ISSN 2189-1621

 

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DHM 035 【後編】

2011-08-27創刊

人文情報学月報
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Digital Humanities Monthly

             2014-06-27発行 No.035 第35号【後編】 484部発行

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 ◇ 目次 ◇
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【前編】
◇《巻頭言》古典のコーパス化とその可能性
 (小木曽智信:人間文化研究機構国立国語研究所言語資源研究系)

◇《連載》「Digital Humanities/Digital Historyの動向
      ~2014年5月中旬から6月中旬まで~」
 (菊池信彦:国立国会図書館関西館)

◇《特集》「デジタル学術資料の現況から」第4回
 デジタルなシェイクスピアリアンの1日
 (北村紗衣:武蔵大学人文学部)

【後編】
◇人文情報学イベントカレンダー

◇イベントレポート(1)
「デジタル人文学探索録-Digital Scholarship Retreat 2014編」
 (横山説子:ミシガン大学情報大学院修士課程)

◇イベントレポート(2)
CIAS 京都大学地域研究統合情報センター
 「2013年度共同研究ワークショップおよび共同利用・共同研究報告会」
 (谷川竜一:京都大学地域研究統合情報センター)

◇編集後記

◇奥付

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【人文情報学/Digital Humanitiesに関する様々な話題をお届けします。】
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◇人文情報学イベントカレンダー(■:新規掲載イベント)

【2014年6月】
■2014-06-28(Sat):
情報メディア学会 第13回研究大会「デジタル化を拒む素材とアウトリーチ」
(於・東京都/科学技術振興機構 東京本部 サイエンスプラザ)
http://www.jsims.jp/kenkyu-taikai/yokoku/13.html

【2014年7月】
□2014-07-08(Tue)~2014-07-12(Sat):
Digital Humanities 2014
(於・スイス/Lausanne)
http://dh2014.org/

□2014-07-10(Thu)~2014-07-11(Fri):
INTERNATIONAL CONFERENCE on SCIENCE & LITERATURE
(於・ギリシャ/Athens)
http://www.coscilit.org/

□2014-07-14(Mon)~2014-07-18(Fri):
Digital Humanities at Oxford Summer School 2014
(於・英国/University of Oxford)
http://digital.humanities.ox.ac.uk/dhoxss/2014/

□2014-07-22(Tue)~2014-08-01(Fri):
Summer School "Digital Humanities & Language Resources" @Leibzig
(於・ドイツ/Leipzig)
http://www.culingtec.uni-leipzig.de/ESU_C_T/node/97

【2014年9月】
■2014-09-06(Sat)~2014-09-07(Sun):
Code4Lib JAPANカンファレンス2014
(於・福井県/鯖江市図書館)
http://www.code4lib.jp/2014/06/1166/

■2014-09-06(Sat)~2014-09-07(Sun):
露光研究発表会 2014
(於・沖縄県/沖縄県立芸術大学)
http://rokouken2014.wordpress.com/

■2014-09-19(Fri)~2014-09-21(Sun):
JADH2014
(於・茨城県/筑波大学)
http://conf2014.jadh.org/

Digital Humanities Events カレンダー共同編集人
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小林雄一郎(日本学術振興会特別研究員PD)
瀬戸寿一(東京大学空間情報科学研究センター)
佐藤 翔(同志社大学教育文化学科 助教)
永崎研宣(一般財団法人人文情報学研究所)

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◇イベントレポート(1)
「デジタル人文学探索録-Digital Scholarship Retreat 2014編」
http://dsr2014.info/
 (横山説子:ミシガン大学情報大学院修士課程)

 はじめてデジタル人文学という名称を耳にした時の困惑を今でも鮮明に思い出す。
博士課程の研究課題を相談するために訪ねた研究室で、指導教授が口にしたこの未
知の領域を私は今ミシガン大学で学んでいる。

