力を要する[3]。厄介なのは、パノラマカメラがまだ普及していないエジプトにおいて、それが許可を要する機材であるか否かのグレーゾーンに位置しているという点だ。そこで、携帯のような見た目の同機材を選定したのだった。
国内で何度か撮影実験をした後、2019年8月末に筆者を除くメンバーが灼熱のカイロに集結して、撮影を行った。メンバーの一人で、エジプト考古省に務めた経歴を持つモハメド・ソリマン氏(立命館大学、中世エジプト史)が現地の役人との交渉に当たってくれた。撮影を速やかに終わらせるという条件が出されたものの、計画していた撮影ポイントの一部を除いて、2日間にわたり撮影を行うことができた。その際、一眼カメラでディテールを撮影した。このとき撮影できなかったポイントについては、筆者が2020年2月に現地に赴き、撮影した。やはり、速やかに終わらせるという条件の下ではあったが、撮影ポイントを補完するという目的は果たせた。
パノラマ・ツアーの制作は Pano2VRというソフトを用いたが、マンパワー不足であることからツアーの構造的な部分は業者に委託し、メンバーはコンテンツをまとめる作業に専念した。ツアー内では、パノラマ画像にインフォメーション・マークを置き、それをクリックすると、その場所に関連する解説と一眼カメラで撮影した画像が表示されるようにした。解説は、建築史を専門とする深見奈緒子氏(日本学術振興会カイロ研究連絡センター、イスラーム建築史)が手がけた。また、プロジェクトサイトには、同寄進施設や時代背景に関する基礎情報をまとめた。2020年3月末、大量の文字情報と画像情報に押しつぶされそうになりながらも、なんとかウェブサイトの公開に漕ぎ着けたのだった[4]。
初年度にできることは限られているとはいえ、課題は山積している。まず、パノラマ・ツアーは、未だ VR ゴーグルに対応していない。これは筆者の怠慢によるものであり、早急に対応させたいと思っている。次に、体験・参加型という要素について考える必要がある。確かに現状でも、自分で施設内を歩きながら情報を得るという点では体験・参加型にはなっているが、そこにはある程度の自発性が要求され、まだまだハードルが高い。おそらく、ツアーに欠けているのは、ストーリー性ではないか。何かしらのミッションが与えられて、それをクリアーすることにより、求めていた情報が得られるという展開だ。これは一見ゲームが得意とするものだが、考えてみれば研究も同じ過程をたどる。最後は、果たしてこのようなツアーは研究に役立つのだろうかという問題。結論から言えば、ある。立体物やその中に収められたコンテンツを、文字情報や写真で記録・表現するには限界がある。とりわけ臨地調査が極めて重要な建築史などの分野では、現場に赴かずとも調査地の情報を効率よく取得できる同ツアーの試みは、分析と成果発信の両面において可能性を秘めている。
2020年8月1日、国立情報学研究所の高野明彦氏のディレクションによる有志チームによって運営される Cultural Japan が公開された[1][2]。
このサイトは、「世界中の美術館、博物館、図書館などで公開されている日本文化に関連する情報を集約して共通のフォーマットに変換し、利用しやすい形で提供することを目的」とし[3]、「世界の主要文化遺産機関およびポータルから収集したデータをRDF に変換し、ジャパンサーチの SPARQLエンドポイントから取得したデータと合わせて、検索アプリケーションを通して提供」するものであるという[4]。ここにあるように、ジャパンサーチ[5]のデータにくわえて、Europeana[6]、DPLA[7]などの地域的メタデータ蒐集ポータルを用い、このほか個別機関で提供している API から日本関連のメタデータを蒐集して提供するものである。検索言語と異なるメタデータについては、タイトルを機械翻訳して日英語から利用できるようにしてある(Google翻訳であろうか。誤訳が出てしまうことは避けがたい)。
提供される機能としては、通常のウェブ検索と SPARQL 対応の RDFストアとがある。ウェブ検索では、通常のファセット検索と組み合わせられた一覧・キーワード検索機能のほか、「場所で探す」・「人物で探す」・「時代で探す」・「カテゴリで探す」などの一覧機能があり、「場所で探す」機能では世界地図から、「時代で探す」機能ではタイムラインから、「人物で探す」機能では、肖像画などがサムネイルになった検索・一覧が可能である。「カテゴリで探す」機能では、名前からは想像しにくいようにも思うが、収録元・所蔵先・所蔵国・資料区分(「基本区分」という名称)・主題・コレクションなどの区分で検索・一覧できる。各区分からの検索の利便性は、かなりの部分が元データの品質に左右され、人物のように現状は全貌が見られないものもある。ファセット検索はいま述べたカテゴリによって絞り込みができる。事前に検索結果を絞り込むフィルタ機能があるが、フィルタ機能のほうがおおまかに絞り込める印象を持った。
