ISSN 2189-1621

 

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DHM 043 【前編】

2011-08-27創刊                       ISSN 2189-1621

人文情報学月報
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Digital Humanities Monthly

             2015-02-26発行 No.043 第43号【前編】 550部発行

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 ◇ 目次 ◇
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【前編】
◇《巻頭言》「文学部教員から見た人文情報学」
 (小林正人:東京大学文学部)

◇《連載》「西洋史DHの動向とレビュー
      ~DHアウォーズ2014ノミネート作にみる西洋史DH~」
 (菊池信彦:国立国会図書館関西館)

【後編】
◇人文情報学イベントカレンダー

◇イベントレポート(1)
情報処理学会「人文科学とコンピュータ研究会 第105回研究発表会」
 (小林雄一郎:日本学術振興会)

◇イベントレポート(2)
国際シンポジウム「歴史的典籍画像の30万点Web公開と国際共同研究」
 (永崎研宣:人文情報学研究所)

◇イベントレポート(3)
「Europeana Tech 2015」
 (永崎研宣:人文情報学研究所)

◇編集後記

◇奥付

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【人文情報学/Digital Humanitiesに関する様々な話題をお届けします。】
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◇《巻頭言》「文学部教員から見た人文情報学」
 (小林正人:東京大学文学部)

 大学生の時なけなしの貯金で買ったMS-DOSのパソコンでawkを学び始めて以来、自
分なりに工夫してコンピュータを人文学に使ってきたため、人文情報学という言葉
をはじめて聞いたときは、かすかな違和感を覚えた。十六、十七世紀にヨーロッパ
の大学を人文主義が席巻したとき、旧来のスコラ的人文学は長い闘争の後、消えて
いったという。人文情報学というときも、ただの人文学と人文情報学の二種類があ
って、前者はいずれ駆逐される遅れた人文学という言外の意味を感じるのは、文学
部教員の妄想だろうか。そう考えていると、文学部の先輩で、筆者よりはるかに先
端的な情報技術の活用をしてこられた苫米地等流先生の記事を本誌10号で読み、人
文情報学の専門家にもよく似た懸念があることを知った。人文学から見える人文情
報学について自分でももう少し考えてみたい。

 文学部というところは、価値観のゆらいでいる時代に人気が出ることもあれば、
社会が安定してくると人気がなくなったりする。さいきん志願者が減ったり、中教
審で人文社会科学系学部が名指しで廃止・転換するよう求められたりすることは、
裏を返せば文学部が必要ないような満ち足りた時代なのかも知れないが、それ以外
にも人文情報学のように、文学部で伝統的に用いられてきたのとは別の方法で人文
学にアプローチする新しい分野の台頭のあおりを受けたという面もあるのではない
か。そうでなくとも社会の問題に対して無力であることの多い文学部に三十年近く
身を置いてきた者として、人文情報学の隆盛を目にして、自分たちの最後のよりど
ころである文献研究まで情報学に持って行かれるのではないかという焦りを感じる
ことがある。

 “The future of employment”という論文が、高度に専門的なスキルも情報技術
によって置き換えられると予言して、労働者の心胆を寒からしめているらしい。そ
れと同じように、かつては文学部で講義を受けてはじめて理解できたことでも、精
度を問わないならウェブで検索すればただちに分かるし、文法や文字すら知らなく
ともコピー&ペーストで検索して外国語の単語や短文の意味を調べられるようにな
った。ギリシャ語の単語を辞書で引くには、動詞ごとにしばしば不規則ないくつも
の基本形を覚えねばならないが、今ではPerseus のword study toolで語形を入れれ
ば活用形を教えてくれる。インド哲学の難解な偈も、サンスクリットでそのまま検
索すれば訳や研究論文が見つかる。かつては入手しにくい古今の名著を揃えた図書
館を使えることが文学部生の特権であり、書庫で調べ物をするのが無上の喜びだっ
たが、今では名著はInternet Archiveで探したほうが早いことも多い。検索をはじ
めとする情報技術は人文学を格段に容易にし、有難い限りであるが、これから人文
学を学ぶ人にとっては、もはや主専攻として選ぶ動機が薄れていることは否定しが
たい事実であろう。苦しい演習に出なくともプラトンやパタンジャリが読めるのな
ら、どうして文学部に進学するだろうか。