 デジタル人文学に出会った時、私は同志社大学大学院文学研究科でアメリカ詩人
Wallace Stevens(1879-1955)の研究をしていた。言語に付随する既存の連想を払
拭し斬新な言語描写を試みる彼の作品は、その実験的要素が醍醐味である。一方で、
このような手法が作品の難解さを強調する事もまた事実だ。それでもStevensがアメ
リカの代表的モダン詩人の一人とされる所以はどこにあるのかが知りたかった。も
ちろん、英米文学者Richard PoirierがStevensを含めるアメリカ作家独自の言語観
を研究で明らかにした事が、今日の詩人の知名度に貢献していると言っても過言で
はないだろう。しかし、この見解が20世紀後半のアメリカのリベラル左派知識層に
受け入れられた事は偶然ではなく、時代が彼の論を求めていたとも言える(モダン
文学の領域はロンドンとパリに限定されるものではなかったし、冷戦に関連して国
産文学の需要が高まったとも考えられる)。私の関心は、このような時代ごとの「
文学」の社会的形成過程にある。作品の編集過程を再現することで、作品出版当時
の詩人と編集者の思惑はいかに交渉されたのか、市場と批評家の反応はいかなるも
のであったのかを分析している。さらに、このような文学作品の変遷を効果的に提
示するには、デジタル媒体の活用が効果的だと考えるに至った。

 さて、話をミシガン大学でのデジタル人文学に移したい。昨夏こちらに来た際は、
研究センターのある他大学と比べ、ミシガン大学では誰が・何を・どこでやってい
るのかが不明瞭だった。情報収集を進めるうちに、数年前は情報大学院の若手研究
者を中心にデジタル人文学の研究が盛んであったが、中心人物の移動と同時に研究
グループが解散したこと、「デジタル人文学」の名称・定義に関して根強い反発が
あるということが明らかになった。デジタル人文学を学びたい一心で集まった私を
含む大学院生3人は、そのようなミシガン大学の現状を踏まえた上で、Digital
Humanities Collective(DHC)という組織を立ち上げることにした。設立理念は「
学生・教授群・職員にとってデジタル人文学を実践できる共同研究の空間を提供す
ること」である( http://dhcollective.org/about/ )。これまでに人文研究所の
企画する講演会シリーズに合わせて、デジタル人文学の最前線で活躍する研究者(
Lisa Spiro, Ted Striphas, Martha Nell Smithなど)と学生との懇親会を設けた。
また、論文を持ち寄って意見交換をする昼食会、ミシガン大学でのDay of DH、
Kevin HawkinsによるText Encoding Initiative(TEI)のワークショップを企画し
た。昨年度最も力を入れたのは、大学規模の研究会Digital Scholarship Retreat(
http://dsr2014.info )の企画・開催だ。その概要をお伝えしたい。

 Digital Scholarship Retreat(DSR)は、キャンパス内に点在しているデジタル
人文学研究の成果・課題を認識するために企画された。同時に、はじめてデジタル
人文学に触れる参加者にとっては、その研究方法を一部体験できる事を目的とした。
DHCのメンバーとアドバイザーのPaul Conwayが体験したTHATCampと“Sorting the
Digital Humanities Out”(スウェーデン・ウメオ大学研究センターHUMlabでのワ
ークショップ)を参考に、ミシガン大学にとって最適な議論の空間を3ヶ月で準備し
た。DSRは実験的な試みであったにも関わらず、当日は図書館・大学出版・美術館・
人文研究所の職員、英文学・哲学・情報学・コンピューターサイエンスの学生と教
授など、30名強の参加があった。人文学研究者への重点的広報活動にも関わらず彼
らの参加が少なかったことは、来年度以降克服したい課題である。また、ミシガン
大学の各学部・研究科や、他大学でもDSRのモデルが活用できるように、この夏はパ
ンフレットの出版準備を進めている。

 DSRは3部のワークショップで構成されており、2014年3月のプログラムは以下のと
おり。

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PART ONE:
 10:00-10:15: Coffee and Badges
 10:15-10:45: Welcome (DHC) & Opening Remarks (Professor Paul Conway)
 10:45-11:00: Break
 11:00-12:00: Morning Breakout Session / Participants divide into groups
       according to the badge color:
      ●What does digital scholarship mean for UM? What does UM
       mean for digital scholarship?