このサイトは、RDF に対してウェブ画面から簡易に SPARQLクエリを発行できるところが便利なところなのであろう[8](基本機能としてはジャパンサーチと同等なのではないかと思われる)。ここで用いられているのは、ゼノン・リミテッド・パートナーズの神崎正英氏がオリジナルのSnorql を拡張した Snorql for Japan Search である[9]。これにより、箇々のアイテムの RDFデータが整形され、また一部は値に説明や補足があらわれて表示され、RDF の詳細な事前知識がなくとも、かんたんに読み解くことができるビューワーとして実用可能となった。
ハーバード美術館所蔵の稲垣知雄による "Cat inBush"[10]を例にして閲覧画面を見てみよう。このページでは、「ブッシュの猫」という機械翻訳による日本語題とともに、ハーベストされた情報が基本・詳細に表示される。また、機械タグによって自動判別されたであろうタグから類似画像を見ることができる。このほか、画像から判別された類似タイトル・類似画像についても提案されている。ただ、類似タイトルは、国内作成のデータにしかほとんど機能しないであろうか(DH-JACのデータには国外機関分も含まれる)。RDF データを表示させると、Snorqlでの表示画面にいたる[11]。それによって、閲覧画面に現れたデータがどのような処理を経たものかが分かるようになっている。
活用例としては、さまざまな機能が提案されている[12]。NYPL Visualization による色分けや、IIIF Pocketなども興味深いが、ここではセルフミュージアムを取り上げたい[13]。この機能は、国立情報学研究所の阿辺川武氏が開発を担当したという。これは、IIIFマニフェストを用いて簡易に画像をブラウザ内の3D 空間に展示空間ふうにマッピングするものである。「展示室」ごとに IIIFマニフェストを分けて指定でき、移動しながらの観覧もできるし、順を追って表示してゆくこともできる。できることは IIIFマニフェストの情報に依存するため、原寸大の表示などは期待薄であるそうだし[14]、保存にも現状対応していないようであるが、現状のエコシステムの威力をやすやすと見せていておもしろい。
Cultural Japan の背後にあるシステムには、ジャパンサーチをリードしてきた神崎氏や IIIF Discovery inJapan[15]の開発者でもある東京大学の中村覚氏の技術的背景が活かされているのだろうと思われる。じっさい、ほとんどのデータは IIIF マニフェストが用意されているもので、自動生成や画像を持たないものはほとんどなく、また、ジャパンサーチから取得されたデータのみならず、その他の機関からのメタデータまでもジャパンサーチ利活用スキーマに変換されてRDF ストアに保存されているとのことである。取得しておしまいというわけではなく、著者の同定や読み情報など、検索用に情報が整備されているようすではある[16]。
しかしながら、このように便利にされるといっそう、ファセット検索の不便さを思わされるところである。ファセット検索があるということは、本質的には検索よりも一覧に眼目があり(一覧件数に制限があるばあいはなおのこと)、その探索に補助が必要ということであろう。絞り込む方法も、ファセット検索のように徐々に絞り込む方法は、クエリの再現性などに乏しく、詳細検索などで複数条件をあらかじめ絞っておきたいことも多い。CulturalJapan では、絞り込みの複数選択が比較的自由で、使いやすいほうではあるが、自在に探す感じはしない。その点、SPARQLでクエリを自身で組み立てる方法のほうは、技術的理解を要するものの、自由さはあきらかである。それでももちろん、ここでは Cultural Japanでリンクト・データのマッピングなどのお膳立てをしてもらったうえでのものではあるわけだが、クエリ言語の能力は情報探索の自由を得る出発点であることをあらためて感じる。
なお、こまかなことであるが、サイトポリシーで Google Analytics の使用が明示されているのは[17]、しっかりしていて好ましいものと思われる。
