ISSN 2189-1621

 

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DHM 070 【後編】

人文情報学月報
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Digital Humanities Monthly

             2017-05-30発行 No.070 第70号【後編】 668部発行

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 ◇ 目次 ◇
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【前編】

◇《巻頭言》「学際研究における人文・社会科学研究の役割」
 (大賀哲:九州大学大学院法学研究院・准教授)

◇《連載》「Digital Japanese Studies寸見」第26回
「『コンピューターを通して解釈するということ』をめぐって」
 (岡田一祐:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

【後編】

◇人文情報学イベントカレンダー

◇イベントレポート
「IIIF対応ビューワMiradorをテーマとしたイベントの参加メモ」
 (永崎研宣:人文情報学研究所)

◇編集後記

◇奥付

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【人文情報学/Digital Humanitiesに関する様々な話題をお届けします。】
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◇人文情報学イベントカレンダー(□:新規掲載イベント)

【2017年6月】

■2017-06-05(Mon)~2017-06-09(Fri):
2017 IIIF Conference in Vatican
(於・バチカン市国/Institutum Patristicum Augustinianum)
http://iiif.io/event/2017/vatican/

■2017-06-10(Sat)~2017-06-11(Sun):
2017年度アート・ドキュメンテーション学会年次大会
(於・東京都/東京工業大学大岡山キャンパス)
http://d.hatena.ne.jp/JADS/20161220/1482225138

【2017年7月】

■2017-07-22(Sat):
デジタルアーカイブ学会 第1回研究大会「デジタルアーカイブの拓く未来」
(於・岐阜県/岐阜女子大学 文化情報研究センター)
http://www.gijodai.jp/jyouhou/info/2017/04/1414

【2017年8月】

□2017-08-08(Tue)~08-11(Fri):
Digital Humanities 2017
(於・カナダ/McGill University)
https://dh2017.adho.org/

Digital Humanities Events カレンダー共同編集人
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小林雄一郎(日本大学生産工学部)
瀬戸寿一(東京大学空間情報科学研究センター)
佐藤 翔(同志社大学免許資格課程センター 助教)
永崎研宣(一般財団法人人文情報学研究所)

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◇イベントレポート
「IIIF対応ビューワMiradorをテーマとしたイベントの参加メモ」
 (永崎研宣:人文情報学研究所)

 5/2-5/4、スタンフォード大学図書館にて開催された、IIIF対応ビューワMirador
をテーマとするイベント Mirador, Images, and the Future of Digital Research
on the Webに参加したので、気がついた点をいくつか記しておきたい。

 Miradorは、IIIF対応の代表的なビューワの一つとして、スタンフォード大学とハ
ーバード大学が中心になって開発しているフリーソフトであり、現在では世界中の
様々な機関で採用されている。国内でも、東京大学のSAT大正蔵図像DBや国文学研究
資料館の新日本古典籍総合目録データベース等で採用されている。IIIF対応で公開
されている世界中の機関の画像を複数並べて拡大縮小したりする機能とアノテーシ
ョンをポップアップダイアログで表示できる機能に特徴があり、その点で広く利用
されている。このイベントは、世界中のMiradorの利用者・開発者が一堂に会して情
報交換を行い、今後のMiradorのあり方について検討するというものであった。参加
者は、北米からが多かったようだったが、フランス、ドイツ、イギリスからも参加
があり、日本からも筆者が参加した。集まってきていたのは、主に大学図書館や美
術館等の情報システム担当者や開発者といった人々であったが、少数ながら大学教
員も参加していたようであった。

 会全体としては、Miradorの活用に関する事例報告、マニュスクリプト・AV/3D・
教育研究利用のグループに分かれてのディスカッション、スタンフォード大学の
Mirador利活用サイトのハンズオンワークショップ、Miradorのソースコードの検討
会等がおこなわれた。そのなかで、特に興味深かったものをいくつか挙げてみたい。

