ISSN 2189-1621

 

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DHM 022 【前編】

2011-08-27創刊

人文情報学月報
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Digital Humanities Monthly

             2013-05-31発行 No.022 第22号【前編】 357部発行

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 ◇ 目次 ◇
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【前編】
◇《巻頭言》「利用者指向のその先へ~深い専門性と広い視野」
 (松村敦:筑波大学図書館情報メディア系)

◇《連載》「Digital Humanities/Digital Historyの動向
      ~2013年4月中旬から5月中旬まで~」
 (菊池信彦:国立国会図書館関西館)

【後編】
◇人文情報学イベントカレンダー

◇イベントレポート(1)
応用哲学会第5回年次研究大会におけるデジタル・ヒューマニティーズ
 (大谷卓史:吉備国際大学)

◇イベントレポート(2)
京都大学地域研究統合情報センターワークショップ「世界のエスキス」
 (谷川竜一:京都大学地域研究統合情報センター)

◇イベントレポート(3)
第98回人文科学とコンピュータ研究会発表会
 (山田太造:東京大学史料編纂所)

◇編集後記

◇奥付

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【人文情報学/Digital Humanitiesに関する様々な話題をお届けします。】
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◇《巻頭言》「利用者指向のその先へ~深い専門性と広い視野」
 (松村敦:筑波大学図書館情報メディア系)

   おおきく えだを ひろげた ならのように、
   じめんの うえに でている ところが
   よこに ひろく ひろがって、

   じめんの したの ところは、ほそい ねを
   あまり ださずに、1ぽんの ふとい ねが
   したへ したへと のびていく ものも
   あります。

    『じめんのうえとじめんのした』(アーマ E.ウェーバー ぶん・え)より

 情報検索の世界に根を下ろしたのが、自分がこの世界と関わることになったきっ
かけである。研究員として当時の学術情報センター(国立情報学研究所の前身)に
所属し、係受け関係を用いた情報検索手法の研究に従事した。その頃の情報検索研
究は、文や文章で書かれた検索要求を入力とし、その検索要求に適合する正解文書
を上位に順位付けすることが主たる課題であった。日本語でもテストコレクション
という検索要求(文書)と正解文書のセットが作られ始め、研究はこのテストコレ
クションを使っての評価実験・分析・改良の繰り返しで、テキストとにらめっこを
しながら、如何にして精度と再現率を向上させるかに苦心した。検索要求には、背
後にそれを発した人がいるかのように正解を表す内容が書かれており、その意図を
如何にして汲むかが課題であった。

 この課題に対して、自然言語処理の係り受け解析を施してインデックスを構造化
するというのが自分の研究の新規性であったが、単語一つひとつの重みや、係り受
けの深さの違いでわずかな精度の振れが起こり、一喜一憂したことを思い出す。こ
の時期、ただただ深くこの領域に根を張ることしか考えていなかった。ただ、検索
意図の分析を通して「利用者の意図」なるものの把握が重要であるという利用者指
向の感触を身につけたのはこの頃だった。

 その後、図書館情報学という学問分野で研究の枝を広げていくことになるのだが、
その時に関わったプロジェクトが「文化・情報資源の共有化」であった。これは、
国文学研究資料館、国立歴史民俗博物館、国立民族学博物館、国際日本文化研究セ
ンター、といった文化情報資源を独自に発信している機関のデータベースを相互に
接続し、横断検索できるようにするというプロジェクトである。このプロジェクト
は現在の人間文化研究機構が主導する研究資源共有化システムとして発展を遂げて
いる。

 このプロジェクトに放り込まれた自分は、まず各組織の史資料や情報資源に対す
る考え方の違い、データベースシステムの設計の違いに大きな衝撃を受けることに
なる。そもそも民「族」と民「俗」の違いも意識していなかったような自分が、各
学問領域で扱う史資料へのこだわりが分かるはずもなく、目から鱗の連続であった。

 情報検索という世界で深く根を下ろした自負はあったものの、一本の細い幹しか
なかった自分は、最初はお客様のように座っていたのだが、この研究会での議論を
通して研究の枝を広げ他の領域を少しずつ理解できるようになった。そうして見え
てきたのが、利用者と設計者の根深い視点の違いである。このプロジェクトはデー
タ提供者兼システム設計者を主とする集まりであり、ある程度のアンケート調査に
基づいてはいたものの、十分に利用者(横断的にデータベースを使う側)のことを
理解しているとは言えない状態だった。