 私が専門とするフィールド言語学では、文字記録も録音もなく、言語資料を自分
でゼロから集めねばならないような言語を扱うため、研究者がそれぞれ小規模のデ
ータを集めて単独で使っているケースが多く、さしもの検索エンジンもあまり役に
立たない。その言語を理解できる学生がほとんどいないため、アルバイトを多数雇
って入力させることもできず、みずから録音を書き起こしてメガバイト単位の書き
起こしテキストを作るのが精一杯である。TEIのような共通のフレームワークがある
ことは知っていても、それらを使う動機はまだ強くない。だから、言語学にとって
人文情報学が欠かせないものになるのは先のことだろう、と思っていたが、技術や
リソースの整備によって、以前はほぼ不可能だった研究ができるようになってきた。

 これはフィールド言語学ではなく、文献学での経験だが、サンスクリットで英語
の houses in a village「村の家々」のように場所格句が名詞を修飾することがで
きない、という問題を扱っていたとき、ほかの印欧語でどうなっているか調べる必
要があった。印欧語といってもそれぞれ全く異なった発展を遂げた言語群であり、
たとえば古アイルランド語などは活用が複雑な上、活用の代わりに後続の単語の先
頭音を変える現象があり、訳のない原文なら一行読むのに一日かかることも珍しく
ない。用例を集めるのは到底無理だと思っていたが、ダブリンから古アイルランド
語のタグ付きコーパスが公開されており、読めなくても正規表現検索ひとつで自分
の探している用例を見つけることができた。ギリシャ語聖書から前置詞句の前に名
詞らしい形が出る箇所を抜き出し、対応するゴート語やラテン語聖書と対比すると
いった作業も、聖書学者が整備した電子テキストと軽量言語で容易にできるため、
それらの文法に明るくなくても、各語派を比較することができるようになっている。
コーパス以外でも、分岐学的計算を行って言語の系統樹を作成するなど、新しい情
報技術を活かした言語学の研究を大学院生などが手がけるようになり、のんびり構
えていると置いてけぼりを食ってしまう。新しい手法を開発しいちはやく応用する
人文情報学は目が離せない。

 場所格句の名詞修飾の研究で、人文学についてかねて感じていたもう一つの不安
を思い起こさせられた。この現象は最近の研究書ではあまり論じられていないが、
百年前の文法書を見ると当たり前のように書かれているのである。現代の人文学者
は、情報技術の発達する前と比べて、信じられないほど便利な研究環境にあるわけ
だが、その便利さを存分に活用した研究ができているだろうか?百年前の文献学者
たちは、計算機がなく辞書類も乏しい時代に、世界大戦のような激動に耐えてテキ
スト読解に没入し、文法書や校訂本など、現在の学者たちが分担執筆しても越えら
れないような研究を数多く残した。食糧生産の技術が狩猟能力を衰退させたように、
便利になるほど能力が衰えることは、知らず知らず人文学にも起こっているのでは
ないか。いくら検索が便利になっても、問題意識や着眼力は原典を読む営為から培
われるわけで、原典読解よりもコーディングやソフトの操作法に気を取られがちな
現代の人文学者は、研究の勘が鈍ることのないよう気をつけねばならないと自戒し
ている。

 百年後の人文学では言語のデータはさらに積み重ねられ、人文学の研究はさらに
便利になっていると予想される反面、語学力や読解力など研究者の基礎体力は下が
っているかも知れない。そうであれば、今の私が百年前の大学者に敵わないのと同
様に、百年後の学者の追随を許さない研究をすることも、十分可能なはずである。
それにはテキストを読むことで着眼力を研ぎ澄まし、技術によって置き換えられな
いような独創的な発想ができることが必要だろう。文学部教員として本来の仕事で
ある原典研究と読解力養成を中心にしながら、文学部ならではの着眼力で人文情報
学に貢献できればと思う。

執筆者プロフィール
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小林正人(こばやし・まさと)
東京大学文学部・大学院人文社会系研究科言語学研究室准教授、Ph.D(言語学)。
京都大学文学部、ペンシルバニア大学文理大学院卒。日本言語学会会員。研究対象
はサンスクリットの歴史言語学、サンスクリット伝統文法、ドラヴィダ系少数民族
言語とムンダ系少数民族言語のフィールドワーク。

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《連載》「西洋史DHの動向とレビュー
      ~DHアウォーズ2014ノミネート作にみる西洋史DH~」
 (菊池信彦:国立国会図書館関西館)

●はじめに
筆者は前号までの2年間、「Digital Humanities/Digital Historyの動向」と題し
て、直近の1か月に発表されたDHのまとめ記事を書いてきた。だが、今号からはその
スタイルを変え、これまで以上に西洋史に特化した記事にしていきたいと思う。こ
の理由について初めに述べておきたい。

なぜスタイルを変えるのか。その理由はシンプルで、もはや一人では動向を追えな
くなってしまったからである。DHに関する情報収集を始めた5~6年前の当初は、英
米の情報ばかりが「網」にかかっていたが、ここ2~3年のうちに英語圏以外に急速
に広がり、ここ1年は月を追うごとにDHの話題が言語的・地理的に多様化していると
感じていた[1]。しかしその一方で、英語とスペイン語ぐらいしか満足に読めぬ自
分が、さも世界のDHの動向として記事を書き続けるのは「欺瞞」に近い。そのため、
一旦仕切り直しをする必要があると感じていた。

では、どのように変えるのか。もちろん最新の動向を取り上げるようにするつもり
だが、網羅的であることを追い求めるよりも、これまで以上に西洋史に特化した記
事に変えていきたいと思う。その理由は、日本の西洋史におけるDHの圧倒的な遅れ
にある。前段のように西洋史が研究対象にしているような国々ではDHが盛んになっ
てきている一方で、国内でその地域を研究している人々にとっては依然としてDHは
遠い存在であり続けている。そのため、このギャップを少しでも埋められるように、
これまで以上に西洋史に特化したプロジェクトの紹介やレビューを行うこととした
い。もうしばらくお付き合いいただければ幸いである。

●DH Awardsとは
さて、前置きが長くなってしまったが、今号ではDH Awards2014を紹介したい。
今年で3回目となるDH Awardsは、その前の年に公開や新規作成、アップデートある
いは完成した、DHに関するプロジェクトやリソース、サイトに関するものを、一般
から推薦を受け付け、いくつかのカテゴリに分けて投票しあうというものである(
ちなみに、表彰されても特に何がもらえるというものでもなく、あくまで名誉的な
ものに留まる)。前年のものとはいえ、DHに関する最近の優れた取組みを一覧でき
るものであり、DHの動向を知るうえで有益なものであると言えよう。以下、DH
Awards 2014の推薦作の中から西洋史に関連するものをいくつかピックアップして紹
介したい。その際、カテゴリを取り払って、西洋史らしく(?)時代別にまとめな
おしてみた。なお、言わずもがなのことだが、以下で紹介したからといってそれが
優れていると筆者が判断しているわけでもなく、ましてやそれに対して投票を呼び
掛けるつもりもないことをお断りしておきたい。

●古代史
Romans go home! Apps:西洋古典のラテン語テキストの学習用のアプリである。カ
エサルやアウグストゥス等によるラテン語原文と英語の対訳や、文法テスト等も収
録されている。
http://romansgohome.com/

AWOL: The Ancient World Online:古代史・古代研究に関するオープンアクセスな
リソースやプロジェクトなどを紹介するブログである。現在の形での運営は、ペン
シルヴァニア州立大学の図書館員Charles E. Jonesによるもので、2009年から開始
された。毎日のように様々なかつ有益な情報が紹介されており、筆者はRSSでこのブ
ログの情報を収集している。古代史の人にはフォローをお勧めしたい。
http://ancientworldonline.blogspot.co.uk/

●中世史
City Witness: Place and Perspective in Medieval Swansea:GISと3D技術を用い
て、戦災やその後の再開発で失われたスウォンジー(イギリス)の中世の街並みを
再現しようというプロジェクトである。
http://www.medievalswansea.ac.uk/en/

スペインからは中世の詩編・ロマンセのプロジェクトが2つ挙げられている。
ReMetCaは、12世紀から15、16世紀までのカスティーリャ語の詩編のテキスト化プロ
ジェクトで、もう一つは中世からルネサンス初期までのイベリア半島のロマンセ
(詩歌)に関するデータベースPhiloBiblonである。
http://www.remetca.uned.es/index.php?lang=es
http://ciham-digital.huma-num.fr/enigma/

その他、中世写本の難読箇所を解読するツールEnigmaもノミネートされている。こ
れについては、本紙第36号【前編】(2014-07-26発行)所収の赤江雄一「Enigma 中
世写本のラテン語の難読箇所を解決する」を参照されたい。
http://ciham-digital.huma-num.fr/enigma/
http://www.dhii.jp/DHM/dhm36-1

●近世史
The Virtual Paul's Cross Project:これは、1622年11月5日、ロンドンのPaul's
CrossでJohn Donneが説教を行っている状況を、アーキテクチャモデルと音響用のソ
フトウェアを使って再現するというものである。ウェブサイトでは聴衆の人数やそ
の説教空間における立ち位置に応じて、説教の聞こえ方が分かるように複数の
YouTube動画が公開されている。
http://vpcp.chass.ncsu.edu/

