ISSN 2189-1621

 

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DHM 055 【前編】

2011-08-27創刊                       ISSN 2189-1621

人文情報学月報
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Digital Humanities Monthly

             2016-02-27発行 No.055 第55号【前編】 618部発行

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 ◇ 目次 ◇
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【前編】
◇《巻頭言》「関西で学会・研究会を開催してきて」
 (村川猛彦:和歌山大学システム工学部)

◇《連載》「Digital Japanese Studies寸見」第11回
「スマートフォン向け日本の古文献手書き文字学習アプリが2種リリース」
 (岡田一祐:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

◇人文情報学イベントカレンダー

◇イベントレポート(1)
第11回 人間文化研究情報資源共有化研究会
「人間文化研究機構のもつ画像データ共有化の前進に向けて」
 (江上敏哲:国際日本文化研究センター図書館)

【後編】
◇イベントレポート(2)
「貴重資料・デジタル化・キュレータの役割」
(英題Rare materials, digitalization, and the role of curators)」
 (鈴木親彦:東京大学大学院人文社会系研究科)

◇イベントレポート(3)
「DNP学術電子コンテンツ研究寄附講座開設記念シンポジウム
 ~これからの学術デジタル・アーカイブ~」参加報告
 (小風尚樹:東京大学大学院人文社会系研究科西洋史学専門分野 修士2年)

◇イベントレポート(4)
ワークショップ「ウェブ・アーカイブの世界
-人文学・社会科学から見た研究資源としての可能性-」
 (古賀 崇:天理大学人間学部総合教育研究センター)

◇編集後記

◇奥付

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【人文情報学/Digital Humanitiesに関する様々な話題をお届けします。】
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◇《巻頭言》「関西で学会・研究会を開催してきて」
 (村川猛彦:和歌山大学システム工学部)

 2016年2月上旬、大阪駅から歩いてすぐの立命館大阪梅田キャンパスにて、第5回
知識・芸術・文化情報学研究会を開催することができた。この研究会に筆者はこれ
まで、世話役の一人として実施に関わってきた。また少し前になるが、2014年5月に
は和歌山大学システム工学部にて情報知識学会年次大会を開催し、実行委員長を務
めた。これらの経験を踏まえ、関西で学会・研究会を行ってきたことの苦労や意義
などについて述べていきたい。

 学会や大学の宣伝とならないよう、意識しつつも、それぞれ実施の経緯や仕方が
異なるので、少し書いておかなければならない。情報知識学会年次大会は年1回、最
近では5月下旬の土日に開催している。数年おきに関東以外で実施することも、恒例
となっており、筆者は一つ前の回(2013年5月、お茶の水女子大学)の準備期間中に、
実行委員および次回実行委員長を務めるよう依頼があり、承諾して企画に携わって
きた。日本図書館情報学会、訓点語学会などと日程が重なることが多い。

 知識・芸術・文化情報学研究会は、関西で定期的に研究発表できる機会を設け、
主に学生や若手研究者の奨励を意図して、実施してきた。アート・ドキュメンテー
ション学会関西地区部会および情報知識学会関西部会の共催としているものの、学
会員であることは登壇の要件としていない。また年齢・地域の制限もなく、遠方か
らお越しの方や、ベテラン研究者による発表を聴くこともでき心強い。第1回のみ1
月下旬、第2回以降は2月上旬の開催で、筆者の所属においては修士論文提出直後、
また卒業論文は最後の追い込みの段階である。一方、2月はじめは私立大学の入試が
集中しており、その業務のためお越しいただけない方々には申し訳なく思っている。

 それらの運営に携わるまで、筆者は常に、学会へ「出向く」という認識を持って
いた。関西だと、大阪よりも京都(同志社大学今出川校地)や滋賀(立命館大学び
わこ・くさつキャンパス)によく足を運ぶ。しかしそれよりも多いのが、東京であ
る。旅費を安くするため、新幹線ではなく飛行機を使うとなると、早朝に関西空港
を離陸する便に乗り、夜遅くに戻る。学会行事の合間に、観光できればいいが、企
業や研究者らとの打ち合わせを入れることもある。タイトなスケジュールになりそ
うでも、訪問先周辺で評判のいい食事どころや店舗は、事前にチェックしている。
すべてを訪れるのは無理であっても、そういった下調べが、出張前のひそかな楽し
みとなっている。

