ISSN 2189-1621

 

現在地

DHM 045 【前編】

2011-08-27創刊                       ISSN 2189-1621

人文情報学月報
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Digital Humanities Monthly

             2015-04-28発行 No.045 第45号【前編】 558部発行

_____________________________________
 ◇ 目次 ◇
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

【前編】
◇《巻頭言》
「人文情報学とコンピュータサイエンスのプリンシプル:IPSJ-ONE観覧記」
 (大向一輝:国立情報学研究所)

◇《連載》「西洋史DHの動向とレビュー
      ~外国(史)研究者としてDHの情報にどのように触れるのか~」
 (菊池信彦:国立国会図書館関西館)

◇《連載》「Digital Japanology寸見」第1回
「『笠間索引叢刊』が一部国文学研究資料館で公開に」
 (岡田一祐:北海道大学大学院文学研究科専門研究員)

【後編】
◇人文情報学イベントカレンダー

◇イベントレポート(1)
「デジタル学術研究に関するシンポジウム@ライデン大学図書館」
 (ジョナサン・シルク:ライデン大学、永崎研宣抄訳)

◇イベントレポート(2)
「アメリカシェイクスピア学会第43回年次総会」
 (北村紗衣:武蔵大学人文学部)

◇イベントレポート(3)
「第一回 能美アートオープンデータシンポジウム」
 (上田啓未:合同会社AMANE)

◇編集後記

◇奥付

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【人文情報学/Digital Humanitiesに関する様々な話題をお届けします。】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
◇《巻頭言》
「人文情報学とコンピュータサイエンスのプリンシプル:IPSJ-ONE観覧記」
 (大向一輝:国立情報学研究所)

 2015年3月17日、京都大学にて情報処理学会第77回全国大会の併設イベント
「IPSJ-ONE」が開催された。IPSJ-ONEは、若手研究者が1名あたり5分の持ち時間で
一般向けに自身の研究のエッセンスを紹介するという形式で、同学会傘下の研究会
の中から推薦・審査を経て選ばれた19名が登壇した。当日の模様はニコニコ生放送
を通じてインターネット配信され、数万人がリアルタイムで視聴し、多数のコメン
トが寄せられた。現在はニコニコ動画にてアーカイブを見ることができる[1]。

 情報処理学会は1960年に設立された、情報科学ならびに情報工学に従事する専門
家のコミュニティである。39ある研究会の名称を見ると、データベースシステムや
ソフトウェア工学、アルゴリズムといったコンピュータそのものを対象とした研究
領域や、自然言語処理、高度交通システムなどの応用的な領域があることがわかる。
いずれにせよ情報処理学会が扱うのはいわゆる「理系」の学問であると自他ともに
認識されており、IPSJ-ONEにおける講演タイトルも「時系列ビッグデータのための
非線形解析とその応用」「IPv4/IPv6ネットワーク上のシームレス通信」などコンピ
ュータのスペシャリストとしての立場が強く打ち出されている。

 このような組織の中にあって、人文科学一般を研究対象とする「人文科学とコン
ピュータ研究会」はかなり異質な存在である。そして、本研究会を代表して
IPSJ-ONEの登壇者となった山田太造氏(東京大学史料編纂所)の講演もまた参加者・
視聴者から驚きあるいは戸惑いの目を持って受け止められたのではないか。正直な
ところ、筆者としては聴衆からどのような反応があるのかが全く未知数であり、我
が事のように緊張感をもって視聴していた(ちなみに山田氏と筆者は大学院時代の
同級生である)。

 山田氏は「歴史学の情報?」と題して、歴史史料にまつわる情報の関連づけやデ
ータベース化、本文データの構築支援システムといった基盤整備について述べると
ともに、史料群に出現する人名の関係ネットワークの可視化、人名に内在する意味
的な関連性を共起関係の分析を通じて自動的に抽出する研究を紹介した。

 これらの事例はまさに人文科学と情報技術の連携によって得られた成果であり、
情報処理学会コミュニティの(有望な)応用先としての人文科学の存在を知らしめ
るにあたって十分な効果のあるプレゼンテーションであった。氏によれば同様のア
プローチの研究がこと歴史学には少なく、未開拓ゆえの面白さと意義があるとのメ
ッセージは広く伝わったと思われる。

