ISSN 2189-1621

 

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DHM 080 【後編】

2011-08-27創刊                       ISSN 2189-1621

人文情報学月報
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Digital Humanities Monthly

             2018-03-31発行 No.080 第80号【後編】 728部発行

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 ◇ 目次 ◇
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【前編】

◇《巻頭言》「知識ベースの学術情報フローへ向けたIIIFへの期待」
 (西岡千文:京都大学附属図書館研究開発室)

◇《連載》「Digital Japanese Studies寸見」第35回「デジタル空間と公器としてのアーカイブ」
 (岡田一祐:国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター)

【後編】

◇人文情報学イベントカレンダー

◇イベントレポート 関西大学アジア・オープンリサーチ・センター(KU-ORCAS)キックオフ・シンポジウム「デジタルアーカイブが開く東アジア文化研究の新しい地平」
 (菊池信彦:京都府立京都学・歴彩館)

◇編集後記

◇奥付

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【人文情報学/Digital Humanitiesに関する様々な話題をお届けします。】
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◇人文情報学イベントカレンダー(■:新規掲載イベント)

【2018年4月】

■2018-04-15(Sun):
2018 Spring Tokyo Digital History Symposium
(於・東京都/東京大学本郷キャンパス)
https://naokicocaze.wordpress.com/2018/03/20/2018-spring-tokyo-digital-h...

【2018年5月】

□2018-05-12(Sat):
情報処理学会 第117回人文科学とコンピュータ研究会発表会
(於・東京都/東京電機大学)
http://jinmoncom.jp/index.php?CH117

□2018-05-15(Tue)~2018-05-16(Wed):
EuropeanaTech Conference 2018
(於・蘭国/ロッテルダム)
https://pro.europeana.eu/event/europeanatech-conference-2018

□2018-05-21(Mon)~2018-05-25(Fri):
2018 IIIF Conference
(於・米国/Library of Congress)
http://iiif.io/event/2018/washington/

【2018年6月】
■2018-06-26(Tue)~2018-06-29(Fri):
DIGITAL HUMANITIES 2018(DH2018)
(於・墨国/SHERATON MARIA ISABEL)
https://dh2018.adho.org/en/

Digital Humanities Events カレンダー共同編集人
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小林雄一郎(日本大学生産工学部)
瀬戸寿一(東京大学空間情報科学研究センター)
佐藤 翔(同志社大学免許資格課程センター 助教)
永崎研宣(一般財団法人人文情報学研究所)
亀田尭宙(京都大学東南アジア地域研究研究所)
堤 智昭(東京電機大学情報環境学部)

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◇イベントレポート 関西大学アジア・オープンリサーチ・センター(KU-ORCAS)キックオフ・シンポジウム「デジタルアーカイブが開く東アジア文化研究の新しい地平」
 (菊池信彦:京都府立京都学・歴彩館)

 2018年2月17日(土)、18日(日)、関西大学アジア・オープンリサーチ・センター(KU-ORCAS)が、キックオフ・シンポジウム「デジタルアーカイブが開く東アジア文化研究の新しい地平」を開催した。シンポジウムでは、国内外からデジタルアーカイブや東アジア文化研究の専門家10名を招き、2日間に渡って講演・研究報告が行なわれた。以下、各報告について簡単に紹介するが、講演の動画記録が関西大学の公式YouTubeチャンネル[1]で公開されているので、詳細はそちらを参照願いたい。

 初日は、芝井敬司関西大学学長の開会挨拶のあと、内田慶市KU-ORCASセンター長による「KU-ORCASの目指すもの」と題した講演が行われた。
内田は、関西大学のアジア研究が大阪の漢学塾の伝統に立脚したものであること、同大学でのこれまでの東アジア研究データベースプロジェクトを引き継ぎながら、KU-ORCASでは3つの「オープン」-すなわち、研究リソースのオープン化、研究組織のオープン化、研究ノウハウのオープン化-を進めることを表明し、具体的にはバチカン図書館の所蔵資料のデジタル化とそのIIIF化によるグローバルな資料提供に向けた方針等が示された。

 内田の後に、下田正弘東京大学教授、Hilde De Weerdtライデン大学教授、Nathalie Monnetフランス国立図書館写本部中国書チーフキュレーター、楊暁捷カルガリー大学教授の4名の講演が続いた。下田はデジタル時代における人文学の課題を「情報哲学的」に論じ、De Weerdtは東アジア言語のテキスト分析のための研究プラットフォーム“MURKUS”を紹介した。
Monnetはフランス国立図書館の電子図書館Gallicaの紹介、そして楊はIIIF規格に対応した古典籍デジタル画像を使った教育・研究サイトの作成実例を話題にするなど、どれも多岐にわたるものであった。だが、それらに通底するテーマは、東アジア研究を取り巻くデジタル環境の意義や構築にあったと言える。

 1日目が、デジタル環境の意義やその環境構築の事例が主に議論されたのに対し、2日目は-やや、というか、かなり強引なまとめ方をすれば-デジタル環境の構築を踏まえてもたらされる、デジタル化された史資料をどのように研究で活用するかという、研究手法に関する議論が多かったように思う。