 学生のころ、筆者は情報セキュリティの研究を行っていた。年1回、その分野で大
きなシンポジウムがあり、大学院生になってはじめの年は琵琶湖のほとり、学外発
表デビューとなった次の年は愛知・犬山城のそばで開催された。そこでは予稿集を
発行せず、配布資料は発表者が当日、決められた部数を会場に持ち込む方式であっ
た。参加者は受付を済ませると、専用のバインダーを受け取る。そしてそこに、各
発表者の資料を綴じていく。必要部数は年々多くなり、そのシンポジウムに参加し
なくなった回から、事前提出および予稿集発行の方式に切り替わったと聞く。知識・
芸術・文化情報学研究会はこれまで、当日持参の方式にしている(ただし、バイン
ダーはない)。発表者の方々にはご負担をかけているものの、直前まで修正できる
というメリットを生かして、充実した内容を資料にし、スクリーン上で提供してく
ださっているのには、いくら感謝しても足りない。

 1回だけではなく、継続して学会・研究会を催すとなった場合、会場規模に見合う
よう、十分な数の来場者に来ていただくことだけでなく、次回の開催への引き継ぎ
や、長期的な運営なども、考慮する必要がある。

 開催にあたり準備すべき事項は、関西か否かで変わることはないだろう。実行委
員(上記研究会では、世話役)および協力者との間で、コミュニケーションをとり
ながら、実施日の決定と会場の予約、発表者・参加者の募集、そして広報をしてい
くのが、最も基本となる。主催・共催などの名称や配列、申込みおよび論文送付の
ための窓口の設置、発表者決定後のプログラム編成、領収証の発行や金庫の管理と
いった金銭まわりには、特に配慮を要する。会場案内の掲示とその撤収は、外から
見ると簡単そう(あるいは不満ばかり)だが実際にやってみると苦労ばかりであっ
た。大きめの発表会場を確保して、来場者が予定よりも少ないのは、前方に座って
もらえば対処できるが、懇親会で同様のことがあってはならない。懇親会の予約人
数には、直前まで神経を使う。

 合わせて、「数」の確保のため、研究室の学生にも発表してもらう。申込みや論
文送付は、外に出すのと大差ないが、直前の発表指導は、準備作業と平行して進め
る必要がある。筆者の大学院のゼミでは、工学系とはいえ広い分野(具体的には、
情報系と環境系)の教員および大学院生が理解できるよう、発表内容を構成するこ
とを指導している。とはいえ学外の、情報系に加えて文科系に強みを持つ聴講者ら
の集まりでは、いささか勝手が異なる。そういった専門家集団の前で発表し、叱咤
激励されることは、修士論文提出のためのノルマとは別に、大切なことであると思
い、参加させてきた。

 最後に小さな出来事を。お茶の水女子大学の準備で、実行委員長にキャンパス案
内をしていただいた。「ここが悠仁さまが通ってらっしゃる小学校です」という発
言を聞き、他と一緒に驚きの声をあげるとともに、1年後、自校ではどんな案内をで
きるのかと不安を覚えた。和歌山大学での開催にあたり、懇親会をキャンパス内の
レストランで行うこととし、初日のセッション終了から少し時間をとって、キャン
パス内ツアーを企画した。図書館に所属の実行委員は、図書館見学を、そして筆者
はクリエ(学生自主創造科学センター、当時)の見学を担当した。時間を決めてホ
ールに集合し、そこで図書館かクリエを選んでもらう予定だったが、筆者が忘れ物
を取りに行き、戻ったときには多くの方々が図書館に向けて足を運んでいた。半数
よりも明らかに少ない人数を引率し、クリエの活動内容や成果物などを見てもらい
ながら、残ってくださった方々に感謝するとともに、人数の違いはタイミングより
も結局のところ関心の違い、すなわち図書館という「知の集積体」への関心がより
高かったためと思うようになった。

執筆者プロフィール
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村川猛彦(むらかわ・たけひこ)和歌山大学システム工学部准教授。奈良先端科学
技術大学院大学情報科学研究科修了。博士(工学)。同助手、和歌山大学システム
工学部助手・講師を経て2014年より現職。学部1年生を対象とした情報処理教育に
携わるとともに、情報検索・推薦、古典籍データベース、ソフトウェア開発者支援
などに関心を持つ。

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◇《連載》「Digital Japanese Studies寸見」第11回
「スマートフォン向け日本の古文献手書き文字学習アプリが2種リリース」
 (岡田一祐:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

 100年前の日本の手書き文字は、いまの文字の知識ではほとんど太刀打ちができな
い。そこで、古い文献を扱うには、まず文字を学ぶ必要があるのだが、本連載第8回
[1]で扱ったように、変体仮名やそれに負けず劣らず漢字の崩し方もいまとは流儀
が違っていて、そういうものを読むのは慣れと経験が大きくものをいう世界になっ
ている。大学の入門科目で、読みやすいからと言って先生に渡されるものが文字と
して認識できず、「これで読みやすいとはいったい?」などと思ったりもするもの
である。そんな古文献の手書き文字の学習支援アプリが近時たてつづけにふたつリ
リースされた。

 ひとつめは、早稲田大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校が2015年秋にリリ
ースした「変体仮名あぷり」であり(Android版は2015年10月29日、iOS版は11月4日。
英語版の名称は"The Hentaigana app")[2]、そしてもうひとつは、今年の2016年
2月18日に大阪大学がリリースした「くずし字学習支援アプリKuLA」(以下「KuLA」)
である[3][4]。「変体仮名あぷり」は、早稲田大学とUCLAの連携プロジェクト
「柳井正イニシアティブ グローバル・ジャパン・ヒューマニティーズ・プロジェク
ト」の一環としてUCLAのマイケル・エメリック氏が中心となって開発され、「KuLA」
は、大阪大学大学院文学研究科の飯倉洋一氏が代表者の挑戦的萌芽研究「日本の歴
史的典籍に関する国際的教育プログラムの開発」の一環として開発されたものであ
る。このふたつの名称の差に現れているように、「変体仮名あぷり」は仮名を中心
としたものであり、「KuLA」は漢字と仮名の両方を含めたものとなっている(ただ
し、[2]のエメリック氏の投稿を見るかぎり、「変体仮名あぷり」も今後の漢字へ
の拡張を予定しているようである)。

 これまで古文献の手書き文字は容易に習得できるものではなく、そこにこのふた
つのアプリが現れた意味は大きい。変体仮名学習ソフトウェアは楊暁捷氏らの
kanaClassicが稿者の知るかぎりもっとも古いもののようであるが[5]、その後に
続くものも管見のうちにはなく、現在の環境で学びやすいものはなかったといって
よい。唯一、国立国語研究所による「米国議会図書館蔵『源氏物語』画像(桐壺・
須磨・柏木)」[6]が、古文献手書き文字の教材ともすべく、翻字と原本画像を容
易に対比できるようにしているのを見るのみである。英語圏においても古文献の文
字を読み解くのはたやすいことではないものの、学習用アプリはとくに開発されて
もいないようで[7]、開発者の同じアプリが見つかるのみであった[8](ただ、
このソフトウェアは翻字作業の答え合わせができて文字の学習・参照機能とうまく
組み合わせられればさらに便利となるだろうと思わせられた)。

 このふたつのアプリは、どちらも覚えはじめようとする初学者に一字一字文字の
かたちと読み方を覚えてもらおうという方式を取っている。学習法の大きなちがい
としては、「変体仮名あぷり」は、早稲田大学図書館の所蔵する古典籍から採字し
てフラッシュカード方式で一字一字覚えこむのに対して、「KuLA」は、国文学研究
資料館の画像データベースなどをもとに、用例つき字書機能をベースに、テストを
こなしていくことで覚えるというところがあるようである。このようなこともあっ
て、両者は操作感がかなり異なる。今後の方針としても、「変体仮名あぷり」は続
け書きモードや漢字などに発展していくようで、用意された翻刻文と対比しながら
読み進めてゆく機能や、古文献手書き文字学習コミュニティなどを支援してゆく
「KuLA」とはこの点も異なるようである。画像に関していえば、「変体仮名あぷり」
は一字一字抽出しているのに対し、「KuLA」は元画像から切り出したそのままであ
り、まわりの文字も入り込んでしまっているため、字の判別のさまたげになってい
ることがあり、その点「変体仮名あぷり」に分があるように思われる。また、両者
とも実際の用例から覚えるということもあって、かならずしも典型的な字体が現れ
るわけではなく、筆勢で崩れてしまったようなものも見受けられ、改善の余地があ
るように感じられた。

 このアプリは当初の目的をよく達成しているものと思うが、「KuLA」の読む機能
を試してみると分かるように、単字学習はそれ自体は古文献に親しむというゴール
からすれば、序の口にすぎない。古文献手書き文字は、おおく続け書きがされ、そ
のためにときとして研究者さえ読み間違えることを考えると、単字学習の段階から
実際の文献を読む段階にはなお容易に達しがたい。あるいはこのふたつのアプリに
刺激を受けた第三第四のひとびとによって、この隙間を埋めることができるアプリ
が今後登場すれば、古文献の利活用ということも現実味を帯びてくるのかとも思う。
また、そもそも読もうという気持ちにはどうしたらなるのか、悩みは尽きない。

 すでに述べたように前近代の手書き文字文化を手軽に学べる手段があまりないの
はひとり日本にかぎったことではなく、現にエメリック氏の同僚はほかの文字体系
への応用に期待を寄せている[9]。「変体仮名あぷり」の開発はよく分からないが、
「KuLA」の開発者である橋本雄太氏の関連tweetを拝見するかぎり、人文情報学的な
手法がかなり取り入れられているようで、そのような後ろ盾のもとに、古書体学が
各地で発展する機縁になれば興味深いことだろう。

[1] 岡田一祐「「Digital Japanese Studies寸見」第8回「変体仮名のユニコード
登録作業はじまる」」人文情報学月報第52号、2015 http://www.dhii.jp/DHM/dhm52-1
[2] Michael Emmerich. The Hentaigana App. _H-Japan_, 2015.
https://networks.h-net.org/node/20904/discussions/94186/hentaigana-app
http://www.waseda.jp/top/news/34162
[3] https://twitter.com/yuta1984/status/700003313454985218
[4] 本稿にいう(日本の)古文献手書き文字はKuLAにいう崩し字と同じものを指
している。
[5] 稿者未見。Aileen Gatten氏によるレビューなどを参照した(doi:10.2307/2668366)。
[6] http://dglb01.ninjal.ac.jp/lcgenji_image/
[7] iTunes StoreおよびGoogle Play内を検索した結果による。
[8] https://play.google.com/store/apps/details?id=com.agbooth.handwriting.me...
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.agbooth.handwriting.re...
[9] http://newsroom.ucla.edu/stories/new-app-helps-students-learn-to-read-an...

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◇人文情報学イベントカレンダー(□:新規掲載イベント)

【2016年2月】
■2016-02-27(Sat):
人文系データベース協議会 第21回公開シンポジウム「人文科学とデータベース」
(於・京都府/同志社大学 今出川校舎 寒梅館)
http://www.jinbun-db.com/symposium

□2016-02-27(Sat):
歴博公開シンポジウム「資料がつなぐ大学と博物館
-「研究循環アクセスモデル」の構築にむけて」
(於・東京都/フラクシア東京ステーション)
http://www.rekihaku.ac.jp/education_research/research/list/news/r160227....

■2016-02-29(Mon):
データシェアリングシンポジウム
(於・東京都/一橋講堂)
https://jipsti.jst.go.jp/rda/

【2016年3月】
■2016-03-01(Tue)~2016-03-03(Thu):
RDA Seventh Plenary Meeting
(於・東京都/一橋講堂)
https://rd-alliance.org/plenary-meetings/rda-seventh-plenary-meeting.html

□2016-03-07(Mon)~2016-03-12(Sat):
DHd2016 Leipzig
(於・独国/University of Leipzig)
http://dhd2016.de/

□2016-03-07(Mon)~2016-03-10(Thu):
Code4Lib 2016
(於・米国/Philadelphia)
http://2016.code4lib.org/

□2016-03-09(Wed):
国際学術情報流通基盤整備事業 第4回 SPARC Japan セミナー2015
「研究振興の文脈における大学図書館の機能」
(於・東京都/国立情報学研究所)
http://www.nii.ac.jp/sparc/event/2015/20160309.html

□2016-03-15(Wed):
国際シンポジウム「記憶、過去の(再)創造とデジタル人文学」
(於・東京都/慶應義塾大学 三田キャンパス)
https://www.facebook.com/events/142006372825869/

■2016-03-15(Tue)~2016-03-17(Thu):
Nordic Digital Humanities Conference
(於・ノルウェー/University of Oslo)
http://dig-hum-nord.eu/?page_id=352&lang=en

■2016-03-18(Fri):
第27回「東洋学へのコンピュータ利用」研究セミナー
(於・京都府/京都大学人文科学研究所)
http://www.kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/seminars/oricom/

Digital Humanities Events カレンダー共同編集人
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小林雄一郎(東洋大学社会学部)
瀬戸寿一(東京大学空間情報科学研究センター)
佐藤 翔(同志社大学教育文化学科 助教)
永崎研宣(一般財団法人人文情報学研究所)

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◇イベントレポート(1)
第11回 人間文化研究情報資源共有化研究会
「人間文化研究機構のもつ画像データ共有化の前進に向けて」
http://www.nihu.jp/events/2016/01/12/-11/
 (江上敏哲:国際日本文化研究センター図書館)

 主催:大学共同利用機関法人人間文化研究機構 研究資源共有化事業委員会
 日時:平成28年2月6日(土) 13時00分~17時30分
 場所:TKP ガーデンシティ京都 「山吹」

 2016年2月6日、ガーデンシティ京都において、人間文化研究機構・研究資源共有
化事業委員会が主催する、第11回人間文化研究情報資源共有化研究会「人間文化研
究機構のもつ画像データ共有化の前進に向けて」が催された。

 人間文化研究機構は国立歴史民俗博物館、国文学研究資料館、国立国語研究所、
国際日本文化研究センター、総合地球環境学研究所、国立民族学博物館から成る。
研究成果としての研究情報資源を、より見やすく使いやすくわかりやすく公開提供
していくため、各機関は多くのデータベース、デジタル・アーカイブを公開してい
る。今回の研究会では特に「画像データ」に着目、絵引きシステムや検索機能の高
度化、研究ツールとしての構築とその意義等が議論された。なお人間文化研究機構
では機構内のデータベースを連携検索するnihuINTシステムを構築している。

 国文学研究資料館の山本和明氏からは「大型プロジェクトの目指す検索機能の高
度化の取り組み」というタイトルで、「日本語の歴史典籍の国際共同研究ネットワ
ーク構築計画」において取り組まれている検索機能の構築についての紹介があった。
2014年から2023年までに古典籍史料30万点の全冊画像を公開予定のこの事業では、
それだけの大量な画像からいかに必要な画像にたどりつくか、という検索機能の高
度化が必要となる。そのために予定されている方策の例として、作業ツールとして
のwebベースのタグ付けシステムがデモされた。加えてソーシャル・タギング・シス
テムの実装についても言及された。また、公開する古典籍資料にはDOIを付与し、論
文等へはこれまでのようにURLを記載するのではなく、DOIを記載してもらうことを
意図しているとのことであった。これは古典籍資料を用いた人文学研究において議
論・検証を可能にするという意味で重要だろう。この事業で構築しようとしている
のは古典籍プラットフォームであり、各機関で所蔵公開する古典籍資料画像の横断
検索、束としての発信を目指しているとのことであった。

 国立民族学博物館の丸川雄三氏からは「近代日本の身装文化:研究資源データベ
ースの発信と展開」と題し、近日公開予定という身体と装いに関する画像データベ
ースの紹介があった。明治維新以降の図像資料を収集し、データベース化するとい
う民博コスチュームデータベースプロジェクトによるものである。約1万件の画像デ
ータに、出典などの解説情報、書誌情報、身装の内容を示すコードなどを付す。特
徴的なのが、研究者による学術的知識・暗黙知を文章で記述したコメントであり、
これは全文テキスト検索ができる。例えば、「髪型」などの一般的なキーワードは
コードやメタデータにはあらわれにくいが、コメントの全文検索でヒットして見る
ことができる、といった効用がある。また管理画面ではこのコメントに対してログ
インした研究者同士でフィードバックを送りあえる仕組みも用意されており、研究
コミュニティ内でコメントを共有できるフォーラム型情報ミュージアムを構築した
い、とのことであった。

 国際日本文化研究センターの石上阿希氏からは「絵入り百科事典データベースの
構築:訓蒙図彙を核として」と題する報告があった。機構の総合書物学プロジェク
トのひとつに「キリシタン文学の継承:宣教師の日本語文学」というプロジェクト
があり、来年度から本格的に始動する。そこで、南蛮屏風に書き込まれた地図情報・
地理情報などが、その後の江戸時代の出版物の内容にどう影響を与えているか、継
承されていったか、を考察する。そのための研究ツールとして図像・図版データベ
ースを構想しているとのことであった。その対象として『訓蒙図彙』(1666)が紹
介された。京都の朱子学者である中村てき斎(1629~1702)が編纂したという『訓
蒙図彙』は日本で最初の図解百科事典であり、森羅万象の様々な事物について図像、
名称(和漢)、注釈を記しており、対象とするにふさわしい古典籍資料である。

 国立歴史民俗博物館の小島道裕氏からは「洛中洛外図屏風「歴博甲本」人物デー
タベースについて」という発表があった。洛中洛外図屏風の歴博甲本について、描
かれている1462人の人物像についてすべてキーワードを付与したデータベースであ
る。人や身装だけでなく、どこで何をしているかもキーワード化されている。また、
現在進行中の歴博乙本のデータベースや近世職人画像データベースについても紹介
された。近世職人画像データベースでは国文研等が所蔵する近世版本の所収画像か
ら、職人関係の図像を取り出し、詞書きなどとともにデータベース化する。これら
のデータベースは、機構の資源共有化データベースを通してキーワード共通検索を
可能にする、とのことであった。

 東京大学史料編纂所の藤原重雄氏による「肖像画模本/歴史絵引データベースの
課題」という発表では、史料編纂所による画像データベースがいくつか紹介された。
史料編纂所だけでなく全国の肖像画・彫刻・写真に関する手書きの調査カードをも
とにつくられた、肖像画模本データベース。服飾史・有職故実関係の電子図典とし
て関連書籍の口絵・挿図の横断索引を提供している歴史絵引データベースなどであ
る。図画と言葉とは必ずしも一対一対応をとるものではなく、元の作品には固有の
文脈がある。多様な文脈を持つ画像を、どのような視点で記述したのかを明示しな
いままに横断検索させ画像を提供するということへの懸念が示された。

 国立情報学研究所の北本朝展氏からは「画像内容に基づく検索技術に対する期待
と現実」と題し、画像検索の入力方法、技術、出力方法についての考察や事例紹介
があった。画像を画像外のテキストやメタデータで探すのではなく、画像内に含ま
れてる内容を重視する手法や、人工知能が自動的に写真にキャプションをつけると
いう研究例などである。問題は学習のためのデータをどう集めるか。また、例えば
古典籍資料(版本)の線画によるイラストは抽象度が高すぎて、自動的なタグ付け
が難しい、などの指摘もあった。

 ディスカッションでは、ソーシャルタギングの可能性についてやあるべき画像共
有のかたちについての議論があった。ソーシャルタギングについては、当面は研究
者による、との意見もあれば、公共にメリットがある情報交換になりうる、参加者
の仲間意識や横のつながりが鍵ではないか、との意見もあった。

 全体を通して印象に残ったのは、画像が本来持っているはずの作品の文脈や視点
の違いによる理解・分析の違いなどが、切り離されてデータベース化されてしまう
ことへの懸念であった。これについては、例えば身装画像のデータベースに付され
ているという研究者によって文章化されたコメントなどが解決のヒントになるのか
もしれない。また、いずれにしても、画像データベースが持つであろう“見つける
ことができる機能”と(代替物に)“アクセスすることができる機能”、そしてそ
れ自体が持つ研究機能とは、それぞれ整理して議論されるべきであろうという感想
も持った。また逆に、それぞれ別の視点を持ち、異なる専門分野を持っている者た
ちが、集い議論し合うことの重要性(そして、だからこその難しさ)を実感した催
しでもあった。資源共有化という目的のもとでこのような研究会が持たれ、“コミ
ュニティ作り”が行われていくことこそが、成果作りそのもの以上に重要なことで
あるのかもしれない。

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 続きは【後編】をご覧ください。

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人文情報学月報 [DHM055]【前編】 2016年02月27日(月刊)
【発行者】"人文情報学月報"編集室
【編集者】人文情報学研究所&ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)
【 ISSN 】2189-1621
【E-mail】DigitalHumanitiesMonthly[&]googlegroups.com
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【サイト】 http://www.dhii.jp/

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