日本のデジタル・ヒューマニティーズ・シーンでは「デジタルアーカイブ」という用語を最重要のキーワードとして耳にすることが多い。2020年10月17日・18日に開催された第5回日本デジタルアーカイブ学会に筆者は出席し、デジタルアーカイブの最新の知見を学んだ。筆者が勤務している関西大学アジア・オープン・リサーチセンター(ORCAS)の「コロナアーカイブ@関西大学」[1]に関する菊池信彦氏による発表もあり、筆者もその学会誌の論文[2]に共著者として参加した。ORCASでは、「関西大学デジタルアーカイブ」[3]および「コロナアーカイブ@関西大学」の活動・運営に徐々に関わるようになっていき、「デジタルアーカイブ」という概念の重要性が筆者の思考の中で増していっている。10月27日には、国立国語研究所のNINJAL サロンで「文献資料および音声資料のデジタルアーカイブの構築」について発表する[4]。
しかしながら、筆者は、この用語をドイツで聞いたことはほぼなかった。ドイツ語でデジタルアーカイブに相当する句は digitales Archivだが、これは統計資料や行政資料を主に管理する公文書記録保管所あるいは文書館のデジタル版といった意味合いであると思われ、日本語のデジタルアーカイブがもつ広範な意味を含有しないと思われる。例えば、その名称の通りのDigitales Archivというサイトがあるが[5]、各機関の統計データや経済データなどを見ることができるのみで、日本のように文化資源の保全・公開といった意味合いはなさそうだ。Wikipediaでは、現時点(2020年10月19日)で、日本語の「デジタルアーカイブ」の記事[6]には、英語版の "Digital preservation"[7]、ドイツ語版の"ElektronischeArchivierung"[8]の記事がリンクされている。このことからも英語やドイツ語では日本語のデジタルアーカイブに対応する言葉は違うことが分かる。注意すべきは、ドイツ語版の"Elektronische Archivierung"の記事をみると、これは本当に、何かを電子媒体で記録・保存するといった意味である。日本語のデジタルアーカイブのように文化資源限定ではなく、より広い概念であることが読み取れる。
日本語のデジタルアーカイブは、文化財を電子媒体で保存・公開するというより広い意味を持つ。インターネットで検索してみると、デジタルアーカイブは、和製英語で、1990年代に作られたということが書かれてある。「デジタルアーカイブの連携に関する関係省庁等連絡会・実務者協議会」によれば、デジタルアーカイブとは、「様々なデジタル情報資源を収集・保存・ 提供する仕組みの総体」であるという[9]。英語圏にもドイツ語圏にもないdigital archiveのこの用法はいつ・どこで生まれたのだろうか。実業史研究情報センター長の小出いずみ氏は、この用語は和製英語であると断言している。「デジタル・アーカイブというと英語のように聞こえますが、これは1990年代半ばから使われるようになった和製英語です。国際的な共通理解が成立しているものではなく使われ方が多様なため、実は伝わりにくい用語なのです」[10]。後半の、国際的には「実は伝わりにくい用語なのです」という指摘は、デジタル・ヒューマニティーズをドイツで学んできた筆者の感覚に当てはまる。筆者はドイツでデジタル・ヒューマニティーズの研鑽を4年半積んできたが、日本のデジタル・ヒューマニティーズの論文を閲覧しているとデジタルアーカイブという用語をよく見かけた。おそらく欧米で使われているよりも広い意味を持っているのだろうとは思っていたが、デジタルアーカイブ学会など学会の活動も大変活発で、日本特有の現象であると理解していた。この用語の起源を辿っていると、次のような記述に行き着いた。Infocomによれば、「デジタルアーカイブは、月尾嘉男氏(東京大学名誉教授)が1994年頃に古代アレクサンドリア図書館をイメージして提起した “デジタルアーカイブ” という言葉を起源とする。電子機器系の “デジタル” と記録媒体系の “アーカイブ” を接続させた日本発の和製英語である」[11]。この後、デジタルアーカイブ推進協議会(JDAA, JapanDigital ArchivesAssociation)が1996年に設立され、この概念が普及していったとある。日本でギリシア・ローマ時代のエジプトを研究している身として、デジタルアーカイブという言葉が古代のアレクサンドリア図書館をイメージして日本で作られたというのは、心動かされる。古代アレクサンドリア図書館は、ムセイオンという文芸の女神であるムーサたちに捧げられた施設の一角にあり、ヘレニズム文化の知が集積されていたところであり、様々なギリシア古典の写本が集められ、それらに基づく、文献学研究・哲学研究・自然科学研究が、紀元前305年から始まるプトレマイオス朝期から行われていたところである。何度か火災や略奪にあい、その機能はセラペウムに置かれた姉妹館に移転するなどもしたが、紀元後392年のローマ帝国におけるキリスト教の国教化の前後から、キリスト教の権威が絶対化する中で、その学術的な活動は失われていったと言われる。
現在、Googleのように世界中の知識・芸術・情報を一手に集約する民間企業が現れており、学者を含め誰もがその恩恵を受けている。一方、国が文化を守護する義務の概念が強いヨーロッパでは、アメリカの民間企業主導の姿勢に対抗してか、Europeana[12]という古代のアレクサンドリア図書館の遺志をつぐような公的な膨大な知の蓄積のポータルが誕生している。これは巨大図書館・博物館・公文書館(MLA)の複合施設がウェブ上にあるものと言っても良い。日本でもEuropeana の日本版とも言える、IIIF と LOD を駆使した Japan Search[13]が公開され、この知と文化の集積は進んでいくものと思われる。JapanSearch を海外で所蔵されている日本関連文化遺産にも広げた CulturalJapan[14]がデジタルアーカイブ学会で何度も言及されたように、こういった知の集積ポータルもまたデジタルアーカイブと呼べる。新しい概念の提唱者はその分野で指導的な地位を果たすことが多い。馬場章氏による論考では、「文化資源のデジタルアーカイブは、英語圏では通常 Digital heritage あるいは Digital cultural heritage と呼ばれる」と述べられている[15]。Digitalcultural heritage という用語を聞いて思い出すのが、DATeCHである。ドイツ語でも文化資源のデジタル化による保存・公開はもちろん、デジタル・ヒューマニティーズの分野で活発であるが、近年は、文献資料に限る学会として Digital Accessto Textual CulturalHeritage(DATeCH)[16]という学会の活動が活発になっている。研究機関と企業の両方が参加する学会であり、筆者もこの学会におけるコプト語 OCRのポスター発表を通じて、Google の Google Books の技術者の知己を得て、筆者らのコプト語 OCR チームと Google Books がGoogle Booksにおけるコプト語文献の OCR のために共同作業することになった。このドイツでの筆者の経験についてはまたいつかこの連載の中で執筆することにしたい。いずれにせよ、英語でもそこまで Digital cultural heritage の用語は文化遺産のデジタル化といったような意味で、日本語のデジタルアーカイブのように文化資源のデジタル保全・集積・公開といった広範な意味をカバーしているとは言えなさそうであるし、使用率もデジタルアーカイブほどではないような感覚がある。今後、digitaledition, collection, preservation, exhibitionなどを総称する用語が世界でも必要となってくる可能性もなくはない。いや、そのような便利な用語がむしろ定着しないわけはないだろう。日本は、Japan Search や CulturalJapan などとともに digital archive という用語を逆に世界に輸出して広めていくべきかもしれない。
http://u-parl.lib.u-tokyo.ac.jp/archives/japanese/seminar20201201
宮川氏が紹介しているオンライン開催のデジタルアーカイブ学会に筆者も参加し発表を行なった。前回はコロナ禍により中止になってしまったものの今回はオンライン開催となったものである。どちらかと言えば実践的な情報共有が中心になっているように思われるため、筆者もその方向からの貢献を目指した発表を続けてきている。デジタルアーカイブは実践としての重要性は言うまでもないとはいえ、それを議論すると言った場合に、何を焦点として議論するか、によって話が大きく変わってしまうため、その部分をどのようにうまく設定するかが一つの鍵になるだろう。同様に筆者がよく参加・発表している人文科学とコンピュータシンポジウムウ(通称じんもんこんシンポジウム)でも、デジタルアーカイブ学会が設立される以前から、デジタルアーカイブをテーマとした査読付きシンポジウムを長らく開催してきており、非常に長く深い蓄積が行なわれてきている。こういった蓄積をいかにしてうまく活かしていけるか、ということも、デジタルアーカイブが今後学術研究として成り立っていくための重要な要素となるだろう。情報処理学会の「情報学広場」というサイトでそれらの論文の全文検索もできるようになっているので、そちらの方も積極的に参照するような流れが出てくることを期待したい。
(永崎研宣)