 藤田高夫KU-ORCAS副センター長は、これまで分析されることのなかった/あるいは分析されても研究者の主観的判断に拠りがちであった中国古代木簡の文字の字体について、一文字ごとに切り出しそれらをデータベース化することで、木簡の内容とその字体の関係を分析する手法を提案した。武田英明国立情報学研究所教授は、KU-ORCASの掲げている「オープンプラットフォーム」に関連して、昨今の学術研究を取り巻くオープンサイエンスとオープンデータの動向を紹介した。
永崎研宣人文情報学研究所主席研究員は、研究者向けデジタルアーカイブの構築において検討すべき課題を、国際的な動向(特にIIIFやTEIなどの規格)を交えて論じ、山本和明国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター副センター長は、古典籍研究のあり方を刷新する「歴史的典籍NW事業」の紹介を行った。
山本報告では、事業の全体的な概要とともに、人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)の開発したIIIF Curation Viewerといったツールの紹介もあったが、話の中で筆者が特に興味をもったのが、「オーロラハンター」という市民参加型のイベント[2]である。これは、古代・中世における古典籍・古記録のなかから、オーロラに関する記述(例えば赤いオーロラを意味する「赤気」という文字等)の抽出作業をワークショップ形式で行うというものである。
古文書を読んで内容を理解することを目指すというものではなく、参加者が決まった文字を古文書から探すというイベントだが、シンポジウム後の懇親会の席で山本は「研究者が日ごろ実際に行っている研究を“疑似体験”してもらうもの」と、そのコンセプトを印象的な表現で紹介していたのを聞き、他の分野やイベントでも転用できそうな汎用性のある考えだと感じた。実際、「オーロラハンター」は参加者に大変好評で、その結果を元に研究成果としても発表されているとのことである。

 話を戻そう。安岡孝一京都大学教授は、漢文の読解に苦慮したという状況を逆手に、漢字・漢文の読解をコンピュータで処理する研究について報告を行った。二階堂善弘関西大学教授は、20年続く漢字文献情報処理研究会[3]の活動について紹介した。そして最後に、聴衆を交えた総合討論が行われ、2日間の充実したシンポジウムは括られた。

 シンポジウムは、東アジア文化研究にとってのデジタル環境や研究手法というテーマを通じて、デジタルアーカイブを取り巻く動向やそれを構築するにあたって求められる考え方や機能等の様々な論点が取り上げられ、研究と実務の両面にとって大変示唆に富む内容であったと感じられた。

[1]関西大学公式YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UC9XVZzmWVc1q120WS023GRQ (最終アクセス日: 2018-03-11.)
[2]『ワークショップ「古典籍からオーロラを見つけよう『古典』オーロラハンター」を開催』 https://www.nijl.ac.jp/pages/cijproject/20160313_workshop.html (最終アクセス日:2018-03-11.)
[3]この研究会の第20回大会については、本誌前号掲載の拙稿「イベントレポート:第二十回漢字文献情報処理研究会大会」でも紹介している。

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 配信の解除・送信先の変更は、
    http://www.mag2.com/m/0001316391.html
                        からどうぞ。

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◆編集後記(編集室:永崎宣研、ふじたまさえ)
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 今回から、筆者も編集後記を分担させていただくことになりました。今月号の巻頭言の西岡さんはドイツ帰りのセマンティックWeb研究者であり、日本のデジタルライブラリでは先陣を切る京大図書館が彼女との協働のなかで今後どのように展開していくのか、大変楽しみなところです。イベントレポートを書いてくださっている菊池さんは、この4月から、まさにそのイベントのプロジェクトにて大学教員としてのキャリアをスタートされことが会場で明らかにされていました。
菊池さんに限らず、この4月は多くの人が動くようで、この関連の様子が一変すると思われます。そこから様々な新しいシナジーが生まれてくることを想像すると、これもとても楽しみなところです。

 また、注目のイベントとして、4月15日に東京近辺の大学院生/若手研究者によって開催される「Tokyo Digital History Symposium」があります。デジタル時代の歴史学の可能性が様々に議論されるようですので、この方面に関心がおありの方は参加されると面白いと思います。これに加えて、9月9日~13日には、人文学資料のデジタル化・構造化のガイドラインであるTEIガイドラインを定めるTEI協会が、年次総会を一橋講堂で開催します。
欧米の人文学資料を中心に展開されてきたもので、欧米圏以外では初めての開催になりますので、参加されるだけでも色々な情報を得られると思います。発表申込み締切りが4月9日になっておりますので、発表をご検討の方は前向きにご検討ください。同時会場で、日本デジタル・ヒューマニティーズ学会の年次学術大会も開催されますが、そちらの発表申込みは5月8日です。こちらはよりテーマが幅広いので、ぜひご検討ください。(永崎)

 新年度に向けてすこしずつ変化の時ですが、メルマガの方も編集後記の体制に変化がでました。私の個人的な仕事の中では意外と大きい変化かもしれません。基本的に執筆者の皆さんから集まった原稿を相手に編集作業を行いますので、原稿の向こう側のことはよくわかっていないというのが本当のところです。原稿の向こう側のことが少しでも漏れ伝わっていったら、人文情報学にかかわる皆さんの相互作用も深まるのではないかと期待します。

 最後になりましたが、年度末のお忙しいところ、原稿をお寄せいただきましてありがとうございました。巻頭言では、IIIFへの期待を、連載では「デジタルの哲学」とでもいうべき視点をいただいたと思います。イベントレポートでは、デジタルアーカイブに関する最新動向と今後に期待される新しい組織の門出の様子が伝わってきました。

 新年度も引き続き、よろしくお願いいたします。(ふじた)

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人文情報学月報 [DHM080]【後編】 2018年03月31日(月刊)
【発行者】"人文情報学月報"編集室
【編集者】人文情報学研究所&ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)
【 ISSN 】2189-1621
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