 とはいえ、こういった議論は人文情報学に関わる方々であればすでに了解してい
るところであろう。山田氏は、これに続けて歴史における情報学の目的はデータベ
ースの整備そのものにあるのではなく、当時の様子の一片を示す史料や歴史情報か
ら誰も知ることのできない「本当の歴史」に漸近していきたい、言い換えれば「歴
史情報から最も確からしい歴史モデルを推定する問題」として捉えたいと語った。

 筆者はこの最後の定式化に大きな感銘を受けた。決して網羅的には手に入ること
のない観測情報から、その情報を生み出し得るモデルを構築し、その尤もらしさを
検証するという手順は、コンピュータサイエンスの研究手法と極めて類似している。
とくに最近注目されているビッグデータ処理や機械学習、人工知能研究と比較する
と、観測される情報が史料なのかセンサーからのデータなのかという差でしかなく、
質的には同類の問題に帰着しうる。このことは、なぜ情報処理学会の中に(異質に
見える)人文科学とコンピュータ研究会が存在しているのかという素朴な疑問の回
答にもなっている。それは単にコンピュータを利用しているからではなく、同じ問
いと格闘する同志であるからだ。

 山田氏の学生時代の専門は典型的な「理系」のデータベースシステムであり、筆
者もまたウェブ情報学から学術情報流通を経て人文情報学に足を踏み入れるに至っ
た。その点でアウトサイダーの人間であると自ら任じてきたが、本質的に内と外の
区別が存在しないという指摘には目を見開かされる思いである。今後も人文情報学
にはさまざまなバックグラウンドを持つ人々が関わりを持つことになるだろう。そ
の際には同じプリンシプルを共有する同志として快く受け入れる学問であり続けて
ほしいと願っている。

[1]前半: http://www.nicovideo.jp/watch/1429091375
 後半: http://www.nicovideo.jp/watch/1429091190
 山田氏の講演: http://www.nicovideo.jp/watch/1429091375?from=3460

執筆者プロフィール
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
大向一輝(おおむかい・いっき)1977年京都生まれ。2005年総合研究大学院大学博
士課程修了。博士(情報学)。2005年国立情報学研究所助手、2007年同助教、2009
年同准教授。セマンティックウェブやソーシャルメディア、オープンデータの研究
とともに、学術情報サービスCiNiiの開発に携わる。株式会社グルコース取締役。著
書に『ウェブがわかる本』(岩波書店)、『ウェブらしさを考える本』(丸善出版)
がある。

Copyright (C) OMUKAI, Ikki 2015- All Rights Reserved.
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
《連載》「西洋史DHの動向とレビュー
      ~外国(史)研究者としてDHの情報にどのように触れるのか~」
 (菊池信彦:国立国会図書館関西館)

 図書館員の集まりでDHという単語が飛び交い、それをテーマにした企画セッショ
ンまで開かれていたことに驚いた。日本のことではない。3月末に雪のまだ残るシカ
ゴで参加した、東亜図書館協会(CEAL)および北米日本研究資料調整協議(NCC)の
大会のことである。

 筆者が本誌でDHの動向記事を書いていた際に感じていた難しさの一つは、「日本」
の情報の入手のしにくさであった。日本でどのようなDHの研究者がおり、どのよう
な研究が行われて、そしてどのような浸透を見せているのかあるいはいないのか。
日本の学界は海外ほど情報発信が盛んでない上に、DHという言葉を使っていない研
究者も多いと考えられることから、とかく日本の動向は把握しづらかった。日本国
内にいて積極的に情報収集しようとしている立場の自分でさえそうなのだから、ま
してや国外にいてはなおさらであろう。だが、それは逆のことも言えるのかもしれ
ない。海外の、あるいはアメリカでの、日本研究DHの情報収集ができていなかった
ことを、この3月の会合では思い知らされたように思う。

 帰国後、国内外の日本研究とDHの情報共有を目的として、Digital Humanities
in JapanなるFacebookグループを作成したのは[1]、以上のような経緯からである。
関心のある読者諸兄はあまり構える必要はなく気軽に参加していただき、国内外の
研究者や図書館員等と、日本研究DHに関わる情報交換を積極的に行っていただけれ
ば幸いである。

 さて、ここから本題に移る。前段までは日本研究の立場から見たが、反対に、日
本にいて外国史・外国学を研究する立場から、DHの情報にどのように触れるのかを
考えてみたい。