 そこで、このプロジェクトの力を借りて利用者と想定される様々な層への情報探
索行動調査に乗り出すことになった。プロジェクトに参画していた前述の機関を対
象に、史資料研究者、システム研究者、学生、事務職員など様々な人達に対して、
現状の横断検索システムをどのように利用するかという調査実験の旅に出た。

 このときの経験は今の研究スタイルに深く影響を与えている。利用者の要求は多
様であり、その要求を的確に捉えてシステムを設計しなければいけない、利用者指
向のシステムデザインの必要性を強く感じさせる調査であった。特に、史資料を専
門とする人文系研究者の探索行動は、専門を極めた深い根っこに裏付けされており、
それへの共感なしには理解することができないようなものであった。そしてこの深
さへの共感が生まれるためには自分の根も十分に深いことが必要であることも実感
した。

 しかし一方で、人文系研究者の要求を理解しそれに沿ってシステムを実装してい
けば、それでいいのか、という想いが沸き上がってくる。

 システムの研究は、新しいものを生み出すことに面白さがある。それは、単にこ
れまでやりたくてもできなかったことを容易にできるようにするためだけのもので
はない。もっと潜在的な、利用者が気付いていないような、それでいて利用者に有
益な新しい変化を、システムによってもたらすことにシステム研究の醍醐味がある。

 では、人文情報学と呼ばれる領域でこのような魅力的なシステム研究を実現する
ためにはどうしたら良いのか。利用者である人文系研究者の研究を全く無視した新
しい技術の提案が駄目なことは、これまでも多くの人から指摘されているところで
ある。そうではなく、相手の研究の枝を広げるようなシステム研究でなければなら
ない。

 多少極端な表現であるが、自分は図書館に愛のない図書館情報学研究者であろう
と意識している。その意味する所は、図書館というものを知りすぎてしまうことに
よる図書館からの呪縛から逃れるということである。新しいものを発想するには、
相手を良く知ることも重要であるが、その一方で知りすぎていないかと常に自問す
ることが必要である。それと同じで、まずは人文系研究者という利用者の根っこを
深く理解する必要はもちろんあるが、その先へ展開するには、利用者指向はほどほ
どにしておいて人文系研究者が考えてもいなかった新しい研究領域につながるよう
な提案をしていく必要があるだろう。

 そのためには、相手と同じレベルで共感できる深い根を持つことと、多様な研究
領域を受け入れ見極められる幅広い枝を持つことが必要だと感じている。

 昨年、筑波DH研究会という活動がスタートした。この研究会は、筑波大学の人文
社会系と図書館情報メディア系の教員を主要メンバーとする人文情報学をテーマと
した研究グループである。筑波DH研究会での昨年度の活動報告を振り返ってみると、
アラビア文字研究、近代日本語文典、多言語迷惑メール対策、縦書きモンゴル語環
境、電子図書館、ディスカバリーサービス、XMLによる楔形文字のマークアップ、聖
書研究、埴輪の同工品分析、ソーシャル絵本推薦と、まとまりないがそれぞれに専
門の地中に深く根を下ろした研究が並ぶ。お互いが深く掘り下げていることに共感
しつつ、新たな可能性をゆるやかに模索していく雰囲気ができあがってきた。

 今はまだ遠いこれらの研究の間に新しい繋がりと広がりを与えるシステムを実現
することが、境界領域に立つ自分を含めた図書館情報学研究者の役割であろうと考
えている。

 地下に深く根を下ろし、大きく枝をひろげるならの木のように、研究の深化と拡
張を絶えず行いながら、人文情報学の可能性の開花に一役絡んでみたいと考えてい
るところである。

執筆者プロフィール
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松村敦(まつむら・あつし)筑波大学図書館情報メディア系助教・博士(理学)。
主な研究テーマは、情報探索行動の調査・分析とシステムによる支援研究。特にイ
ンタフェースやインタラクションに焦点をあてたシステムの研究。2008年、「検索
行動調査に基づく検索エレメント設計に関する一考察」で情報知識学会論文賞を受
賞。最近は、絵本の読み聞かせに着目した、子どもに対する絵本の推薦システムの
研究にも注力している。

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◇《連載》「Digital Humanities/Digital Historyの動向
      ~2013年4月中旬から5月中旬まで~」
 (菊池信彦:国立国会図書館関西館)

 前号に引き続き、2013年4月中旬から5月中旬までのDigital Humanities/Digital
Historyに関する動向をまとめた。

○新聞・ブログ記事
 4月15日、米国議会図書館のブログ“The Signal”に、Phillyhistory.orgという
デジタルアーカイブプロジェクトの運営者Deb Boyer氏のインタビュー記事が掲載さ
れている。2005年にスタートしたPhillyhistory.orgは、フィラデルフィア市文書館
等の所蔵の写真と地図史料をフリーで提供するもの。
http://blogs.loc.gov/digitalpreservation/2013/04/inaugurating-the-conten...
http://phillyhistory.org/PhotoArchive/

