ISSN 2189-1621

 

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DHM 144 【後編】

人文情報学月報/Digital Humanities Monthly


人文情報学月報第144号【後編】

Digital Humanities Monthly No. 144-2

ISSN 2189-1621 / 2011年08月27日創刊

2023年7月31日発行 発行数1082部

目次

【前編】

  • 《巻頭言》「文化遺産オンラインのリニューアル公開とタイムマシンナビ
    丸川雄三国立民族学博物館
  • 《連載》「Digital Japanese Studies 寸見」第100回
    国立国会図書館障害者用資料検索「みなサーチ」β 版を公開
    岡田一祐慶應義塾大学文学部

【後編】

  • 《連載》「欧州・中東デジタル・ヒューマニティーズ動向」第61回
    IIIF 年次会議とショーケース―イタリア・ナポリ―2023年6月5–8日の参加報告
    宮川創人間文化研究機構国立国語研究所研究系
  • 《連載》「仏教学のためのデジタルツール」第9回
    国文学研究資料館の国書データベース
    村瀬友洋SAT 大藏經テキストデータベース研究会、大蔵経研究推進会議
  • 人文情報学イベント関連カレンダー
  • 編集後記

《連載》「欧州・中東デジタル・ヒューマニティーズ動向」第61回

IIIF 年次会議とショーケース―イタリア・ナポリ―2023年6月5–8日の参加報告

宮川創人間文化研究機構国立国語研究所研究系

IIIF(トリプルアイエフ:International Image Interoperability Framework:国際的な画像の相互運用の枠組み)[1]は、画像をはじめとするデジタルメディアの共有と相互運用を容易にするための一連の共通規格を提供している。これは、標準の API を用いて高精細なデジタル画像のアクセシビリティと利便性を大幅に向上させ、画像の比較や注釈など、デジタルコレクションの可能性を広げるための重要な規格である。IIIF は、近年は、2D 画像だけでなく、3D 画像、音声や動画にも対応している。IIIF は、様々なプラットフォーム間でデジタルメディアの互換性を確保することを可能にしている 。これにより、ユーザはどのデバイスからでも高精細デジタル画像を同じように表示、操作、注釈付けすることができる。ビューワには、Mirador、Universal Viewer、IIIF Curation Viewer、TIFY、OpenSeadragon などがある。現在、IIIF は、ヨーロッパや北アメリカを中心に様々な図書館、博物館、美術館、研究機関などのオンラインコレクションで用いられており、日本でもその使用が非常に広がっている。IIIF の相互運用性を利用して、Europeana[2]やジャパンサーチ[3]、Cultural Japan[4]などのデジタルアーカイブ横断検索サイトは、様々なデジタルコレクションから文化資料の画像を提供している。

この IIIF の技術仕様を策定す る IIIF コンソーシアム年次大会[5]が、6月5日から8日まで、2023年にイタリアのナポリで開催された。この IIIF 2023 Naples では、世界中から集まった研究者、開発者、ライブラリアン、教育者など様々な背景を持つ参加者たちが、新たなツールのデモンストレーションから、新しい技術の応用についての深い議論まで、IIIF の最前線で起こっていることを体験した。

1日目は、IIIF に新しく参入する参加者を対象としたショーケース、2日目は、IIIF と関連プロジェクトやツールのワークショップであった。3日目と最終日は本会議であり、多数の研究発表が行われた。1日目はフェデリコ二世・ナポリ大学の大変歴史のある煌びやかな講堂で、2日目は同大学の教室で、3日目と4日目は新しく建てられた同大学の大講堂で行われた。

1日目のショーケースは、後ほど IIIF の YouTube チャンネルで公開される予定であるらしい。IIIF の概要と歴史、そして、様々な IIIF コミュニティ内での活動についての紹介が主であった。

2日目のワークショップは ARK[6]、Madoc[7]、IIIF Commons[8]、DSpace 7[9]、Archipelago[10]、IIIF 3D[11]など6つのツールやプロジェクトが、3つずつパラレルで開催された。筆者は、午前は John Kunze 氏らによる ARK、午後は Ronald S. Haynes 氏らによる IIIF 3D のワークショップに参加した。ARK(Archival Resource Key)は、デジタルオブジェクトを一意に識別し、そのリソースにアクセスするための永続的な URI を提供する。これにより、リソースが時間とともに移動または変更された場合でも、そのリソースを一意に識別し続けることができる。Madoc は、IIIF を活用した、デジタルコレクションの公開・管理・注釈を行うプラットフォームである。IIIF Commons は、IIIF コミュニティが開発した一連の共通ライブラリとツールである。DSpace は、デジタルコレクションを公開・保存・管理するためのプラットフォームであり、IIIF にも対応している。今回のワークショップでは、IIIF 画像の扱いを含む DSpace の一連の操作方法が教授された。Archipelago は、Drupal などのオープンソースソフトウェアを基盤としており、IIIF を活用した、デジタルオブジェクトの保存・公開・検索、メタデータの管理、アクセスの制御などの機能を提供している。

第3日目と最終日の研究発表では、20分の通常発表、7分のライトニングトーク合わせて35以上の発表があった。筆者も、現在国立国語研究所で開発している IIIF を用いた「国立国語研究所デジタルアーカイブ NINDA」の設計と開発について発表を行った。大変注目すべき発表が多く、現在進行中の様々な IIIF ツールやプロジェクトについて知ることができるまたとない機会であった。それらを全て書くにはこの連載1回では到底紙面が足りないので、ここではその中でも4つの発表に絞って、それらの内容を概説する。

1. Introducing Canopy IIIF: A IIIF Sourced Site Generator for Digital Collections (Mat Jordan, Mark Baggett) - この発表では、デジタルコレクションのアクセシビリティと利便性を向上させるための新しいツール、Canopy IIIF が紹介された。Canopy IIIF は、JavaScript のライブラリの1つ React で作られたフレームワークの1つである Next.js で作られたツールで、IIIF マニフェストから静的ウェブサイトを生成することができ、デジタルコレクションの管理と公開をより簡単にする。サイトコンテンツは Markdown で記述することができる。図1は Canopy IIIF で作られたサンプルページである。

図1:Canopy IIIF で作られたウェブサイトのサンプル[12]

2. MemoRekall-IIIF, a Mirador extension supporting video annotation and a network of IIIF manifests (Clarisse Bardiot et al.) - この発表では、ビデオの注釈と IIIF マニフェストのネットワークをサポートする Mirador の拡張機能、MemoRekall-IIIF が紹介された。この拡張機能は、IIIF動画におけるMirador上での注釈を可能にする。図2はその注釈画面のサンプルである。これは、東京大学大学院人文社会系研究科附属次世代人文学開発センター人文情報学部門、一般財団法人人文情報学研究所、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、有限会社フェリックス・スタイルが共同で開発した「IIIF 対応ビューア Mirador Version 3の IIIF 動画アノテーション対応版」[13]を基にして開発された。

図2:MemoRekall-IIIF での IIIF 動画へのアノテーション画面[14]

3. Visualizing IIIF Collections (Christopher Pietsch, Florian Kräutli) - この発表では、大量の画像データを時間軸に沿ってビジュアル化する VIKUS Viewer[15]というツールを使用して、IIIF マニフェストを生成する新しい方法が紹介された。この方法により、IIIF 画像とメタデータを直接 VIKUS Viewer で表示し、作られた年代など様々な尺度で IIIF 画像を並べることが可能になった。

4. Integrating RTI and related techniques into IIIF (Richard Palmer, et al.) - この発表では、RTI(Reflectance Transformation Imaging: 反射率変換イメージング法) を IIIF に統合する新しい方法が紹介された。RTI は、光源の方向を変えながら物体からの反射を記録することで、物体の表面の形状を非常に細かく記録することができる技法である。特に碑文や芸術作品など細かな凹凸のある物体のディテールを微細に記録し、表示することができる。これにより、細かな筆跡や表面の加工など通常の写真では記録・表示できないところまで記録・表示できるようになった。この RTI の IIIF への統合により、RTI イメージを他の IIIF リソースと同様に扱い、様々な IIIF ツール・サービスを利用して RTI イメージを表示・注釈・比較することが可能になった。

このほか、毎日、私的な晩餐会、あるいは、大会公式のレセプションが行われた。特に、3日目の研究発表の後のレセプションでは、ナポリ湾が一望できる Villa Ferretti という歴史あるヴィラの庭で行われる豪華なものであった。ナポリという美しい街で行われた2023年の IIIF カンファレンスは、進行中の様々な IIIF プロジェクトを知ることができ、筆者自身のデジタルアーカイブ開発にポジティブな影響を与えた。何より、ケンブリッジ大学図書館やスタンフォード大学図書館、大英図書館などの IIIF を活用したオンラインコレクションやデジタルアーカイブで働いている研究者や技術者と知り合いになれたことはこの上ない機会であった。ロサンゼルスのゲティ美術館で開催される2024年の IIIF カンファレンスが大変楽しみである。

[1] “Home,” IIIF | International Image Interoperability Framework, accessed July 19, 2023, https://iiif.io/.
[2] “Discover Europe’s digital cultural heritage,” Europeana, accessed July 19, 2023, https://www.europeana.eu/.
[3] 「Japan Search」ジャパンサーチ、閲覧日2023年7月19日、https://jpsearch.go.jp/
[4] “Cultural Japan,” Cultural Japan, accessed July 19, 2023, https://cultural.jp/.
[5] “ IIIF Annual Conference and Showcase - Naples, Italy - June 5-8, 2023,” IIIF | International Image Interoperability Framework. accessed July 19, 2023, https://iiif.io/event/2023/naples/.
[6] “Home of the Archival Resource Key (ARK),” ARK Alliance, accessed July 19, 2023, https://arks.org/.
[7] “Madoc,” Digirati, accessed July 19, 2023, https://madoc.digirati.com/.
[8] “IIIF-Commons,” GitHub, accessed July 19, 2023, https://github.com/IIIF-Commons/.
[9] “IIIF and DSpace,” Confluence, accessed July 19, 2023, https://wiki.lyrasis.org/display/DSPACE/IIIF+and+DSpace.
[10] Lund, Allison. (2022, June 8), “Working with IIIF Manifests in Archipelago. Open Repositories 2022 (OR2022), Denver,“ Zenodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.6833627.
[11] “IIIF 3D Community Group,” IIIF | International Image Interoperability Framework, accessed July 29, 2023, https://iiif.io/community/groups/3d/.
[12] “Canopy IIIF,” Canopy-IIIF, accessed July 19, 2023, https://canopy-iiif.vercel.app/.
[13] 「IIIF 動画アノテーション」東大デジタル人文学、閲覧日2023年7月19日、https://dh.l.u-tokyo.ac.jp/activity/iiif/video-annotation
[14] “PROTOTYPE MEMOREKALL-IIIF,” MemoRecall, accessed July 19, 2023, https://memorekall.com/fr/prototype-memorekall-iiif/.
[15] “vikus-viewer,” GitHub, accessed July 19, 2023, https://github.com/cpietsch/vikus-viewer/.
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《連載》「仏教学のためのデジタルツール」第9回

仏教学は世界的に広く研究されており各地に研究拠点がありそれぞれに様々なデジタル研究プロジェクトを展開しています。本連載では、そのようななかでも、実際に研究や教育に役立てられるツールに焦点をあて、それをどのように役立てているか、若手を含む様々な立場の研究者に現場から報告していただきます。仏教学には縁が薄い読者の皆様におかれましても、デジタルツールの多様性やその有用性の在り方といった観点からご高覧いただけますと幸いです。

国文学研究資料館の国書データベース

村瀬友洋SAT 大藏經テキストデータベース研究会、大蔵経研究推進会議

今回紹介する国書データベース(https://kokusho.nijl.ac.jp/)は国文学研究資料館が構築・公開する、日本文学の古典籍データベースである。

2022年に創立50周年をむかえた国文学研究資料館は、創設以来収集してきた国内外の機関や個人および国文学研究資料館が所蔵する、日本文学や日本文学に関連する写本・版本等の原典資料を「日本古典籍総合目録データベース」「館蔵和古書目録データベース」「新日本古典籍総合データベース」として公開することで、様々な分野の利用に供してきた。そして2023年3月1日、これらのデータベースは機械可読型データの提供といった機能強化を目的として「国書データベース」へと統合された。

国書データベースが収録する主な資料は江戸時代以前の日本の書籍、いわゆる古典籍であるが、数こそ多くないものの漢籍や明治時代以降の書籍も含まれている。また、『国書総目録』(岩波書店)を継承した「日本古典籍総合目録データベース」を発展させたデータベースであるため、『国書総目録』記載の書誌・所在情報までもが包含されていることは特記しておきたい。

こうした収録資料のうち、資料のデジタル化画像が供されているものでは本データベース上で閲覧できることはもちろん、その多くにおいて画像データのダウンロードが可能である。さらに一部の資料では、全ページを一括してダウンロードするためのデータセットも用意されている。

なお、これらのデジタル化画像は肉眼で読むよりも細部を見て取れるほどの高解像度で供されているとともに、IIIF(International Image Interoperability Framework:トリプルアイエフ)にも準拠しているので、他ウェブサイトや他ビューワとの連携も容易である。

またデジタル化画像のある収録資料には、DOI(デジタルオブジェクト識別子)が付されており、紙面の引用や参照の際の利便性にも配慮がなされている。利活用に際しては、国文学研究資料館所蔵資料のデジタル化画像についてはクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC ライセンス)の CC BY-SA 4.0(表示-継承)であるが、そのほかの資料についてはそれぞれを所蔵する機関等の規約に従う必要があるので留意されたい。

さて、ここからは実際に国書データベースを利用する事例を通して、その検索の特徴を紹介していきたい。

国書データベースのトップページには、検索ワードを入力する入力フォームとともに、書誌検索、著作権索、著者検索、画像タグ検索、全文検索といった個別の詳細検索ページへのリンクが表示されている。

これらの検索は、書誌・著作・著者といった書誌情報を対象とした検索と、資料のデジタル化画像に付されたメタタグやデジタル翻刻された全文テキストといった記載内容を対象とした検索の二つに大別されるが、記載内容を検索するのでないのなら、書誌・著作・著者による検索はそれぞれを容易に切り替えることができるので、トップページからそのまま検索ワードを入力して検索ボタンを押すと良いだろう。その場合には著作検索、つまり作品単位での検索がなされる。

例えば「真言問答」と入力して検索した場合には著者の異なる『真言問答』、いわゆる同名異書が列挙されるほか、『真言問答集』や『真言問答随聞記』といった部分一致のレコード、さらに『雑問答』や『随聞記』というレコードも表示される。『雑問答』は別書名を『問答釈』あるいは『真言問答集』というため、『随聞記』は第五巻が『真言問答随聞記』であるためであろう。

これらのレコードから空海を著者とする『雑問答』をクリックすると、その詳細な著作情報へと画面が遷移する。そこには著者や巻冊数だけでなく、国書在所として『国書総目録』の記載内容も表示されており、『雑問答』に慶長古活字版、寛永古活字版、慶安二版といったエディションがあることやそれぞれの在所(ただし『国書総目録』編纂当時のもの)を知ることができる。

こうした情報の下部には、国文学研究資料館によって確認された個々の古典籍のレコード、つまり書誌情報が羅列される。これらのレコードは書名、所蔵機関、刊写の別、刊・写年等の情報から成り、それぞれのレコードをクリックすることで個々の古典籍についての詳細な書誌情報へと画面が遷移する。

このとき画像マークのあるレコードからは、書誌情報とともに画像ビューワが表示され、当該古典籍の紙面のデジタル化画像を本データベース上で閲覧することができる。デジタル化画像のダウンロードが許可されている場合には、画像ビューワの右上の「︙」から、表示しているページの画像データを1コマずつダウンロードすることができるようになっている。また全ページのデータセットが用意されている場合には、書誌情報の外部リンク欄に「データセットをダウンロードする」というリンクが張られているので、確認されたい。

このように同名の異書から同書の異版へと順々に絞り込んでいくウェブサイト設計が、検索条件に合致する収蔵資料レコードを一挙に羅列する一般的な OPAC とは異なる、本データベースの特徴である。つまり、検索の過程で古典籍の異名や異版といった周辺情報が分かるようになっているのである。

さきに書誌・著作・著者による検索は容易に切り替えることができると記したように、トップページでの検索結果は、検索フォームのすぐ下に表示されている「書誌から探す」「著作から探す」「著者から探す」の各タブをクリックするという簡単な操作で、それぞれの検索結果へと変更が可能である。

このとき著作検索と書誌検索では検索結果に相違があるが、これについては本サイトから公開されているマニュアル(https://kokusho.nijl.ac.jp/page/manualv1-1.pdf)に『国書総目録』由来の著作では著作と書誌レコードとが紐づいていない場合があり、また明治以降に成立した著作では書誌レコードしかない場合があるとのことで、モレなく検索する場合には著作検索と書誌検索の両方を行なう必要があると記されている。

実際に「真言問答」を検索した場合でも、著作から探した場合には9件の著作レコードが表示されるが、書誌から探した場合には4件の著作レコードが表示されるといった相違が見られる。しかしながら書誌検索での検索結果は、著作検索から個別の著作詳細を開いたとき下部に表示されるもの、ここでの例でいえば空海の『雑問答』をクリックしたときに表示される書誌情報と同等であるから、書誌検索では誰の何を検索したいと予め目論んでいる場合には一足飛びに目的の検索結果を得ることができるという速達性もある。

著者検索では、例えば「遍照金剛」と検索すると空海のほか、皇慶、真済、済暹などといった名前が検索結果に並ぶ。皇慶は別称を遍照金剛というため、また真済や済暹にあっては空海の著作『性霊集』において編者と追補者として国書データベース上の著作レコードで関連しているためであろう。

他にも別称や著作レコードを介する検索結果には一見、関係性を見いだせない人物が羅列されることもあるが、このようなページを経由して目的の人物へと絞り込んでいくウェブサイト設計は、煩雑さを感じる向きもあるであろうが、表示された人物らの関係性を知るためのよすがともなるであろう。なにより、国書データベースでは書名や著者名すべてによみがなやローマ字表記が付されているので、こうしたウェブサイト設計は初学者においてより有益な面が大きいように思われる。

つぎに、画像タグ検索では古典籍の挿絵などに付けられた絵タグのほか、見出しに付けられた見出しタグや文字に付けられた翻刻タグといったメタタグを対象として検索でき、全文検索では古典籍のくずし字を現代の文字にデジタル翻刻したテキストを対象として検索できる。

こうした記載内容を対象にした検索においては、タグ付けや翻刻が資料の1丁1丁ごとに為されなければならないことが想像に難くないが、そのためか現状、収録資料のすべてに対して、これらの内容検索ができるようにはなっていない。けれども、これまでも絶えずアップデートがなされてきた国文学研究資料館のデータベースであるだけに、十二分な数量の古典籍が検索対象となるまでにそう時間はかからないだろう。

以上、具体的な検索事例を用いながら国書データベースの特徴について紹介してきた。

直截的に検索結果を表示するのではなく、関連情報を提示しながら目的の情報へと遷移していくという本データベースの在り様は、同名異書や同書異版への道筋をひらく、まさに古典籍のポータルサイトと自称するに相応しいものといえよう。

様々なエディションの古典籍が読めるという国書データベースの本領について、その利便性は論を俟たないが、この点においても国文学研究資料館のウェブサイト(https://kokusho.nijl.ac.jp/page/about.html)には令和6年度末までに30万点の資料の原本画像の公開を目指すと、収録資料のさらなる拡充が目標に掲げられている。これまでも綿々と古典籍の収集を成してきた国文学研究資料館の営みであるだけに、今後の発展がますます期待されるものである。

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人文情報学イベント関連カレンダー

【2023年8月】

  • 2023-8-2 (Wed), 10 (Thu), 16 (Wed), 24 (Thu), 30 (Wed)
    TEI 研究会

    https://tei.dhii.jp/

    於・オンライン

【2023年9月】

【2023年10月】

Digital Humanities Events カレンダー共同編集人

佐藤 翔同志社大学免許資格課程センター
永崎研宣一般財団法人人文情報学研究所
亀田尭宙国立歴史民俗博物館研究部情報資料研究系
堤 智昭筑波大学人文社会系
菊池信彦国文学研究資料館

◆編集後記

7月は、デジタル・ヒューマニティーズの最大の国際学会、DH2023がオーストリアのグラーツで開催されました。世界各地から700名以上が対面で参加した大会となり、久しぶりに活況を取り戻したと言えるでしょう。詳細については次号にて特集として掲載させていただきます。

今月号で100回目となった岡田一祐氏の連載「Digital Japanese Studies 寸見」が終了となりました。これほどの長い間、貴重な論稿を毎月寄せてくださり、読者の方々に様々な有益な示唆を提供し続けてくださったことには深く感謝しております。今後の岡田氏の一層のご活躍を期待いたしております。(永崎研宣)



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