 外国、それも西洋史が対象にするような国々でのDH研究の情報は、日本研究に比
べれば比較的容易に入手できる。DHの情報を精力的に発信しているものといえば、
例えば、英語圏であればDigital Humanities Now[2]、フランス語圏ではDH研究メ
ーリングリストdh@groupes.renater.fr[3]、ドイツは歴史学の仮想研究環境
H-Soz-Kult[4]、スペインでは放送大学(Universidad Nacional de Educacio'n
a Distancia)のDH研究センターLINHDのサイト[5]等が挙げられる。もちろん、上
に挙げたウェブサイト等が網羅的に各国のDHを紹介しているというわけでもないが、
それでも日本に比較すれば現地の研究動向について把握がしやすいと言える。

 ただ、前段に挙げたのは外国のDHの「最新情報」の入手に役立つものである。す
でにDHの研究を進めている西洋史の研究者には有益かもしれないが、自身の経験か
らいっても、西洋史を学び始めた初学者にとってはかえって道に迷うことにもなり
かねないだろう。体系的にDHの情報に触れるといえば、やはり大学教育においてほ
かにない。

 では、大学教育においてDHはどのように教えられているか。ちょうど大学では履
修登録時期でもあるので、ここではシラバスから考えてみたい。とはいえ、日本の
大学の悉皆調査は困難であるため、「研究及びこれを通じた高度な人材の育成に重
点を置き、世界で激しい学術の競争を続けてきている大学による国立私立の設置形
態を超えたコンソーシアム」であるRU11の加盟大学[6]の2015年度のシラバスを調
べた結果を紹介したい。

 検索は以下のようなルールで行った。(1)検索対象は、各大学の全学規模のシラ
バスとした。それがない場合には、西洋史を学ぶ学部生が所属していると想定され
る文学部あるいはそれに類する学部のシラバスのみを対象とした[7]。(2)検索
語は、DHの訳語として主に考えられる次の4つ――「人文情報学」「デジタル人文学」
「デジタルヒューマニティーズ」「文化情報学」――を採用した。(3)検索範囲は
なるべく広範囲を旨としたが、課程の絞込みが必要な場合には学士課程の検索を優
先した[8]。

 結果は次表のとおりである。完全一致検索ができない東京大学の検索結果がおか
しなことになっているので補足しておくと、東京大学の学部後期課程版の各検索結
果を目視で確認した結果、「人文情報学概論(1)(2)」「人文情報学特殊講義」
「人文情報学特殊講義(2)」といった科目が複数ヒットしているが、あくまで数件
に留まるものであった[9]。もちろんここでの調査はごく簡単なものであるので検
索漏れもあるだろうし、まただからといって、単に上記の4つの単語を使っていない
だけで、その他の大学がDH教育を行っていないというわけでもない。だがそれでも、
表から分かるのは、RU11においてDHの訳語を掲げた講義があるのはごく一部の大学
に留まるものであり、欧米の大学で浸透しているDHという言葉が日本国内の大学で
はそうではないということぐらいは結論できるだろう。それを、世界の時流に乗り
遅れているというべきか、あるいはDH以前からの日本独自の潮流があるというべき
かは、これだけでは判断できない。

http://www.dhii.jp/DHM/imgs/kikuchi/hyo1.png
<表 RU11の2015年度シラバス検索結果>

では、検索でヒットした講義では、具体的にどのようなことが教えられているのだ
ろうか。

 筑波大学では「日本語学特講IIb」(和氣愛仁)で次のような授業目標が掲げられ
ている。「担当者は、DHにおける研究成果として、古代エジプト神官文字のパピル
ス資料、楔形文字粘土板資料、近代日本語文典資料の画像=テキスト連携データベー
スシステムを構築している。これらは、各資料の高解像度画像を自由に拡大・縮小・
スクロール可能とするとともに、資料上の任意の位置に多角形領域を定義し、その
領域に文字情報や単語情報を関連づけ、これらを検索可能とする、WWW上のシステム
である。本授業では、これらのシステムを構築するにあたって必要となる知識・技
術を、言語学的側面、情報工学的側面の両方から詳説する。これらの知識・技術の
概略を理解し、今後の人文科学の研究のあり方のひとつについて考えを深めること
を目標とする。」

