ISSN 2189-1621

 

現在地

イベントレポート「OSDH2011を振り返って」

◇イベントレポート

OSDH2011を振り返って: http://www.lang.osaka-u.ac.jp/~osdh2011/
(永崎研宣:人文情報学研究所)

2011年9月12-14日、大阪大学豊中キャンパスにて、Osaka Symposium on Digital
Humanities 2011が開催された。これは、その名の通り、Digital Humanitiesをテー
マとする国際シンポジウムであり、Japanese Association for Digital Humanities
(JADH)、日本語では人文情報学推進協議会と名付けられた学術団体の設立総会であ
った。JADHは、日本のDigital Humanities分野同士の連携と、海外の関連分野との
連携を支援するための組織として発足した。開会式では、Digital Humanitiesの国
際連合組織ADHOの代表であるRaymond Siemens教授の基調講演があり、ヨーロッパの
代表的Digital Humanities関連学会ALLCの代表であるLisa Lena Opas-hanninen教授
をはじめ、Digital Humanitiesを国際的に牽引する研究者達が参加し、国内からも
様々な研究者が参加する中でJADHは産声をあげることとなった。

また、本メールマガジンでも予告を掲載したが、このシンポジウムに際して開催さ
れたワークショップはいずれも大変盛況であった。ドイツ・ハンブルク大学で開発
されている文献マークアップ・解析統合ツール、CATMAの構想から実践までを扱う
ワークショップ、米国・メリーランド大学及びアイルランド・トリニティカレッジ
ダブリンを中心に開発されている文献比較表示のためのWebアプリケーション、
Versioning Machineの使い方とそこに文献を読み込ませるためのデジタル化手法を
実際に経験するワークショップ、言語学に関する様々なマルチメディアツールを扱
うワークショップが開催され、日本に居ながらにして、Digital Humanitiesの国際
的な最先端の動向の一端を肌で感じる良い機会となった。

このシンポジウムには、日本からは30の研究機関から62人の発表者が、ヨーロッパ
からは7人、北米から2人、オーストラリアから1人が参加し、様々な議論が展開され
た。発表内容に関しては、ここでは詳細は割愛するが(詳細はWebページの大会プロ
グラムを参照されたい)、文化遺産、史学、文学、言語学、情報学、写本研究、AR
等、人文学における情報科学の応用に関わる多様なテーマが採り上げられていた。
発表言語は英語のみとなっていたが、比較的若手の研究者の発表が多く見られ、そ
の奮闘ぶりにはこの分野の将来を期待させるものがあった。

閉会式の最後に登壇されたHarold Short教授の総括の言によれば、この研究発表の
分野的な広がりは、先の6月にスタンフォード大学にて開催されたDigital
Humanities 2011と似通っているとのことであり、日本が国際的に展開していくため
の素地は十分に整っていると期待されるところである。
日本においても、人文学におけるデジタル技術の応用に関する研究はすでに数十年
の歴史がある。その積み重ねが国際的な連携を広げつつ深めていき、それによって
さらに自らをも深めていくための確かな一歩は、関係者の多大な努力により、この
ようにして、ようやく、しかし、着実に、踏み出された。このシンポジウムは、201
2年は東京大学にて開催予定となっている。関心がおありの方は、ぜひ、ご参加・ご
発表など、ご検討されたい。

Copyright (C) NAGASAKI, Kiyonori 2011- All Rights Reserved.
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

DHM 003

Tweet: