2011-08-27創刊 ISSN 2189-1621
人文情報学月報
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Digital Humanities Monthly
2017-02-27発行 No.067 第67号【後編】 657部発行
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◇ 目次 ◇
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【前編】
◇《巻頭言》「人文学がもっと読まれるためにできること」
(天野絵里子:京都大学学術研究支援室)
◇《連載》「Digital Japanese Studies寸見」第23回
「W3CがData on the Web Best Practicesを公開」
(岡田一祐:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
【後編】
◇人文情報学イベントカレンダー
◇イベントレポート
第12回人間文化研究資源共有化研究会「人文科学におけるオープンサイエンスの課題」
(古賀 崇:天理大学人間学部総合教育研究センター)
◇編集後記
◇奥付
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【人文情報学/Digital Humanitiesに関する様々な話題をお届けします。】
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◇人文情報学イベントカレンダー(□:新規掲載イベント)
【2017年3月】
■2017-03-10(Fri):
「東洋学へのコンピュータ利用」研究セミナー
(於・東京都/京都大学 人文科学研究所本館)
http://www.kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/seminars/oricom/
■2017-03-13(Mon)~2017-03-14(Tue):
Doing Digital Scholarship in Japanese Studies: Innovations and Challenges
(於・カナダ/University of Toronto)
http://guides.nccjapan.org/torontodigital
【2017年4月】
□2017-04-15(Sat):
デジタルアーカイブ学会設立総会
(於・東京都/東京大学 本郷キャンパス)
http://dnp-da.jp/events-and-news/
Digital Humanities Events カレンダー共同編集人
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小林雄一郎(東洋大学社会学部)
瀬戸寿一(東京大学空間情報科学研究センター)
佐藤 翔(同志社大学教育文化学科 助教)
永崎研宣(一般財団法人人文情報学研究所)
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◇イベントレポート
第12回人間文化研究資源共有化研究会「人文科学におけるオープンサイエンスの課題」
http://www.nihu.jp/ja/publication/source_rd/no12_170203
(古賀 崇:天理大学人間学部総合教育研究センター)
2017年2月3日(金)に、大学共同利用機関法人人間文化研究機構 総合情報発信セ
ンター 高度連携情報技術委員会の主催で、愛知工業大学本山キャンパス(愛知県名
古屋市)にて開催された標記研究会について、簡単ながら報告したい。
最初に林和弘氏(文部科学省科学技術・学術政策研究所)が「オープンサイエン
スが生まれた背景と最近の政策の動き」と題する講演を行った。林氏は、研究コミ
ュニティの中での動向(研究データの公開・共有・活用の動きとその基盤など)の
みならず、G8およびG7科学技術大臣会合[1]での合意事項や、ヨーロッパでの“
European Open Science Cloud”構想-EUとしてのDigital Single Market Strategy
と密接に結びつく-など、オープンサイエンスをめぐる政策動向についても概観し
た。その上で、オープンサイエンスは研究コミュニティのみならず政府・経済界・
市民を巻き込んだ「運動(ムーブメント)」として進展しており、今や「不可逆的
変化」の段階に入りつつあること、ただし歴史を振り返れば「手書きでの伝達から
印刷による伝達へと不可逆的に変化したグーテンベルク革命」の再来とも言え、我
々はグーテンベルクの時代と同様に「過渡期」にいること、を論じた。
研究会の後半では、人間文化研究機構の構成機関の研究者による報告が行われた。
後藤真氏(国立歴史民俗博物館(歴博)研究部)の「歴史資料のオープンデータ化
に関する現在と未来-歴博の総合資料学の取り組みを通じて-」では、歴博が中心
として取り組んでいる「総合資料学」の活動の概要-RDF、IIIF、TEIを結びつけた
情報基盤の構築の取り組みを含め-や、歴博としての資料や成果の「オープン化」
の現状・構想を取り上げつつ、何を提供すべきかという人文系機関の使命の再確認
が必要なことを論じた。山本和明氏(国文学研資料館(国文研)古典籍共同研究事
業センター)の「歴史的典籍NW事業におけるオープンデータ-その戦略と課題-」
では、日本の人文科学領域で「オープン」「オープンデータ」の意味・意義の理解
がまだ十分ではない現状を踏まえつつ、国文研の歴史的典籍NW事業を例に取り、
「メディアリリース」を含めて「伝える努力」とその継続の重要性を強調した。前
川喜久雄氏(国立国語研究所(国語研)コーパス開発センター)「言語研究と「オ
ープン」データ」は、言語研究の中での「元データ」公開の必要性や、国語研とし
ての成果刊行の問題を取り上げ、前川氏が取り組んできた「言語資源(コーパス)
の開発と一般公開」の成果を述べつつ、データ公開をめぐる研究上および知的財産
法上の課題を論じた。
なお、これらの報告の中で、人文系におけるオープンデータのライセンスは、公
的機関のものだからといってCC0(まったくのパブリックドメイン)扱いにするのは
行き過ぎで、CC-BY(出典の表記を求める)としておくのが適切ではないか、という
ことが、共通点のひとつとして語られた。つまり、引用-被引用の関係の明記を保
証しておくことが、「データがどのように使われたか」の証拠の確保につながり、
データや提供機関の評価にも寄与する、ということである。データへのDOI付与も、
これに共通することとして論じられた。
以上の講演・報告に対する質疑においては、人文科学にかかわる出版社や出版流
通関連企業の役割・位置づけとその危機をめぐる問題、「誰にとってのオープンデ
ータか」(一般の人々に加え、研究者からの需要も掘り起こす必要性)、大学評価・
研究者評価のあり方、人文系データへのアクセスの制御のあり方(資料やデータの
中の個人情報など)、オープンデータをこれから使う人たち(「若手」研究者)に
対しての教育、などが論点として挙がった。
最後に筆者の感想を加えると、報告や質疑にも挙がった通り、日本の人文科学の
さまざま領域において「オープン」「オープンデータ」さらには「オープンサイエ
ンス」の意味・意義が浸透し切れていない点は、筆者自身も実感している。他方、
研究や教育の素材、また「個人的・社会的活動の遡及的検証」の素材となりうる資
料・データの保存・管理・アクセスのしくみ-言い換えれば、図書館、資料館、あ
るいはより広く「アーカイブ」機関の役割-が、オープンサイエンスの潮流・政策
展開の中で、どれほど理解されているか、疑問も抱いている。つまり、「潜在的に
せよ、研究にすぐ役立つ(即時的な効果の測定・評価にもつながりやすい)データ」
の活用のみが強調される傾向が、オープンサイエンスの「運動」「かけ声」の中に
あるのではないか。これに対し、より長期的・社会的な観点での「オープン」「デ
ータ」「サイエンス」の役割・意義・課題を、人文科学の観点から今後も提示して
いく必要がある、と筆者は感じている[2]。なお、今回は企画趣旨もあってか、人
間文化研究機構やその構成機関としての課題が強く意識された感があるが、人文科
学における「オープン」「データ」「サイエンス」のあり方については、学会や
「アーカイブ」機関なども加わっての、より幅広い議論が必要であろう。
[1]直近では「G7茨城・つくば科学技術大臣会合」(2016年5月)において、オー
プンサイエンスが議題のひとつに含まれ、会合の成果としての共同声明にも盛り込
まれた。 http://www8.cao.go.jp/cstp/kokusaiteki/g7_2016/2016.html
[2]「アーカイブ」機関としては、今後は「ボーンデジタルの資料・記録」の寄贈
受け入れも課題となるはずであり、この点の議論や実践は、少なくとも米国では先
行していると筆者は考えている。例として下記を参照。
・古賀崇「イベントレポート アメリカ・アーキビスト協会2015年次大会・プレ
カンファレンス(講習会)「デジタル・アーカイブズにおけるプライバシー・
秘匿性をめぐる課題(Privacy and Confidentiality Issues in Digital
Archives)」『人文情報学月報』no. 50, 2015. http://www.dhii.jp/DHM/dhm50-2
・Zastrow, Jan. “Digital acquisitions and donor relations: assets,
apprehensions, and anxieties,” Computers in Libraries, vol. 36, no.
5, 2016, p. 16-18.
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配信の解除・送信先の変更は、
http://www.mag2.com/m/0001316391.html
からどうぞ。
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◆編集後記(編集室:ふじたまさえ)
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今月の人文情報学月報は、いかがでしたか?巻頭言からイベントレポートまで、
キーワードは「オープン」一色でした。2017年にはいってから、九州大学や神戸大
学が大学の研究成果について「オープンアクセス方針」を採用という話題を目にし
ていました。巻頭言の天野さんのご指摘は、さらにもっと広い視点からの考え方を
わかりやすく示してくださっています。
連載もイベントレポートも切り取る角度は違えど、同じ方向に向かっていくもの
だと思います。ご寄稿いただいた皆さん、ありがとうございました!
最後にカレントアウェアネスのオープンアクセスに関する記事を紹介しておきま
す。こちらもぜひご覧ください。
http://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/724
次号もお楽しみに。
◆人文情報学月報編集室では、国内外を問わず各分野からの情報提供をお待ちして
います。
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人文情報学月報 [DHM067]【後編】 2017年02月27日(月刊)
【発行者】"人文情報学月報"編集室
【編集者】人文情報学研究所&ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)
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