 4月26日、ルクセンブルクのCentre virtuel de la connaissance sur l'Europeの
Fre'de'ric Clavert氏のブログに、“The Digital Humanities multicultural
revolution did not happen yet”という記事が掲載されている。記事では、
Digital Humanitiesが「米英とその他」として英語圏で研究が盛んと思われている
ことを指摘したうえで、筆者の経験を踏まえ、フランスやドイツ、イタリア等でも
それぞれに研究が進んでいるのであって、アカデミズム言語としての英語の位置付
けゆえに、そのような状況にあるように見えるのではないかと指摘している。
http://www.clavert.net/the-digital-humanities-multicultural-revolution-d...
 これに関連した話題として、5月7日に人文学アドヴォカシープロジェクト
4Humanitiesのウェブサイトに掲載されたDaniel O'Donnell氏のインタビュー記事が
ある。そこでは、O'Donnell氏の経歴等とともに、所得の高い国に偏っている
Digital Humanitiesを中・低諸国にも広げる活動として始められたGO::DHが紹介さ
れている。
http://4humanities.org/2013/05/interview-daniel-o-donnell/

 4月29日付のThe Chronicle of Higher Educationに、バージニア大図書館の
Scholars' LabのBethany Nowviskie氏の紹介記事“Devising New Roles for
Scholars Who Can Code”が掲載されている。氏の経歴やScholars' Labでのプロジ
ェクト等が紹介されている。
http://chronicle.com/article/Devising-New-Roles-for/138809/

 5月8日付のMittelalterのブログに、西洋中世美術史に関するウェブリソースをま
とめた記事が掲載されている。特にフランスのものが多いが、中世・ルネサンス期
の芸術史に関するポータルサイトやブログ、史料を公開している電子図書館やデー
タベース等の情報がまとめられていて、中世史研究者には役立つ内容になっている
と言えよう。
http://mittelalter.hypotheses.org/1023

 5月9日付けのブログSapping Attentionに、“What years do historians write
about?”という記事が掲載されている。ブログは、プリンストン大の院生でハーバ
ード大のビジティングフェローであるBenjamin M Schmidt氏が運営しているもの。
記事は、OpenLibraryとハーバード大のCultural Observatory、Open Science Data
Cloudの共同開発による、パブリックドメインのデジタル化図書のテキストを検索で
きる“Bookworm”を用いて、アメリカの歴史学博士論文のタイトルに登場する「年」
を分析した結果を紹介している。例えば、1750年以降劇的に増加し、20世紀後半ま
での研究が多い等の結果がグラフで示されている。
http://sappingattention.blogspot.jp/2013/05/what-years-do-historians-wri...
http://bookworm.culturomics.org/

 5月10日付けのPostcolonial Digital Humanitiesのブログに、“Open Thread:
Digital Humanities as a Historical "Refuge" from
Race/Class/Gender/Sexuality/Disability?”という記事が掲載されている。記事は、
Martha Nell Smithの2007年の論文(“The Human Touch Software of the Highest
Order: Revisiting Editing as Interpretation.” Textual Cultures: Texts,
Contexts, Interpretation, 2(1):2007, 1-15.)を引用し、人文学の重要なテーマ
である人種・階級・ジェンダー・セクシュアリティ・ディサビリティの議論の、
Humanities Computing(Digital Humanities)における不在性について、読者の見
解を問うたものとなっている。この記事を執筆している5月17日に時点で、すでに
156件ものコメントが寄せられている。
http://dhpoco.org/2013/05/10/open-thread-the-digital-humanities-as-a-his...

○イベント・出来事
 7月16日から19日にかけてネブラスカ大学リンカーン校で開催される、Digital
Humanities 2013のプログラムが決定し、4月22日に公表された。
http://dh2013.unl.edu/program-for-digital-humanities-2013-is-up/

 4月25日から28日にかけて、カナダのトロントでHASTAC2013が開催された。大会に
関連したまとめもつくられている。
http://hastac2013.org/
http://hastac.org/blogs/fionab/2013/04/30/temporary-roundup-hastac-2013-...