PART TWO:
 12:00-12:45: Lunch / Lunch Time Activity
      ●Let's spend $40,000,000 on digital scholarship in the
       humanities @ Michigan!
 12:45- 1:15: Lightning Talks / Report

PART THREE:
 1:15-2:30: Afternoon Breakout Session / Participants divide into groups
       based on topic:
      ●Digital Scholarship and Pedagogy
      ●Digital Scholarship and Support / Project Management
      ●Digital Scholarship and Publishing / Scholarly Communication
      ●Digital Scholarship and Physical Space
 2:30-2:45: Break
 2:45-3:45: Group Presentations / Report
 3:45-4:00: Closing Remarks & Wrap-up

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 朝の部は「ミシガン大学にとってのデジタル人文学」と題した討論会で、定義に
関する議論がなされた。その内容を、デジタル人文学の議論の場であるTwitter(も
しくはPadlet)に載せるまでが課題である。つづく昼食時間は、「デジタル人文学
と4千万ドルの使い道」が議題だ。デジタル人文学をミシガン大学で盛り上げるため
の5年間の資金計画を立て、円グラフを作成し、それを2分間のライトニングトーク
で発表する事が課題だ。これは朝の抽象的な議論が、いかに実現可能かを実感する
ことを目的としている。この活動のもう一つの意義は、デジタル人文学に特有の、
共同研究に関わる人材・予算・設備投資の議論を紹介・共有することだ。午後の部
はさらに具体性を増す。参加者は個々の関心に合わせて、デジタル人文学の4つの
観点(教授論/サポート・プロジェクトマネジメント/学術情報流通/設備投資)
から一つのグループを選ぶ。分野別グループ内でこれまでの成果と課題を議論し、
Google Driveを使って共同でパワーポイントのスライドを作成する事が課題だ。こ
れを全体に発表することをもってDSRのまとめとなる。その後のアンケートから、午
後の部も(興味別ではなく)他分野の参加者同士が意見交換をできるよう、グルー
プメンバーを指定した方が効果的という指摘があった。また、このような企画は「
宿題」を提供することで継続した意見交換を奨励できるのでは、という意見もあっ
た。これらはぜひ来年度以降に反映させたい。

 ミシガン大学でのデジタル人文学事情は刻々と変化している。昨学期から大学院
レベルでのセミナーが開講され、来年度からは学部レベルでのデジタル・スタディ
ーズの副先攻が可能となる。キングス・カレッジ・ロンドンで半年の研究休暇を終
えたPaul Conwayと人文研究所長のSidonie Smithの尽力で、ミシガン大学のデジタ
ル人文学環境は大きく変わりそうだ。DHCの2年目は大学図書館とのさらなるコラボ
レーションを計画している。個々の研究もさることながら、デジタル人文学の面白
みはそれを形作る過程にあると実感している。

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◇イベントレポート(2)
CIAS 京都大学地域研究統合情報センター
 「2013年度共同研究ワークショップおよび共同利用・共同研究報告会」
http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/event/?p=2149
 (谷川竜一:京都大学地域研究統合情報センター)

 京都大学地域研究統合情報センター(地域研)は、毎年4月の最後の週末に、2日
間のイベントを開催している。初日は、地域研の教員を中心とした共同研究ワーク
ショップであり、翌日は、地域研が進めている共同利用・共同研究の各研究ユニッ
トの成果報告会である。以下は、2014年4月26日(土)、27日(日)の2日間にわた
った上記イベントの概要であるが、特に前者のワークショップは、企画者の一人で
ある筆者の思いもよらない方向へと変化を遂げ、大変新鮮かつ充実したものとなっ
た。その変貌ぶりにも触れながら、以下報告を述べたい。

 初日のワークショップのテーマは「世界のジャスティス」。善・悪や正・不正と
いった二項対立の議論を想起させる“正義”という言葉ではなく、あえて“ジャス
ティス”という言葉を選んだ。「私たちの持っている正義という価値観の枠組みを
一端取り外し、正義に対する本質的な議論を深めよう。そしてそれぞれが背負う正
義の衝突ではなく、その共存や調和を導く叡智のメカニズムについての議論を目指
そう」というのが、当初の趣旨であった。進展するグローバル化の中で、人々が自
由に移動して異なる意見の人に出会うことは、一般的には好意的に受け止められて
いる。しかし幸福なはずの出会いの中で、お互いの正義-言い換えれば規範や美学
、あるいは個人の哲学-が日々先鋭化し、衝突するニュースを聞かない日はない。
地域研究者たちは、それぞれの正義に敬意を払いながら、衝突を最小限に抑えてそ
の共存を導いていくための叡智を、地域社会から切り出してくるプロフェッショナ
ルである。そういった叡智のメカニズムやそれが見出される場所を、希望のジャス
ティスが生み出される場として、報告してみてはどうだろうか。そんな問いかけか
ら本ワークショップは構想された。

 ワークショップにおける発表は次の5つである。アフリカ・カメルーンの都市と農
村を結んで繰り広げられる首長制社会の断面を論じた平野発表、スマトラの震災後
の社会から思いがけず投げかけられる笑顔の意味を考察する西発表、北タイを生き
る人々の変容する食文化から地域社会やその内部の各共同体の柔軟性に迫る王発表、
タイの水害の際に象徴的に露呈してしまった人々の対立と、その原因となった「そ
れぞれの科学」を論じた星川発表、そしてウズベキスタンの女性たちが身に付ける
ベールを、近代化・身体・自由などの視点から歴史的に読み解いた帯谷発表。コメ
ンテーターは、昨年『人生で大切なことは倫理の教科書に書いてあった』(宝島社
)を上梓された河合塾の公民科講師・河合英次氏、南米をフィールドとして都市社
会学を研究されている上智大学の幡谷則子氏、そして熱帯の公衆衛生を長く研究さ
れてきた長崎大学の門司和彦氏の3名にお願いした。

 当日は、世界の様々な地域のびっくりするような面白い事例が出された上に、コ
メンテーターの方々の多彩な顔ぶれ、そして司会であった地域研の山本氏の絶妙な
議論の方向付けや切り返しもあり、議論は大いに白熱した。様々な衝突を防いだり、
調整したりする、地域の叡智としてジャスティスが作用する状況の分析にとどまら
ずに、普遍的な正義の存在の有無など、正義自体の議論の中へ、全員が磁力にひき
つけられるように入っていった。このような、先が読めない展開こそまさしくワー
クショップであろう。議論の中心が当初カタカナで表記したジャスティスではなく、
正義となっていった理由は、共存や調和のメカニズムを分析者の視点で検討するこ
と以上に、自らの立ち位置も含めた意味での正義の議論が、やはり魅力的であり、
一つの本質的議論だからだろう。その点で、本ワークショップは、地域研のワーク
ショップの醍醐味を存分に引き出したイベントであったように思う。そして筆者ら
企画者による説明不足を超えて、テーマの深淵にまで届くような言葉をなんとかし
て紡ごうとして下さった、発表者やコメンテーターの方々のおかげで成立した、充
実したイベントであった。

 続いて2日目は、地域研が進めている共同利用・共同研究の成果報告会だったが、
こちらも機械的に成果を報告するイベントであったわけではない。地域研では、中
長期的に取り組む地域研究の重要課題を「相関地域研究プロジェクト」、「地域情
報学プロジェクト」、「地域研究方法論プロジェクト」、「災害対応の地域研究プ
ロジェクト」として、複層型の共同研究を行ってきた。こうしたプロジェクトの具
体像が、全体で30を越す発表によって見えてくる、そんな報告会となることを地域
研のメンバー一同は願っていた。そして実際、各研究ユニットとメンバー一同うま
く関係を作りながら、発表を共同で練り上げてきた結果、当日も相互の研究を架橋
しうるような視点などを皆で探す有意義な場となった。発表テーマの概略を述べれ
ば以下のようになるだろう。

 国家社会関係を比較政治的に読み解いていく研究、森林資源やそのガバナンスに
関する課題を議論する研究、世界各地の宗教実践を空間的に表現し、視覚的なデー
タベースとすることで分析していく研究、地域研究の情報学的ツールとしての時間
・空間・語彙等のデータベース基盤システムに関する研究、非文字資料のストック
手法とその解析に関する研究、地域研が所蔵する資料やそのデータベースを用いな
がらそれを外部資料と接続させていく研究、災害や紛争とそこからの復興過程の分
析を、マッピングシステムなどを駆使することでアプローチする研究、地域社会の
記録や記憶がアーカイブされたり展示・活用されたりすることで、地域社会にもた
らされる効果を分析する研究、そして地域研究の方法論がもっている課題を整理し、
新しい可能性を探っていこうとする研究などである。

 全体的な傾向として、地域研究と関連したデータベース開発やアーカイブ構築と
いったトピックが本報告会には多いことがあげられる。これは、情報学を駆使しな
がら地域研究に邁進する地域研をベースにした共同利用・共同研究の特徴の一つで
あると思われ、各報告のそうした点に高い独創性を感じ、評価して下さる参加者の
声が多数聞かれた。そうした延長上で、例えば宗教実践や災害情報などを、Google
Earthなどを用いて可視化していく手法などにも期待の声が寄せられた。もちろん、
こうした評価だけではなく、緊張感をもって研究を進めるためにも、研究が拠って
立つ位置や手法、視角となるキーワードに対して、外部評価委員の方々からの適切
なコメントや批判、整理もなされた。会場の一般参加者からも建設的なコメントや
意見が多く聞かれ、報告会の閉幕までほとんど誰も会場を去らず、活気あるイベン
トとなったことも記しておきたい。

 地域研究と情報学を掛け算しながら、新たなテーマを設定し、同時にそこに全国
の研究者が加わるプラットフォームを構築していく。この研究布置を一気に見渡し
ながら、その議論に参加することができるのは、地域研の4月のイベントだけである。
今年見逃した方は、来年ぜひご来場願いたい。

Copyright(C)TANIGAWA, Ryuichi 2014- All Rights Reserved.
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 配信の解除・送信先の変更は、
    http://www.mag2.com/m/0001316391.html
                        からどうぞ。

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◆編集後記(編集室:ふじたまさえ)
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 今回は、古典、シェイクスピアから海外での動向まで幅広い話題をお届けしまし
た。2014年も折り返しの地点にさしかかっていますが、後半のイベント情報もいく
つかお届けできたように思います。ご寄稿いただいた皆さま、ありがとうございま
した。

 個人的な興味でしかありませんが、図書館におけるLOD活用の話題は、日本だけで
なく世界的な動きも気になります。身近なところでいうと、9月に鯖江市で開催予定
のCode4Lib JAPANカンファレンス2014に集まる演題がとても楽しみです。

 巻頭言や特集を読んでいると、普段はなかなかコーパスを使うことがない、シェ
イクスピアリアンには程遠い私でも、ウェブ上にそんな広がりがあるものなら、そ
の世界に触れてみようという気持ちになりました。また、今回のイベントレポート
はどちらも個性の強い記事でした。単なる事実の羅列にとどまらず、イベントの背
景や意図がよく伝わってきました。

 次号もお楽しみに。

◆人文情報学月報編集室では、国内外を問わず各分野からの情報提供をお待ちして
います。
情報提供は人文情報学編集グループまで...
       DigitalHumanitiesMonthly[&]googlegroups.com
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人文情報学月報 [DHM035]【後編】 2014年06月27日(月刊)
【発行者】"人文情報学月報"編集室
【編集者】人文情報学研究所&ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)
【E-mail】DigitalHumanitiesMonthly[&]googlegroups.com
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