ISSN 2189-1621

 

現在地

DHM 031 【前編】

2011-08-27創刊

人文情報学月報
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Digital Humanities Monthly

             2014-02-26発行 No.031 第31号【前編】 436部発行

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 ◇ 目次 ◇
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【前編】
◇《巻頭言》
「『読む』という行為はデジタル技術でどう変わるか?」
 (北本朝展:国立情報学研究所)

◇《連載》「Digital Humanities/Digital Historyの動向
      ~2014年1月中旬から2月中旬まで~」
 (菊池信彦:国立国会図書館関西館)

◇人文情報学イベントカレンダー

【後編】
◇イベントレポート(1)
シンポジウム「東洋学におけるテクスト資料の構造化とWebの可能性」(後半1)
 (北岡タマ子:お茶の水女子大学)

◇イベントレポート(2)
緊急シンポジウム:近デジ大蔵経公開停止・再開問題を通じて人文系学術研究にお
ける情報共有の将来を考える
 (岩崎陽一:東京大学大学院人文社会系研究科特任研究員)

◇イベントレポート(3)
第3回「知識・芸術・文化情報学研究会」
 (永崎研宣:人文情報学研究所)

◇イベントレポート(4)
「脚本アーカイブズの一般公開へ向けて-『アーカイブの現在と未来』」
 (鈴木親彦:東京大学大学院人文社会系研究科博士課程)

◇編集後記

◇奥付

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【人文情報学/Digital Humanitiesに関する様々な話題をお届けします。】
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◇《巻頭言》
「『読む』という行為はデジタル技術でどう変わるか?」
 (北本朝展:国立情報学研究所)

 人文情報学は人文学のどの部分に影響を与え、何を変えるのだろうか。その見極
めは、人文情報学の存在理由にもつながる重要な問題である。この問題への答えは
いろいろあるだろうが、私自身は最近「読む」という行為がどう変わるかに関心を
持っている。すなわち、デジタル技術はどのような新しい「読み方」を開拓できる
か、という問題である。

 私はもともと自然科学系の教育を受けてきた情報学者なので、「読む」という行
為に対しては必ずしも自覚的ではなかった。なぜなら、自然科学系の分野では、読
むというのは情報を摂取するための行為であり、手段に過ぎないとも言えるからで
ある。極端な話、究極の理論さえ理解してしまえば、すべてのテキストは同じ理論
の説明のバリエーションでしかないことになる。だから、テキストが理論の正しい
説明になっているかどうかは気にするとしても、テキストの一字一句が本当は何を
意味するかを、批判的に解釈する必要はあまりないのである。

 それに対し、人文学では読むこと自体が目的であり、読んで解釈した結果を証拠
として積み重ねていく行為が、学問体系を形成する基礎となっている。いつ、どこ
で、誰が、何を言ったか(したか)、その正しい解釈を積み重ねていくことが、全
体像の構築につながるのである。つまり人文学における「読む」という行為は、そ
の内容をそのまま摂取する行為ではなく、その内容の「本当の意味」を考えながら
批判的に読む行為と言えるだろう。

 そのような批判的な読み方の存在は、もちろん知識としては知っていたが、実感
を得たのはそれほど昔のことではない。その後、こうした読み方の違いについて考
えていくうちに、「読む」という行為がデジタル技術によってどう変わるか、とい
う問題に関心が向いてきた。人文学では「読む」ことの重要性が自然科学系の分野
に比べてはるかに高いのだから、もし「読む」という行為がデジタル技術で変わる
ならば、そこに大きな未知のチャンスが眠っているのではなかろうか。そこで以下
では、「読む」という行為をかなり広く捉えることで、デジタル技術が影響を与え
ると考えられる3つの方向性を考えてみたい。

 第一に、メディアが可塑的になる。これまで「読む」行為は主に紙(あるいは種
々の固いもの)の表面に刻まれた固定的なパターンに対して行われてきた。しかし
デジタル技術に基づくメディアでは、自分の読み方に合わせて可塑的に表示するこ
とも可能となる。それを象徴的に表すのが、タブレットの操作に慣れた子供が、紙
の書籍にタッチして2本の指で文字を拡大しようとする行為である。子供にとっては、
指で拡大できないメディアなんて不便だね、というのが素朴な感想だろう。こうし
た電子書籍にまつわる技術は、読む対象をより可塑的に表示することで、読む行為
の効率や利便性を高める点に価値がある。しかし、より本質的な変化を与えるのは、
データベースの活用に基づく可塑的なメディアである。データベースに対する高度
な検索機能を使うことによって、まさに「読みたいものを読む」ための可塑的なメ
ディアが実現するだけでなく、目的に合わせてその場で生成されたものを読むこと
で、比較などに基づき解釈できることの可能性は大きく拡大する。

 第二に、機械が「読む」ようになる。最近は「ビッグデータ」という言葉が流行
しているが、大規模データはどのように読み方を変えるのか、言い替えれば、ソフ
トウェアでデータを読むことは人文学にどのような影響を与えるのか、という問い
は重要である。まず影響を受けるのは、従来は人間が読んでいたつもりだった行為
が、実はソフトウェアでも代替できます、という場合である。例えば、シェークス
ピア研究が、全文データベースの構築を境にガラッと変わった、という話を聞いた
ことがある。数十年前なら、どの本の何ページにこういう表現があります、という
データをまとめることが「読む」行為に含まれていたが、データベース検索の登場
により、そうした研究の価値は大きく低下したというのである。最近であれば、
Google Booksの大規模テキストから構築したGoogle Ngramデータベースにより、ど
の表現が何年ごろの本に出現したかを図書館丸ごとスケールで瞬時に検索できるよ
うになった。さらに検索にとどまらず、テキスト構造をグラフ構造などによって分
析・可視化し、より高次の意味を把握する試みも増えている。となると、人間は、
機械の補助を受け、あるいは機械と相互に支援し合うことで、さらに高度な読み方
を目指していく必要がある。

 第三に、「読む」対象が拡大していく。これまでは、限られた量のテキストを読
むことが物理的に可能な読み方であった。ところが、データベースの充実を通して
より多くのデータにアクセスできる環境が整えば、それ以外の世界も読もうと思え
ば読める状況となる。テキストではない対象をどう「読む」か、そこにテキストで
蓄積した批判的な読み方を適用できるかなど、より多くの種類のデータを人文学と
いう文脈で読みこなすための技法が必要になってくる。

 我々が最近進めている研究である「データ史料批判」も、この「読む」という行
為に焦点を合わせた研究といえる。歴史学がこれまで文字史料を「読む」ことに集
中してきたのに対し、地図や写真などの非文字史料を「読む」新しい技法を提案し、
定量的な面から批判的な読み方の精度を高めることで、新しい解釈を生み出してい
くことを目指す。また、データベースを活用した史料横断的な読みから未知の関連
性などを見出すことで、新しい歴史的な事実を復元することも研究の目標である。
これまでに、シルクロードの古地図や古写真の新しい読み方を提案することで、シ
ルクロード地域の遺跡の関係性に関する網羅的な調査に関する成果などを挙げてい
る。詳しくは、ディジタル・シルクロード・プロジェクトのウェブサイト(
http://dsr.nii.ac.jp/ )をご覧いただきたい。

 ただし、こうした研究の実現にはいくつかの困難がある。中でも最大の困難は、
人文学研究における「伝統」かもしれない。人文学のように歴史が長い研究分野で
は、手法や他分野との境界が歴史的に固まっているため、分野の伝統から外れた非
伝統的なアプローチや、分野を越えた研究テーマの設定に警戒心を抱く研究者が多
い。また、十分に実証されていない手法に対する懐疑も強く、これは比較的新しい
研究分野である情報学とは大きく異なる状況であると言える。しかし、学問の新し
い可能性を拓くには、新しい考え方を生み出していくしかないのも確かである。可
塑的なメディアを使いこなし、機械による読みの支援も受けながら、新しいデータ
にチャレンジしていけるような人文情報学の研究者が、新しい学問の世界を切り拓
いていくだろう、と期待している。

執筆者プロフィール
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北本朝展(きたもと・あさのぶ) 国立情報学研究所・コンテンツ科学研究系・准教
授、および総合研究大学院大学・情報学専攻・准教授(大学院生募集中!)。研究
の興味はデジタル・ヒューマニティーズやクライシス情報学、地球環境情報学など
における、データ中心的アプローチの開拓にある。また、研究成果となるデータベ
ースを多数のウェブサイトで公開し、多くの利用者がデータを日常的に活用する環
境の実現を目指している。

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◇《連載》「Digital Humanities/Digital Historyの動向
      ~2014年1月中旬から2月中旬まで~」
 (菊池信彦:国立国会図書館関西館)

 前号に引き続き、2014年1月中旬から2月中旬までのDigital Humanities/Digital
Historyに関する動向をまとめた。

○新聞・ブログ記事
 1月3日にアメリカ歴史学協会(American Historical Association)の年次大会で
開催されたセッションDigital Historiography and the Archivesでの議論を継続し
た、ブログセッションの記事が公開されている。このセッションでは、デジタル情
報保存の選択や利用等が歴史研究者にとっても避けられない問題であるとしてテー
マに掲げられており、計5回にわたるブログセッションでは、その登壇者4名がそれ
ぞれ記事を寄稿している。
https://aha.confex.com/aha/2014/webprogram/Session10317.html
http://www.michaeljkramer.net/cr/?p=5496

 1月29日、歴史を題材にしたゲーム関連の研究サイトPlay the Pastに、“Games
as Historical Scholarship”という記事が掲載された。タイトルの通り、ゲーム作
成は歴史学の成果と成り得るかを論じたもので、「より広い『読者』へアピールす
る可能性がある」、「時間の経過による変化をより明確に思考できる可能性がある」、
「歴史叙述のスタイルが不可避的に有する制限から解放される可能性がある」とい
う3つの論点が挙げられている。
http://www.playthepast.org/?p=4365

 DHと図書館をテーマとした情報サイトdh+libに、1月30日から3回に分けてDonald
Beagleによる記事“Digital Humanities in the Research Commons: Precedents &
Prospects”が掲載されている。Belmont Abbey Collegeの図書館サービス長である
彼は、インフォメーションコモンズのパイオニアとして知られている。記事では、
図書館内における「コモンズ」と図書館によるDH支援サービスモデルの類似性等が
テーマに挙げられて論じられている。
http://acrl.ala.org/dh/2014/01/30/digital-humanities-in-the-research-com...

○イベント・出来事
 ゲティ財団の支援を受け、カリフォルニア大学ロサンゼルス校は今年7月28日から
8月6日にかけて、特に芸術史におけるDH研究の方法やコンセプトを教えるサマーイ
ンスティテュート“Beyond the Digitized Slide Library”を開催すると発表して
いる。3月1日まで応募可能。
http://www.humanities.ucla.edu/getty/

 1月23日、Perseus Digital Libraryが、EuropeanaのEAGLEプロジェクト(古代ロ
ーマ・ギリシア語の碑文資料の情報をEuropeanaへ提供するプロジェクト)への協力
を発表した。両研究プラットフォーム間での碑文研究データの共有化に向けた取り
組みを行うとしている。
http://www.eagle-network.eu/new-cooperation-between-eagle-and-perseus-di...

 京都大学人文科学研究所共同研究班「人文学研究資料にとってのWebの可能性を再
探する」が、1月24日に「緊急シンポジウム:近デジ大蔵経公開停止・再開問題を通
じて人文系学術研究における情報共有の将来を考える」を、また2月19日には、「公
開シンポジウム+チュートリアル:翻デジ2014:クラウドソーシングによる近デジ
資料のデジタル翻刻」を開催した。
http://www.dhii.jp/dh/zinbun/daizokyo2014.html
http://www.dhii.jp/dh/zinbun/hondigi2014.html
http://togetter.com/li/632127

 1月26日、ドイツのDH学会DHd(Digital Humanities im deutschsprachigen Raum)
が、European Association of Digital Humanities(EADH)への加盟を発表した。
これにより、DHdは、EADHも参加する国際的なDH学会連盟組織であるAlliance of
Digital Humanities Organizations(ADHO)にも加わることとなった。
http://eadh.org/news/2014/01/26/dhd-now-official-associate-organization-...

 1月に、アメリカ歴史学協会は、デジタル研究の評価ための枠組みや基準等を定め
るアドホックな委員会を結成した。今秋にもそのガイドラインを発表する予定とさ
れている。
http://www.historians.org/about-aha-and-membership/governance/policies-a...
http://wp.me/p3M99u-90

○プロジェクト・ツール・リソース
 1月20日、イギリスのウェルカム図書館が、医学史から現代のバイオ医療までの様
々なテーマに関わる資料群の高精細画像10万点超を、CC-BYのライセンスで公開した。
http://blog.wellcomelibrary.org/2014/01/thousands-of-years-of-visual-cul...
http://wellcomeimages.org/

 また、2月4日には、様々なフォーマットのデジタル化資料を閲覧することのでき
るビューアをオープンソースで公開している。
http://blog.wellcomelibrary.org/2014/02/open-sourcing-the-library/
http://current.ndl.go.jp/node/25449

 1月20日に、TEI P5ガイドラインのver.2.6.0が公表された。
http://textencodinginitiative.wordpress.com/2014/01/23/tei-p5-guidelines...

 1月21日、国立国会図書館は、デジタル化資料提供サイト名を「国立国会図書館デ
ジタル化資料」から「国立国会図書館デジタルコレクション」に変更し、トップペ
ージのデザインをリニューアルした。さらに同日、図書館向けデジタル化資料送信
サービス(図書館送信)も開始した。
http://dl.ndl.go.jp/
http://current.ndl.go.jp/node/25283

 1月21日、ゲティ財団のGetty Publicationsが、過去45年間にゲティ保存研究所、
ゲティ研究所およびゲティ美術館が発行した美術関連の図書から、250冊以上を無料
で閲覧、ダウンロードできる“Virtual Library”を公開した。
http://www.getty.edu/publications/virtuallibrary/index.html
http://news.getty.edu/press-materials/press-releases/getty-publications-...
http://current.ndl.go.jp/node/25321

 ジョージメイソン大学Roy Rosenzweig Center for History and New Media
(RRCHNM)のプロジェクト“PessFoward”と、Institute of Museum and Library
Servicesの支援のもと、“WebWise Now”というサイトが立ち上げられている。
Digital Humanities Nowとよく似たサイトの構成で、デジタル(化)プロジェクト
に関心を持つ図書館やアーカイブス等のいわゆるGLAMs職員向けに、それらに関する
情報提供をするのが目的とされている。
http://imlswebwise.org/wwnow/
http://imlswebwise.org/blog/announcing-webwise-now/
http://acrl.ala.org/dh/2014/01/21/resource-webwise-now/

 1月24日、英国図書館(British Library)とArts and Humanities Research
Council(AHRC)が、オープンアクセス出版における学術書をテーマとした2年間の
研究プロジェクトを開始すると発表した。
http://pressandpolicy.bl.uk/Press-Releases/The-Academic-Book-of-the-Futu...
http://current.ndl.go.jp/node/25340

 1月24日、アメリカのダートマス大学のTiltfactor Laboratoryが、プラットフォ
ーム“Metadata Games”をオープンソースソフトウェアとしてリリースした。クラ
ウドソーシングで画像や動画、オーディオクリップへのタグ付けとそのデータの収
集を可能にするというもの。
http://www.metadatagames.org/
http://www.arl.org/news/community-updates/3108-metadata-games-crowdsourc...

 1月24日、日本原子力研究開発機構が、国立国会図書館と国際原子力機関(IAEA)
と連携し、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故関連情報アーカイブ化への
取組みを本格化すると発表した。これには、国立国会図書館との連携によるインタ
ーネット情報の恒久的なアクセス確保等が具体的な取り組みに含まれている。
http://www.jaea.go.jp/02/press2013/p14012401/index.html

 スタンフォード大学図書館とフランス国立図書館(BnF)が、フランス革命史料デ
ジタルアーカイブ“French Revolution Digital Archive”を公開した。
http://frda.stanford.edu/
http://current.ndl.go.jp/node/25418

 1月29日、Europeanaによる第一次世界大戦史料ポータル“Europeana 1914-1918”
が公開された。個人宅に眠る未刊行の書簡・写真等9万点以上の史料や、Europeana
Collections 1914-1918のプロジェクトとして行ってきた、各国の第一次世界大戦関
連のデジタル化史料40万点以上にアクセスできる。
http://www.europeana1914-1918.eu/en
http://wp.me/p3M99u-8M
http://pro.europeana.eu/pro-blog/-/blogs/berlin%3A-europeana-1914-1918

 また、英国図書館はEuropeana 1914-1918向けのデジタル化コンテンツの一部を、
学校教育用に提供するサイトを公開した。
http://www.bl.uk/world-war-one

 その他、第一次世界大戦関連の動きとして、カナダ国立図書館・文書館は、海外
派遣軍の64万点のファイルのデジタル化計画を発表している。
http://www.centenarynews.com/article?id=1430
http://current.ndl.go.jp/node/25401

 1月30日に、スタンフォード大学の研究グループが、テキストをドラッグ&ドロッ
プするだけで簡単に機械学習によるテキスト分析ができるツールetcMLを公開した。
http://engineering.stanford.edu/research-profile/stanford-scientists-put...
http://www.etcml.com/

 また、同じくスタンフォード大学からは、Center for Spatial and Textual
Analysis内のラボHumanities+Designが、“Palladio”というビジュアライゼーショ
ンソフトウェアのベータ版を公開している。データをアップロードすることで、マッ
ピングやグラフ、フィルタリングをすることができる。ただし、データの保存はで
きない。
http://palladio.designhumanities.org/

 1月30日、国立国会図書館の提供する近代デジタルライブラリーをiOS上から手軽
に閲覧するためのアプリ「近デジブラウザ」がリリースされた。作者はYuta
Hashimoto氏。
https://itunes.apple.com/jp/app/id799259241
https://twitter.com/yuta1984/status/429190127924285440

 2月5日、Twitter社は研究機関向けにツイートデータを提供する「Twitter Data
Grantsプログラム」の企画案募集を開始した。3月15日応募締切。
https://blog.twitter.com/ja/2014/tuitodetawoshi-wareteiruyan-jiu-ji-guan...

 人文学の意義を発信しながら北米を横断するバスツアー“Humanities Matter
Bus”のプロジェクトが2月11日に発表され、現在、Kickstarterでの資金調達が行わ
れている。これは、カナダの学生を中心にしたプロジェクトDHMakerBusと、人文学
アドヴォカシープロジェクト4Humanitiesとの協同で行われるもので、人文学の存在
意義が疑問視される現状に対して、人文学がどのような重要性をもつのか、その意
見を拾い集めつつ、またウェブサイトで発信するというプロジェクトである。
http://www.strikingly.com/humanitiesmatter
http://ja.scribd.com/doc/206394711/Press-Release-Humanities-Matter-tour-...
https://www.kickstarter.com/projects/130281790/the-humanities-matter-web...

 イスラエル考古庁による死海文書のデジタルライブラリー“Leon Levy Dead Sea
Scrolls Digital Library”がバージョンアップされ、1万件の新たな画像等が追加
された。
http://www.deadseascrolls.org.il/
http://www.antiquities.org.il/article_Item_eng.asp?sec_id=25&subj_id=240...

○論文・学術雑誌・研究書
 D-Lib Magazineの2014年1-2月号(vol.20, no.1/2)に、2013年10月にカリフォルニ
アで開催されたIEEEの国際カンファレンスにおいて、人文学におけるビッグデータ
をテーマにしたワークショップBig Humanities Data Workshopの報告論文が掲載さ
れている。
http://www.dlib.org/dlib/january14/blanke/01blanke.html

 “Journal of TEI”のvol.6(2013年12月号)が刊行された。2012年のTEIカンファ
レンスのペーパーが掲載されている。
http://jtei.revues.org/841

 1月30日に、筆者は文献管理ツールのZoteroとMendeleyに、DHの日本語文献をまと
めるグループ“Digital Humanities(Japanese)/デジタルヒューマニティーズ(
日本語文献)”を開設した。関心のある方はご協力をいただきたい。
http://wp.me/p3M99u-8Q
http://mnd.ly/1idqB52
https://www.zotero.org/groups/digital_humanities_japanese__

○レポート・報告書等
 1月28日にウェブサイトPlay the Pastが、過去3年間のサイト記事の中で反響の多
かったものをまとめた電子書籍“Play the Past: Redux”をリリースした。ePub、
PDF、mobiの3つの形式で、フリーで公開されている。
http://www.playthepast.org/?p=4373

 2013年12月5日から7日にかけてドイツのハノーヴァーで開催されたカンファレン
ス“(DIGITAL)HUMANITIES REVISITED. Challenges and Opportunities in the
Digital Age”の報告書(英・独によるサマリー)が公開されている。
http://www.volkswagenstiftung.de/digitalhumanities.html
http://www.volkswagenstiftung.de/fileadmin/grafiken/veranstaltungen/2013...

 2月6日、OCLC Researchが“Does Every Research Library Need a Digital
Humanities Center?”と題するレポートを公表した。
http://www.oclc.org/research/news/2014/02-06.html
http://current.ndl.go.jp/node/25452

 このレポートについて、DH研究者等がブログ記事を公表しており、本稿冒頭で触
れた情報サイトdh+libがその記事リストをまとめている。
http://acrl.ala.org/dh/2014/02/11/resource-does-every-research-library-n...

 ドイツのニーダーザクセン州・大学図書館(Niedersa:chsischen Staats- und
Universita:tsbibliothek Go:ttingen)が、電子インフラをテーマとした過去10年
間の論考をまとめた“Evolution der Informationsinfrastruktur - Kooperation
zwischen Bibliothek und Wissenschaft”を刊行した。印刷版は有料だが、PDF版は
オープンアクセスで公開されている。
http://dhd-blog.org/?p=3012
https://sites.google.com/site/10jahrefe/home

 2月6日に、Europeanaの人文学の研究における利用について検討したレポートが、
Europeana Cloudのブログで紹介されている。人文学においてEuropeanaが今後採用
すべきものとして、利用者によるコメントの追加や利用者志向のメタデータへの適
応、インポートとエクスポート機能の強化等が推奨されているとのことである。
http://pro.europeana.eu/web/europeana-cloud/blog/-/blogs/researchers-tel...
http://current.ndl.go.jp/node/25493

特殊文字については次のとおり表記しました。
ウムラウト:a:、o:

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◇人文情報学イベントカレンダー(■:新規掲載イベント)

【2014年3月】
□2014-03-18(Tue)~2014-03-21(Fri):
Australasian Association for Digital Humanities(aaDH)2014
(於・豪洲/University of Western Australia)
http://dha2014.org/

□2014-03-25(Tue)~2014-03-28(Fri):
the first annual conference of the Association of Digital
Humanities in the German speaking countries(DHd 2014)
(於・ドイツ/University of Passau)
http://www.dhd2014.uni-passau.de/

【2014年4月】
□2014-04-19(Sat)~2014-04-20(Sun):
Soseki's Diversity
(於・米国/University of Michigan Ann Arbor)
http://wwwqa.lsa.umich.edu/cjs/ssekisdiversitysymposium_ci

【2014年5月】
■2014-05-19(Mon)~2014-05-20(Tue):
DATeCH 2014: Digital Access to Textual Cultural Heritage
(於・スペイン/Biblioteca Nacional de Espan~a)
http://www.datech2014.info/

■2014-05-21(Wed)~2014-05-23(Fri):
Encuentro RedHD-GO::DH 2014
(於・メキシコ/Biblioteca Vasconcelos)
http://humanidadesdigitales.net/index.php/encuentro2014/encuentro2014-en

特殊文字については次のとおり表記しました。
ティルデ:n~

Digital Humanities Events カレンダー共同編集人
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小林雄一郎(日本学術振興会特別研究員PD)
瀬戸寿一(東京大学空間情報科学研究センター)
佐藤 翔(同志社大学教育文化学科 助教)
永崎研宣(一般財団法人人文情報学研究所)

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 続きは【後編】をご覧ください。

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 配信の解除・送信先の変更は、
    http://www.mag2.com/m/0001316391.html
                        からどうぞ。

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◆人文情報学月報編集室では、国内外を問わず各分野からの情報提供をお待ちして
います。
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人文情報学月報 [DHM031]【前編】 2014年02月26日(月刊)
【発行者】"人文情報学月報"編集室
【編集者】人文情報学研究所&ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)
【E-mail】DigitalHumanitiesMonthly[&]googlegroups.com
                 [&]を@に置き換えてください。
【サイト】 http://www.dhii.jp/

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