 4月26日、Wikipediaに女性関係記事を充実化させることを目指した取り組み
“Global Women Write-In(#GWWI)”が行われた。主催は先に登場したPostcolonial
Digital Humanities。プロジェクトでは、18ページ/スタブが新たに作成され、既
存の17ページについて記事内容の改善がなされたとのことである。
http://dhpoco.org/rewriting-wikipedia/the-global-women-wikipedia-write-in/
http://www.globaloutlookdh.org/report-on-the-global-women-write-in-gwwi-...

 4月28日、スイスのバーゼル大学歴史学部のPeter Haber氏が死去した。氏は、ス
イスのDigital Historyプラットフォームhist.netの共同創始者であり、Global
Perspectives on Digital Historyの運営者の一人だった。
http://gpdh.org/blog/2013/05/01/in-memoriam-peter-haber-1964-2013-3/
http://storify.com/gpdhnow/in-memoriam-peter-haber-1964-2013
http://weblog.hist.net/archives/6667

 5月4日、GO::DHが初めてのエッセイコンペ“Global Digital Humanities Essay
Prize”の開催を発表した。現在のところ6月30日締切で要旨の募集を行われている。
http://www.globaloutlookdh.org/global-outlookdigital-humanities-global-d...

 今年2月に募集していたEUにおけるデジタル人文学プロジェクト助成プログラム“
Open Humanities Awards”の結果が、5月8日に発表された。一人は、“Maphub”と
いうプロジェクトを手掛ける、ウィーン大学のBernhard Haslhofer氏。“Maphub”
は、デジタル化された古地図資料のアノテーションを付けたり、ジオリファレンス
やGoogleマップへのオーバーレイ等を可能とするオープンソースのウェブアプリで
ある。もう一人は、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのRobyn Adams氏。氏は、
オックスフォード大のボドリアン図書館にその名を残すトマス・ボドリーの外交文
書を扱った“The Diplomatic Correspondence of Thomas Bodley, 1585-1597”のプ
ロジェクトを行っている。
http://blog.okfn.org/2013/05/08/announcing-the-open-humanities-award-win...

 5月8日、第1回Wikimedia France Research Awardに、故Roy Rosenzweig氏の
“Can History be Open Source? Wikipedia and the Future of the Past” The
Journal of American History Volume 93, Number 1 (June, 2006): 117-46が受賞
した。氏は、ジョージ・メイソン大歴史とニューメディアセンター(CHNM)の創設
者であり、同センターにその名を遺している。
http://chnm.gmu.edu/news/wikimedia-france-research-award-2013/
http://chnm.gmu.edu/essays-on-history-new-media/essays/?essayid=42

 5月30日に、“Around the World Symposium on Technology and Culture”という
イベントが開催される。これは、世界各国で”Digital Culture”をテーマとしたイ
ベントをライブ中継し、それらをつないで24時間の大きなシンポジウムにしようと
いう企画である。日本では、東京大学と立命館大学が参加することになっている。
http://aroundtheworld.ualberta.ca/

 6月10日にデジタル人文学の日“Di'a de las Humanidades Digitales”の開催が
予告されている。4月号でもDay of DHとしてデジタル人文学の日があったが、今回
はスペイン語・ポルトガル語圏のDigital Humanities研究者が主な対象とされてい
る(が、もちろんその他の国からも参加可能)。スペイン・ポルトガル語圏が対象
となっている理由は、4月のDay of DHがもっぱら英語で行われたためという。開催
内容については4月と同じである。
http://dhd2013.filos.unam.mx/

○プロジェクト・ツール・リソース
 5月1日、英レスター大学図書館等による資料デジタル化プロジェクト
“Manufacturing Pasts”が公開された。これは、第二次世界大戦後のレスター地方
で産業構造がどのように変化したのかを検証するプロジェクトである。プロジェク
トではそのために写真や地図、オーラルヒストリー、企業の刊行物や新聞史料など
をデジタル化して、CC BY-NCで公開し、広く利用できるようにしている。
http://www.le.ac.uk/manufacturingpasts
http://cdm16445.contentdm.oclc.org/cdm/landingpage/collection/p16445coll2
http://www.jisc.ac.uk/news/stories/2013/05/manufacturing-pasts.aspx

 5月1日、初期アメリカ史に関するグループブログThe Juntoが、第121回目の
History Carnivalの参加記事を公開している。History Carnivalは、様々な歴史系
ブログが、毎月1日に秀逸な歴史系ブログの記事を紹介する記事を掲載するというも
の。The Juntoは初期アメリカ史に関連したブログ記事などを多数紹介している。
http://earlyamericanists.com/2013/05/01/history-carnival-121/

 5月6日、アメリカのバージニア大学図書館のScholars' Labの講演シリーズに、カ
リフォルニア大サンタバーバラ校教授のAlan Liuが登場した。Alan Liuは先述の“
4Humanities”の創設者の一人で、講演ではDigital Humanitiesの研究コミュニティ
のスキルとリソースが、人文学のアドボカシーに役立つものであるとして、その方
法が語られたとのこと。講演のポッドキャストは、Scholars' Labのウェブサイトも
しくはiTunes Uで公開されている。
http://www.scholarslab.org/podcasts/scholars-lab-speaker-series-alan-liu/
http://4humanities.org/

 5月7日に、米国のデューク大学図書館が、“Duke Collaboratory for Classics
Computing(DC3)”の部署の新設を発表した。DC3は、特にパピルス研究に関連した
古典研究とDigital Humanities研究の双方を担うという。アンドリュー・メロン財
団から50万ドルの助成を受け、同大学の古典研究者であるJoshua D. Sosin准教授が、
学部での教育を兼務しながら、DC3を率いることになる。
http://today.duke.edu/2013/05/mellondc3

 5月7日、国立国会図書館はNDLラボのウェブサイトを公開した。電子読書支援シス
テムの実験公開を行っている。
http://lab.kn.ndl.go.jp/cms/

 “Virtual Paul's Cross Project”のプロジェクトサイトが公開された。これは
1622年11月5日、ロンドンのPaul's CrossでJohn Donneが説教を行っている状況を、
アーキテクチャモデルと音響用のソフトウェアを使って再現するというものである。
ウェブサイトでは聴衆の人数やその説教空間における立ち位置に応じて、説教の聞
こえ方が分かるように複数のYouTube動画が公開されている。いわば、近世ロンドン
の説教空間における“経験”を再現するプロジェクトと言えよう。
http://vpcp.chass.ncsu.edu/
http://earlymodernonlinebib.wordpress.com/2013/05/08/virtual-pauls-cross...

 5月9日、バージニア大図書館のScholars' Labが“Prism”の新バージョンを公開
した。Prismは、クラウドソーシングでテキストの解釈を行うためのツールである。
このツールは、Scholars' Labによる人文・社会科学系大学院生向けのDigital
Humanities教育プログラムPraxisプログラムでの成果とのこと。
http://prism.scholarslab.org/
http://www.scholarslab.org/digital-humanities/prism-for-play/

 今年1月24日に英国Open Universityで開催されたセミナー“Digital Humanities
and the First World War”のプレゼン動画が、同大の動画サイトで公開されている。
100周年を迎える第一次世界大戦に関するDigital History/Digital Humanitiesプ
ロジェクトとして、WW1 Discovery ProjectとEuropeana 1914-1918の取り組みが紹
介されたようである。
http://www.open.ac.uk/blogs/dighum/?p=556
http://www.slideshare.net/adrianstevenson/ou-digital-humanitiesww1
http://ww1.discovery.ac.uk/

 アメリカのノースカロライナ州における1751~1840年の新聞に掲載された逃亡奴
隷広告(Runaway Slave Advertisements)の切り抜きを集めたデータベースサイト
“NC Runaway Slave Advertisements”が公開されている。ノースカロライナ州立図
書館等の新聞史料を利用し、2,400件以上の広告についてテキスト化が完了しており、
アメリカの奴隷制の一端を伺えるものとなっている。
http://libcdm1.uncg.edu/cdm/landingpage/collection/RAS

○論文・学術雑誌・研究書
5月9日、ミシガン大学図書館にある同大学出版局が、ジョージ・メイソン大学の歴
史とニューメディアセンターの副所長T. Mills Kelly の“Teaching History in
the Digital Age”をオープンアクセスで刊行した(印刷版は有料)。
http://dx.doi.org/10.3998/dh.12146032.0001.001
http://www.digitalculture.org/2013/05/09/now-available-teaching-history-...

○レポート・報告書
 ドイツ連邦教育研究省が、人文・社会科学の研究インフラに関するレポート
“Forschungsinfrastrukturen fu"r die Geistes- und Sozialwissenschaften”を
刊行した。
http://dhd-blog.org/?p=1678
http://www.bmbf.de/pub/forschungsinfrastrukturen_geistes_und_sozialwisse...

特殊文字については次のとおり表記しました。
アクサン・テギュ:e'、i'
ウムラウト:u"

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 続きは【後編】をご覧ください。

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人文情報学月報 [DHM022]【前編】 2013年05月31日(月刊)
【発行者】"人文情報学月報"編集室
【編集者】人文情報学研究所&ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)
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