 次に、慶應義塾大学では、「デジタル書物学IとII」(アーマー,アンドルー J、
佐々木 孝浩、松田 隆美、樫村雅章)と「美術史特殊IG/芸術学研究V」(本間友)
の2つがある。前者では、書物史・書誌学からウェブ上での情報発信の実習、貴重書
のデジタル化とデジタルアーカイブを経て、最後に「デジタル書物学、デジタル・
ヒューマニティーズの事例検証」と題し、「担当教員や関連の研究者がこれまでに
かかわってきたデジタル書物学やデジタル・ヒューマニティーズの研究事例を紹介
し、その意義や将来像について考える」とされている。後者では、「本講義では、
美術史の専門課程で学び、研究を行う際に必要とされる基礎的な情報通信技術を実
習形式で身につけます。まず、情報通信技術と人文学の関わりについて、アート・
ドキュメンテーションやデジタル・ヒューマニティーズの最近の動向を紹介し検討
を行います。そして、ケース・スタディなどを通じて、研究の過程において『情報
を整理する』『情報を伝える』場面で発生する作業を確認したうえで、それぞれの
作業に必要な基本的技術を習得することを目指します」とある。

 筑波大学の講義と慶應義塾大学の「デジタル書物学」では、教員のこれまでの研
究プロジェクトに密着した内容になっており、また、「美術史特殊IG/芸術学研究V」
も含めた3つの講義全体で言えることは、言語学や書物史・書誌学、美術史といった
個々の専門領域に即したDHを学ぶことになるということである。

 これに対し、東京大学ではやや様子が異なる。東京大学の「人文情報学概論(1)」
(下田正弘、Muller Albert Charles、永崎研宣)では、「…人文情報学の中心的課
題である、デジタル媒体時代における人文学にとっての情報に関する問題系の理解
を深めるとともに、国内外で取り組まれつつある種々の具体的事例を通して人文情
報学の現状を把握し、デジタル媒体に適切に向き合う構えを自律的に形成できる人
文学研究者としての素地を涵養する」との目標が掲げられているが、シラバスを読
む限り、人文学の中に位置づけられるある特定の専門領域に即したものにはなって
いないようである。もっとも、「人文社会系諸学における人文情報学的なアプロー
チの展開、そこでの課題や展望を、複数の専門分野の教員によるリレー形式で考え
る。本年度は、国文学、社会学、日本史学の3分野を取り上げる」という「人文情報
学特殊講義」もあるので、まったく個々の専門領域を無視しているわけでもないよ
うではあるが、東京大学のDHの講義は間口を広く設定している、と評することがで
きるだろう。

 話が拡散してきたので、そろそろまとめに入りたい。

 以上のような状況に対し、西洋史を学び始めた初学者はどのようにDHの情報に触
れることになるだろうか。西洋史に直接に関わる講義といえば、慶應義塾大学での
「デジタル書物学」のみが挙げられ、あるいは東京大学の西洋史の学生が上に挙げ
た講義を履修することで、DHに触れるということも考えられる。西洋中世書誌学・
書物史か、あるいは間口の広い講義を受けて自分で西洋史にあてはめるか――あま
りにDHに触れる機会が少ないように見える。だが既に述べたように、単に上記の4つ
の単語――「人文情報学」「デジタル人文学」「デジタルヒューマニティーズ」
「文化情報学」――を使っていないだけで、講義で事実上DH教育が行われていない
とも限らない。したがって、西洋史学の講義でDHの訳語が表れずとも、例えば史学
概論のような講義で、DHとそれに類するテーマがどのように取り上げられているの
だろうかといった疑問が生じることになる。シラバスからは確認できないこの問題
については、稿を改めて考えてみたい。

[1]Digital Humanities in Japan.
https://www.facebook.com/groups/758758500904522/ (access 2015-04-20).
なお、ウェブサイト確認日は以下全て2015年4月20日である。
[2]Digital Humanities Now. http://digitalhumanitiesnow.org/
http://publichistorycommons.org/the-aha-on-the-path-to-public-history/
[3]dh@groupes.renater.fr. https://groupes.renater.fr/sympa/arc/dh/
[4]H-Soz-Kult. http://www.hsozkult.de/
 齋藤正樹. 「ドイツにおけるデジタル化と歴史学――仮想研究環境H-Soz-Kultに
ついて――」『現代史研究』2014, (60), pp.41-54.
[5]LINHD. http://linhd.uned.es/noticias-y-eventos/
[6]RU11. http://www.ru11.jp/
[7]したがって、情報学部や図書館情報学の専攻を特に注目したわけではない。
[8]東京大学は学士課程のうち前期と後期に分かれているため、後期を対象に選択
した。
[9]その他に「情報人文社会科学I」といった講義科目もあるが、検索語そのまま
ではないため、ここでは特に言及しない。
 なお、東京大学には大学院横断型教育プログラムとして「デジタル・ヒューマニ
ティーズ」が設けられている。
http://dh.iii.u-tokyo.ac.jp/

Copyright(C)KIKUCHI, Nobuhiko 2013- All Rights Reserved.
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
◇《連載》「Digital Japanology寸見」第1回
「『笠間索引叢刊』が一部国文学研究資料館で公開に」
 (岡田一祐:北海道大学大学院文学研究科専門研究員)

 本号から、日本学におけるディジタル・ヒューマニティーズ(DH)的な話題に関
する時評をしていくことになった。日本学といっても幅広い分野であるし、全体を
覆おうとしたところで不勉強が露見するだけである。はばかりながら、題に掲げる
とおりの寸見に留まることをお許しねがいたい。稿者はふだん語学的な文献学をこ
ととしているが、西洋における日本学史にも感心がある。そこで、この連載では、
そのような関心から管見に入ったものを中心に、この半年ほどの話題から考えたこ
とをお伝えしたいと思っている。

 第1回めは、『笠間索引叢刊』の一部が国文学研究資料館で公開された件[1]を
取り上げたい。この『笠間索引叢刊』がインターネット上で公開されたことは、非
常に意義深いことだと思うが、それについては少々解説が必要かもしれない。まわ
りみちであるが、お許し願いたい。

 日本学の研究資料は、これまでインターネット上で利用できるものは非常に限ら
れていた。この3月、インターネット上で英語で利用できる日本研究・日本の人文学
の研究資料の概観を掴むために作成されたEnglish Resource Guide for Japanese
Studies and Humanities in Japan( http://www.nihu.jp/sougou/kyoyuka/japan_links/
人間文化研究機構)が公開された。稿者はその編纂におおきく係わったが、インタ
ーネット上で・英語で利用可能な資料の量が内容の選定におおきく影響した。もち
ろん、英語で利用できる研究資料に限定すると集められるものがぐっと減ってしま
うことは、英語でおもに研究が行われてきた分野でなければ珍しいことではなかろ
うし、それじたいとりたてて問題ではない(それぞれの研究資料の提供者の方々が、
英語で研究資料を利用できるようにすることに関して、どのように考えているのか
は、いずれ考えたいことではある)。興味深い点は、ここにあげられた諸資料が、
日本学における蓄積と対照して、どのていどの厚みがあるかである。そのように見
ると、諸学の伝統的な研究雑誌で、インターネット上で利用可能な資料が多々引用
される分野と、ほとんど紙媒体しか引用されない分野とに分れるのではないだろう
か。

 日本語学・日本文学はどちらかといえば前者に属すものであった。日本語学、そ
して出自上研究資料を多く共有する日本文学における研究資料としては、まず言語
資料の本文が挙げられる。第二次世界大戦後、古典文学の校訂本文の作成が進み、
『日本古典文学大系』(岩波書店)、『日本古典文学全集』(小学館)などを筆頭
とする古典文学全集なども編まれた。これらを「生データ」とすると、研究用に加
工したものが総語彙索引である。索引といえば、術語や要語を便利に引くためのも
のを想像するが、総語彙索引(総索引)では、一般名詞からテニヲハにいたるまで、
本文中のあらゆる語を一覧できるようにしたものである。総索引は数多く編まれて
おり、1970年に創刊した『笠間索引叢刊』をはじめ、『索引叢書』(和泉書院)、
『古典籍索引叢書』(汲古書院)などの索引叢書があるほどで、とくに笠間索引叢
書は127点を数える一大叢書である。全集類に漏れる文献などでは、総索引を作成す
るために校訂本文を作成することも珍しくはない。しかしながら、本文にせよ、総
索引にせよ、これまでインターネット上で利用することはほとんどできなかった。
紀要論文の形態で出版されたものが機関リポジトリから利用可能になることがあっ
たほか、『日本古典文学大系』が国文学研究資料館により( https://base3.nijl.ac.jp/
)、『日本古典文学全集』を引き継いだ『新編日本古典文学全集』(小学館)が現
在JapanKnowledge( http://japanknowledge.com/ )で利用可能となっているが、
利用上の制約もあって研究に使いやすいとは言えない。書籍として出版されたもの
は大半が画像データとしてすら電子化されておらず、まして、英語で使えるものは
皆無に等しいので、ガイドではあまり多くを挙げることができなかった。

 日本語学にかぎらず、言語研究はディジタル・データの利用が古くから盛んな部
類であった。とくに日本語学は、世界でも最古級の統計的言語研究に関する学会で
ある計量国語学会があり、コンピューターの利用にも当然長年の蓄積があるものの、
索引と本文の作成が中心で、英語研究などのように本文データベース(コーパス)
作成などにはなかなかいたらなかった。歴史言語のコーパスはどの言語でも現代語
ほどには進んでいないとはいえ、たとえば英語学ではヘルシンキ・コーパスを筆頭
に複数の研究用ディジタル・コーパスが作成されている。これらの研究用コーパス
では、単なる本文データベースと異なり、単語ごとに品詞や文法的な関係などが分
析してあり、それをふまえた用例の抽出が可能となっている。それに対して、日本
語学では、近年ようやく国立国語研究所によって「日本語歴史コーパス」が作成さ
れるにいたった段階で( https://maro.ninjal.ac.jp/ 平安時代の仮名文学と室町
時代の狂言のデータが収録されている)、まだ複数の選択肢があるにはいたってい
ない。

 それゆえに、今回の索引の電子化は重要であろうと思われるのである。総索引は
品詞認定などに基づいて作成されるものであるから、コーパス的な利用があるてい
ど可能である。これは、既存のコーパスの欠を補うものとも見なしうる。総索引の
公刊は、「校訂本文」が提供されるという点でも意義が大きい。実際、今回公開さ
れた『唐物語』『源氏物語引歌索引』『類字名所和歌集索引』『「隆達節歌謡」全
歌集』『近世流行歌謡』の5点のなかで、『類字名所和歌集索引』以外は校訂本文も
同時に公開されている。これらは全集類にかならずしも含まれるものではなく、し
かもテキスト検索が可能になったことは、多くの研究を促進するものとなろう。

 もちろん、今回はCC-BY-NC-NDでの公開ということで、利用条件に制約があり、DH
的研究を推進するものとなるかは今後の展開次第である。DH的に利用していくこと
と、コンピューターで扱いやすい形式にしていくことは不可分であるように思われ
る。たとえば、研究用コーパスからは、他動詞が主語を取る例がどれくらいあるか、
形容詞がどれほど出てくるか、音便を記した例と見られるものは何件あるかなどと
いうことがかんたんに抽出できるが、たんに既存の資料を提供するだけでなく、あ
たらしい研究資料の礎となれば、またそこからあらたな展開が生まれよう。

 インターネット上でおおくの「オリジナル」や雑誌掲載の研究論文が公開される
なか、かつて「オリジナル」や研究論文と利用者をつないできた校訂本文の存在は
見えにくくなっている。しかし、素人がいきなり「オリジナル」に立ち向かっても
無力なことは言うまでもなく、陸続と公開されていく「オリジナル」を活かすうえ
でも、このような研究資料の公開は重要な取り組みであろうと思うのである。いか
ほど厳正な校訂本文であろうと、単一の研究資料に依拠するのは健全な姿ではない。
複数の資料が使えるよう、さらなる索引や本文の公開が期待される。

[1]http://kasamashoin.jp/2015/04/27413.html
https://kokubunken.repo.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&activ...

Copyright(C)OKADA, Kazuhiro 2015- All Rights Reserved.
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 続きは【後編】をご覧ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 配信の解除・送信先の変更は、
    http://www.mag2.com/m/0001316391.html
                        からどうぞ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆人文情報学月報編集室では、国内外を問わず各分野からの情報提供をお待ちして
います。
情報提供は人文情報学編集グループまで...
       DigitalHumanitiesMonthly[&]googlegroups.com
                  [&]を@に置き換えてください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
人文情報学月報 [DHM045]【前編】 2015年04月28日(月刊)
【発行者】"人文情報学月報"編集室
【編集者】人文情報学研究所&ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)
【 ISSN 】2189-1621
【E-mail】DigitalHumanitiesMonthly[&]googlegroups.com
                 [&]を@に置き換えてください。
【サイト】 http://www.dhii.jp/

Copyright (C) "人文情報学月報" 編集室 2011- All Rights Reserved.
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

Tweet: