ISSN 2189-1621

 

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DHM 072 【後編】

2011-08-27創刊                       ISSN 2189-1621

人文情報学月報
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Digital Humanities Monthly

             2017-07-31発行 No.072 第72号【後編】 675部発行

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 ◇ 目次 ◇
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【前編】

◇《巻頭言》「デジタルアーカイブの利活用に向けて」
 (中村覚:東京大学情報基盤センター学術情報研究部門)

◇《連載》「Digital Japanese Studies寸見」第28回「郷土資料と驚異の部屋」
 (岡田一祐:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

【後編】

◇人文情報学イベントカレンダー

◇イベントレポート「ナショナルな地域文化資源:地方紙の活用に向けて-地方紙原紙のデジタル化状況調査から見えてきたこと」
 (鈴木親彦:情報・システム研究機構データサイエンス推進基盤施設人文学オープンデータ共同利用センター 特任研究員)

◇編集後記

◇奥付

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【人文情報学/Digital Humanitiesに関する様々な話題をお届けします。】
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◇人文情報学イベントカレンダー(■:新規掲載イベント)

【2017年8月】

■2017-08-04(Fri):
情報処理学会 人文科学とコンピュータ研究会 第115回 発表会
(於・東京都/東京大学 史料編纂所)
http://www.jinmoncom.jp/index.php?CH115

■2017-08-08(Tue)~2017-08-11(Fri):
Digital Humanities 2017
(於・カナダ/McGill University)
https://dh2017.adho.org/

【2017年9月】
■2017-09-02(Sat)~2017-09-03(Sun):
Code4Lib JAPANカンファレンス2017
(於・熊本県/熊本学園大学)
http://wiki.code4lib.jp/wiki/C4ljp2017

■2017-09-09(Sat)~2017-09-10(Sun):
アーカイブサミット2017 in 京都「社会のアーカイブ化」
(於・京都府/京都府立京都学・歴彩館)
http://archivesj.net/summit2017top/

■2017-09-10(Sun)~2017-09-12(Tue):
文化とコンピューティング国際会議2017
(於・京都府/同志社大学 室町キャンパス)
https://www.cis.doshisha.ac.jp/culture2017/

■2017-09-11(Mon)~2017-09-12(Tue):
JADH2017
(於・京都府/同志社大学)
http://www.jadh.org/jadh2017_CFP

■2017-09-11(Mon)~2017-09-15(Fri):
UBICOMP 2017
(於・米国/Maui, Hawaii)
http://ubicomp.org/ubicomp2017/

■2017-09-13(Wed)~2017-09-16(Sat):
The 28th EAJRS Conference 第28回日本資料専門家欧州協会年次大会
(於・ノルウェー/オスロ大学)
https://www.eajrs.net/

■2017-09-25(Mon)~2017-09-29(Fri):
iPRES2017 14th International Conference on Digital Preservation 2017
(於・京都/京都大学 吉田キャンパス 国際科学イノベーション棟)
https://ipres2017.jp/japanese/

【2017年11月】

□2017-11-11(Sat)~2017-11-15(Thu):
TEI2017@Victoria
(於・加国/University of Victoria)
http://hcmc.uvic.ca/tei2017/

□2017-11-17(Fri)~2017-11-19(Sun):
メネストレル 若手研究セミナー≪中世学のネットワークとツール≫および国際シンポジウム≪中世における文化交流-対話から文化の生成へ-≫
(於・奈良県/大和文華館)
http://www.menestrel.fr/spip.php?rubrique1877&lang=fr&art=ja#4864

□2017-11-29(Wed)~2017-12-01(Fri):
台湾TADH国際会議
(於・台湾/National Chengchi University)
http://www.aiecon.org/conference/DADH2017/

Digital Humanities Events カレンダー共同編集人
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小林雄一郎(日本大学生産工学部)
瀬戸寿一(東京大学空間情報科学研究センター)
佐藤 翔(同志社大学免許資格課程センター 助教)
永崎研宣(一般財団法人人文情報学研究所)

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◇イベントレポート「ナショナルな地域文化資源:地方紙の活用に向けて-地方紙原紙のデジタル化状況調査から見えてきたこと」
 (鈴木親彦:情報・システム研究機構データサイエンス推進基盤施設人文学オープンデータ共同利用センター 特任研究員)

 2017年7月13日、日本新聞協会会議室(日本プレスセンター)において問題提起フォーラム「ナショナルな地域文化資源:地方紙の活用に向けて - 地方紙原紙のデジタル化状況調査から見えてきたこと」が開催された。東京大学大学院情報学環DNP学術コンテンツ研究寄附講座による「地方紙デジタル化・活用プロジェクト(以下では単にプロジェクトとする)」の新聞関係者へのお披露目と意見交換と軸としたフォーラムである。同講座が主催し、日本新聞協会が協力という体制であった。

 フォーラムはプロジェクトに関する説明と新聞デジタル化の現状が報告された前半と、実際にデジタル化を進めている新聞社も交えたパネルディスカッションによる後半に分かれて進行した。前半1時間に対して後半が2時間弱という配分からも、プロジェクトを進めるための議論の場として設定されていたことが分かる。

 冒頭、柳与志夫(東京大学特任教授・本プロジェクト座長)が行なった説明によると、プロジェクトの趣旨は「デジタルデータになっていない古い地方新聞について、学術利用はもとより、我が国の貴重な文化資源の保存と活用を図る観点から、課題の整理と活用方法を探る」ということになる。彼が強調するところでは、プロジェクトは単に東大が研究目的で進めるものではなく、マイクロ学術コンテンツとしても典型的かつ重要な資源である新聞をデジタル知識基盤上で活用するという、All Japanで取り組むべき活動の入り口となるものだという。

 次いで東由美子(東京大学特任講師)から、準備段階として行われた新聞デジタル化現状調査について報告がなされた。大まかに言えば、オンライン閲覧環境で公開されているができる記事は大半が1990年代以降のものにとどまっていること、紙面全体の画像はデジタル保存され始めてはいるがテキスト化や写真データの抽出は進んでいないこと、公開非公開の線引きの難しさなどで議論が必要なことなどが示された。また、調査の結果として浮かび上がった以下5点の課題が紹介された。

 1.保存(および消失記事の補充)
 2.紙面・記事・写真のイメージデータ化
 3.記事のテキスト化
 4.デジタルデータの公開・維持体制(著作権・肖像権・人権等への配慮)
 5.採算性

 東によると、最も大きな課題だと分かったのは4の公開・維持体制、特に法律や人権と関わる部分であり、一方でプロジェクトとして当初の想定で欠けていた課題が5の採算性だったという。

 時実象一(東京大学高等客員研究員)からは、欧米で進んでいる新聞記事アーカイブについての紹介が行われた。公的なものでは欧州員会のCIP2007-2013プログラムで行われたEuropeana Newspaper[1]、アメリカのNational Endownment for the Humanitiesが助成を行なったNational Newspaper Program[2]、オーストラリアのAustralian Newspaper Online - Trove[3]が紹介された。
また民間新聞記事データベースとしては、Newspaper Archive[4]、GenealogyBank[5]、Newspapers.com[6]、ProQuest Historical Newspaper[7]、Readex[8]、Google News Archive Search[9]、The British Newspaper Archive[10]、Gale Cengage Learning[11]が紹介されている。前述の採算性という点で注目すべきは、アメリカには自らのルーツを探る気風があり、過去の人名検索にニーズがあるため、研究や教育以外にも活用されているという点であろう。

 3名による報告の後に休憩を挟み、吉見俊哉(東京大学教授)を司会としたパネルディスカッションが行われた。植村八潮(専修大学教授)、萩原久貴(山梨日日新聞社コンテンツ事業局部長)、前川英樹(信濃毎日新聞社メディア局専門委員)、美馬秀樹(東京大学准教授)がパネリストとして登壇した。

 ディスカッション内容は多岐に渡ったが、人文情報学に関わる点では吉見と植村の提示した議論が興味深い。地方紙というのは、全国紙に比較してローカルでかつ細かい情報が掲載されているので、これがデジタル化され横断検索できるようになれば、歴史のあり方が大きく変わるだろうという提案である。吉見は、天皇の巡幸を調査した際に全国紙には大まかな情報しか載っていないのに対し、巡幸先の地方紙には滞在場所や時間まで事細かに掲載されていた例を引いていた。
また、これまで「新聞紙(News Paper)」と同一視されていた「新聞(News)」が、紙から解放されて本来の新たな情報を知るという意味に回帰する、これがデジタル化のメリットであるという議論も行われた。この議論を受けて美馬からは、海外の研究者には、こういった日本の新聞情報にデジタルで簡単にアクセスしたいというニーズがあることも紹介された。

 未来への展望が示された一方、美馬による見出しや本文を認識しながら正しい構造でテキスト化する難しさの提示やディープラーニング活用の可能性の議論(この問題は学習用データを大量に囲い込んだ組織が圧倒的なアドバンテージを得る問題とも通じる)、萩原・前川による作成の苦労やデータベースの購入先が限られている実態など、具体的な課題も提示されたディスカッションとなった。

 議論を受けて柳は、地方紙をデジタル化し、研究や社会で活用するためには、今回のフォーラムがその解決を始めるスタートになると述べていた。地方紙のデジタル化には、他の多くの資料デジタル化と同様に課題が山積している。そのためには、多様なプレーヤーの協力が不可欠である。今回は新聞関係者の参加が多かったが、現場側の協力を得てデジタル化を進めるきっかけとなったのならば、このフォーラムの意義は非常に大きいものだったと言える。

[1] http://www.europeana-newspapers.eu/
[2] https://www.loc.gov/ndnp/
[3] http://trove.nla.gov.au/newspaper/
[4] https://newspaperarchive.com/
[5] https://www.genealogybank.com/
[6] https://www.newspapers.com/
[7] http://www.proquest.com/products-services/pq-hist-news.html
[8] http://www.readex.com/
[9]Googleの方針転換で更新が終了し、Google Newsに統合。
[10] http://www.britishnewspaperarchive.co.uk/
[11] http://www.gale.com/

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 配信の解除・送信先の変更は、
    http://www.mag2.com/m/0001316391.html
                        からどうぞ。

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◆編集後記(編集室:ふじたまさえ)
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今月の人文情報学月報のキーワードはデジタルアーカイブにあったように思います。デジタルアーカイブの研究をする視点からの巻頭言に始まり、地域資料との関係、さらにこれからデジタル化されるであろう地域資料について、というようにさまざまな視点がとりあげられていました。ご寄稿いただいた皆さま、ありがとうございました!

特に個人的な興味でいうと、イベントレポートにあった地方紙のデジタル化については、ご指摘のとおりこれからデジタル化を進めていくという中でのイベントに、実際に新聞を作る立場の関係者の参加もあったということは通常のデジタルアーカイブとは違った効果があるのではないかと期待しています。

次号もお楽しみに。

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人文情報学月報 [DHM072]【後編】 2017年07月31日(月刊)
【発行者】"人文情報学月報"編集室
【編集者】人文情報学研究所&ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)
【 ISSN 】2189-1621
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【サイト】 http://www.dhii.jp/

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