人文情報学月報第92号【後編】
ISSN 2189-1621 / 2011年8月27日創刊
目次
【前編】
- 《巻頭言》「アーカイブズと人文情報学—コラボレーションを成功に導く鍵となるのは—」
:公益財団法人渋沢栄一記念財団 - 《連載》「Digital Japanese Studies 寸見」第48回
「「信州地域史料アーカイブ」がリニューアル」
:国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター - 《連載》「欧州・中東デジタル・ヒューマニティーズ動向」第12回
「IIIF に対応したコプト語文献のデジタルアーカイブ(1):バチカン図書館」
:ゲッティンゲン大学
【後編】
- 《連載》「東アジア研究と DH を学ぶ」第12回
「「関西大学デジタルアーカイブ」の公開」
:関西大学アジア・オープン・リサーチセンター - 人文情報学イベントカレンダー
- 編集後記
《連載》「東アジア研究と DH を学ぶ」第12回
「「関西大学デジタルアーカイブ」の公開」
本号が刊行されている時期であれば、関西大学アジア・オープン・リサーチセンター(KU-ORCAS)の新しいデジタルアーカイブとして、「関西大学デジタルアーカイブ」が公開されているはずである[1]。 この「関西大学デジタルアーカイブ」は、関西大学が所蔵する東アジア資料を “オープン” にすべく開発したものである。本号では、この「関西大学デジタルアーカイブ」について紹介したい。
これまでの連載で触れたように、KU-ORCAS は IIIF コンソーシアムの加盟機関として IIIF への対応を方針として掲げてきた。その方針のとおり、「関西大学デジタルアーカイブ」は IIIF に対応している点に、まずは特徴がある。 そして、かねてからの検討のとおり、メタデータは CC0で、画像データに関してはパブリックドメインマークを付すこととなった。なお、ビューアは Mirador を主体に、Universal Viewer、IIIF Curation Viewer の3つを用意し、利用者の好みに任せることにした。
「関西大学デジタルアーカイブ」では、KU-ORCAS の前身である関西大学アジア文化研究センター(CSAC)が開発した CSAC アーカイブのデータを中心に公開している。KU-ORCAS のウェブサイトへアクセスすると、タブのなかに「関西大学デジタルアーカイブ」がある(はずである。実はこの原稿を書いている段階ではまだ明確に定まってはいない)。 そのタブをクリックすると、デジタルアーカイブがまとまったページへ遷移することとなる。
そのページには、メインとなる「関西大学東アジアデジタルアーカイブ」のほかに、「泊園印章デジタルアーカイブ(仮)」「泊園文庫デジタルアーカイブ(仮)」、そして「大坂(阪)画壇デジタルアーカイブ(仮)」の4つが掲載されている。 いずれも(仮)なのは先ほどと同様、この原稿を書いている段階では定まってはいないからである。ご容赦いただきたい。
話を戻そう。「泊園文庫デジタルアーカイブ(仮)」「泊園印章デジタルアーカイブ(仮)」は、いずれも泊園文庫の資料群の一部が収録されている。 「泊園文庫デジタルアーカイブ(仮)」は、約1000件あり、関西大学の学統のひとつである泊園書院の蔵書コレクションである。 ただし、関西大学図書館に所蔵されている泊園文庫には2万数千冊に登る書籍や自筆校本等があり、現在公開している資料はそのなかのごく一部に過ぎない。 一方で、「泊園印章デジタルアーカイブ(仮)」は約200点あり、本学所蔵分のほぼすべてが収録されている。
「大坂(阪)画壇デジタルアーカイブ(仮)」では、本学図書館の所蔵する近世近代の大坂(阪)画壇のコレクション240点余りを公開する。 江戸や京都の画壇と比較すると忘れられた存在であった大坂(阪)画壇ではあるが、近年見直しが進みつつあるという。この「大坂(阪)画壇デジタルアーカイブ(仮)」は、泊園文庫に関わる2つのデジタルアーカイブとともに、近世近代の大阪文化研究の進展に果たす意義が大きいものとなるだろう。
最後に、「関西大学デジタルアーカイブ」には、関西大学の文庫資料や KU-ORCAS 所属教員の個人蔵書等1500点ほどが収録されている。 漢籍資料が中心ではあるが、戦国時代の武将の書状等、日本の様々な貴重資料も収録予定であり、今後はこの「関西大学デジタルアーカイブ」の運営が中心となる想定である。
この度の初回公開時の資料は、メタデータ件数レベルで約3000件であり、決して多いものではないが、整理中の画像が倍以上あることから、デジタルアーカイブ公開後も継続的に公開画像点数を増やしていく予定である。 だが、デジタルアーカイブの公開資料数の多さを競う必要は必ずしもないだろう。むしろ重要なのは、IIIF に対応したデジタルアーカイブが KU-ORCAS の活動の土台に過ぎないということである。 今後は、これらのデータを使って、どのように本学の東アジア文化研究を広く国内外へ発信していくかに注力していくこととなる。 そのためにもまずは、IIIF に対応した国内外のデジタルアーカイブの東アジア関係資料を統合検索できる「オープンプラットフォーム」の開発を目指しているが、研究とその成果の発信――研究者だけでなく、市民に対しても――を行うことは、これまで以上に重要になっていく。
本号をもって筆者の連載は終了するが、KU-ORCASの活動はまさにこれからである。今後も、デジタルアーカイブあるいはデジタルヒューマニティーズを研究する読者諸兄姉のご協力を賜りたく、伏してお願いする次第である。 なお、最後になったが、一年にわたり貴重な連載の機会を与えていただいた永崎研宣先生に改めてお礼を申し上げる。
人文情報学イベント関連カレンダー
【2019年5月】
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2019-05-11 (Sat):
第120回人文科学とコンピュータ研究会発表会於・京都府/京都大学人文科学研究所 -
2019-05-27 (Mon)〜2019-05-28 (Tue):
Japan Open Science Summit 2019(JOSS2019)於・東京都/学術総合センター 一橋講堂 他
【2019年6月】
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2019-06-08 (Sat)〜2019-06-09 (Sun):
2019年度アート・ドキュメンテーション学会年次大会於・滋賀県/成安造形大学 -
2019-06-24 (Mon)〜2019-06-28 (Fri):
2019 IIIF Conference於・ドイツ/ゲッティンゲン大学
Digital Humanities Events カレンダー共同編集人
◆編集後記
今回で菊池信彦氏の連載が終了となります。関西大学のプロジェクトを中心として、東アジアのデジタルアーカイブに関わる有益な情報を様々に提供していただきました。改めて、深く感謝いたします。
ところで、いよいよ、メルマガサイトの移行に着手しました。これまで使ってきたまぐまぐはメジャーで安定しており、基本的には便利なのですが、当メールマガジンの分量が増え、文字コードもUnicodeでなければ対応が難しいという状況になるなか、編集にかかる労力を低減するため、依拠するサイトを移行させていただくことにいたしました。 10年若ければ、自力でシステム導入していたところですが、さすがにそういう方面の労力はもうあちこちに割きすぎてもう残っておりませんので、色々検討の結果、ブラストメールというメール配信サービスを試用させていただくことにしました。 改めての読者登録をお願いしなければなりませんので、お手数をおかけしてしまいますこと大変恐縮ですが、うまくいきましたら、このまま完全移行に向けて進めていきます。何卒よろしくお願いいたします。
(永崎研宣)
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