The Wandering Jew's Chronicle archive:これは、ReMetCaのような、1630年から
1830年までのイギリスの歴史的なバラッドThe Wandering Jew's Chronicleの画像と
テキストのアーカイブである。
http://wjc.bodleian.ox.ac.uk/

The Medici Archive Project:1990年代初頭から始まるメディチ家コレクションの
デジタルアーカイブプロジェクト。収録範囲は1573年から1743年までの6,429巻、
400万点の書簡資料類で、アカウントを作成すればデジタル画像の閲覧のほかテキス
ト化等も可能となっている。
http://www.medici.org/

●現代史
Martin Grandjean: Intellectual Cooperation: multi-level network analysis
of an international organization:1919から1927年までの、国際連盟下の国際知
的協力委員会(ICIC:International Committee on Intellectual Cooperation)の
1700人の人的ネットワークを可視化した研究紹介である。ICICはユネスコの前身で
ある。この研究内容は、2014年9月のHistorical Networks Research Ghentで報告さ
れた。
http://www.martingrandjean.ch/intellectual-cooperation-multi-level-netwo...

上のICICの件もそうだが、第一次世界大戦関連として下記のものが挙げられている。
@realtimeww1: World War One goes Twitter:これは、ルクセンブルク大学の大学
院生によるプロジェクトで、100年前の第一次世界大戦のその日その時の出来事をツ
イートでつぶやくというもの。
http://h-europe.uni.lu/?page_id=621

1914-1918-online: International Encyclopedia of the First World War
これは2011年に始まり2014年10月に完成した、第一次世界大戦の百科事典作成プロ
ジェクトである。世界22か国、約90名の歴史家の協力で作成された。
http://www.1914-1918-online.net/

Cymru 1914 The Welsh Experience of the First World War:ウェールズ国立図書
館主導による、ウェールズ内の図書館や文書館などの文化機関所蔵の第一次世界大
戦史料の大規模なデジタル化プロジェクトである。現在のところ、約1000タイトル
の資料についてデジタル画像等を見ることができる。
http://cymru1914.org/en/home

そのほかに、アメリカ、ワシントンDCのナショナルモールの歴史を地図などで表現
した“Histories of the National Mall”や20世紀アイルランドの音楽家アロイス・
フレイシュマンの日記のオンラインアーカイブ“The Fleischmann Diaries Online
Archive”がある。
http://mallhistory.org/
http://fleischmanndiaries.ucc.ie/

●歴史ツール、歴史学教育
最後に、以上の時代別に当てはまらないものとして、Wikipediaのデータを利用した
タイムライン作成用のツールHistropediaと、アメリカの大学生レベルのオープンな
歴史教科書The American Yawpの2つを取り上げておきたい。
http://www.histropedia.com/
http://www.americanyawp.com/

●まとめにかえて
さて、上の内容を眺めてみると、近代史を中心としたプロジェクトが見当たらない
こと(The Wandering Jew's Chronicle archiveは19世紀にかかっているものだが)
にまず気がつく。筆者が情報収集している限りのあくまで感覚レベルだが、近代史
に関するDHのプロジェクトは他の時代に比して少ない傾向があるので、特に驚くに
はあたらない。とはいえ、やはり残念ではある。一方で、地理的・言語的には英語
圏のものが多く、スペイン等その他地域のものが少し加わる程度になっている。冒
頭で「地理的・言語的に多様化している」と述べたが、このような認め合って高め
あうような企画そのものも、言語的・地理的に広まってほしいと思う。

また、Awardsのウェブサイトを見てもなぜノミネートをされているのかの説明がな
いため、どのあたりが新しい(2014年に開発/改善等)のかが一読して不明である。
説明書きがないために、それぞれのサイトを見に行く必要があるが、ノミネートが
多いので一つ一つ確認するにも時間がかかる。そして各サイトも何が新規性のある
ところなのかを、この企画用に説明していないので、結局何が新しいのかがよく分
からない。この辺りは運営側にもう少し改善を期待したいところである。

[1]筆者の単なる感想だけでなく、DHの地理的・言語的な多様化については様々な
議論がある。例えば以下。
Isabel Galina Russell
Geographical and linguistic diversity in the Digital Humanities
Lit Linguist Computing 2014 29: 307-316.

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 続きは【後編】をご覧ください。

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 配信の解除・送信先の変更は、
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                        からどうぞ。

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います。
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人文情報学月報 [DHM043]【前編】 2015年02月26日(月刊)
【発行者】"人文情報学月報"編集室
【編集者】人文情報学研究所&ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)
【 ISSN 】2189-1621
【E-mail】DigitalHumanitiesMonthly[&]googlegroups.com
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