 事例報告の中でもっとも興味深かったのは、トロント大学図書館のチーム(
https://digitaltoolsmss.library.utoronto.ca/ )による、MiradorとOmeka・
Neatlineを組み合わせたコラボレーションシステムであった。このシステムは、い
わゆるメタデータCMSの一つでありインストールや拡張機能追加を含め全体的に簡単
に利用できることに焦点を当てたOmekaの拡張機能として開発されている。ここでは、
IIIF manifestのURLをフォームに入力して読み込みボタンをクリックするだけで、
そのmanifestに含まれる画像等が一通りOmekaに読み込まれ、Omeka上に組み込まれ
たMiradorで読むことができるようになる。そして、Miradorのアノテーション付与
機能を用いてつけたアノテーションは、Omeka上に保存され、随時参照できるように
なる。これだけでもなかなか素晴らしい機能であると言えるが、さらにこのシステ
ムでは、Neatline上でこのMirador上のIIIF対応画像を地図にマッピングし、表示さ
せることもできるようになっている。Neatlineは、Open Street MapやGoogle Map上
にOmekaのアイテムをマッピングして表示することができるプラグインでありヴァー
ジニア大学図書館が中心となって開発しているものだが、これがMiradorと組み合わ
せられることにより、地図上に小さな画面のMiradorが表示され、適宜画像の全画面
表示もできることになったのである。OmekaやNeatlineは、成果を提示するだけでな
く人文系の教育にも広く用いられているツールだが、ここにIIIF/Miradorが組み合
わせられたことにより、世界中のIIIFコンテンツを容易に教育利用できるようにす
る環境が整いつつあると言えるだろう。まだこのプラグインは公開には至っていな
いため、早期の公開を期待したいところである。

 もう一つ興味深かったものに、ロヨラ大学メリーランド校のJeffrey Witt氏によ
るスコラ哲学のテクストアーカイブにおけるIIIF連携についての発表があった。こ
こでは、スコラ哲学のテクストがRDFで記述されているが、それとともに、デジタル
翻刻されTEI(Text Encoding Initiative)ガイドラインに準拠してマークアップさ
れた校訂テクストのデータがIIIF対応の各一次資料画像とリンクされており、それ
ぞれに拡大縮小もできるようになっていた。(例: http://scta.lombardpress.org/text/lectio1
)現時点ですべてができているわけではないようだったが、システム上はすでに利
用可能なものになっており、今後はデータを整備していけば画像とリンクしていけ
るようであった。IIIFは元々西洋中世写本の画像を利用しやすくすることから始ま
ったようであり、その意味では、当初の理念に近い活用方法であるということもで
きるだろう。もちろん、各地の文化機関に散らばっている一次資料の画像がIIIF対
応で公開されるたびに、このサイトからのリンクが行われ、より正確に、元の資料
にたどっていける環境ができあがっていくことになる。システムとしてはよくでき
たものであり、また、ここではテクストデータがTEIに準拠してきちんと構築されて
いることが功を奏していた。ただ、このような場合、筆者は、システムのことはわ
かってもコンテンツとしての評価ができないため、スコラ哲学の専門家のご意見も
拝聴したいと思っている。

 ハンズオンワークショップでは、スタンフォード大学が提供するMirador利活用サ
イトを用いたMiradorの活用方法が扱われた。このシステムの今のところの目玉機能
は、Miradorにブックマーク機能であり、それがこのサイト上に保存されるという点
だろう。公開モードにすれば、そのブックマークされたビューを公開することもで
きるようだった。このシステムでは、各地のManifest URIを自分の領域に保存して
自分のコレクションを作成し、その上で、今見ているビューをブックマークするこ
ともできる、というものであった。ただし、このサイトがHTTPSで動いているため、
Manifest URIやIIIF対応画像もHTTPSで公開されているものしか受け付けず(これは
主にWebブラウザが課している制約によるものである)、フランス国立図書館をはじ
め、HTTPS化していないIIIF対応画像を活用できないところがやや残念であった。が、
むしろ、今後、IIIFを採用する場合にはHTTPSでの公開が必須になると考えた方が良
いという事例として受け止めるべきだろう。

 最後になるが、Miradorは、現在の公式版では、頁をめくっていく方向が左⇒右し
か対応しておらず、日本や東アジアのコンテンツにとっては不便な面がある。今回
のソースコード検討会では、その点についても議論が行われ、優先順位を上げてご
く近いうちに採用するということになった。これにあわせ、とりあえず筆者がその
ためのソースコードを提示するということになり、サンプルを作成した。ご興味が
おありの方は、参照されたい( http://digitalnagasaki.hatenablog.com/entry/2017/05/07/223929 )。

 これ以外にも興味深い話は色々あったが、今回はここまでとさせていただきたい。
3日間もの間、ひたすらMiradorについて議論するという濃厚な会合だったが、
Miradorだけでなく様々な周辺領域についての議論もすることができ、個人的にも実
りのある会だった。今後、この成果を、様々な形で国内外に還元していけたらと思
っている。

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 配信の解除・送信先の変更は、
    http://www.mag2.com/m/0001316391.html
                        からどうぞ。

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◆編集後記(編集室:ふじたまさえ)
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 今月の人文情報学月報はいかがでしたか?今回は特に巻頭言で、人文情報学とは
何か?を考えたうえで、連載を読み進めると、実践して再体験して理解できるとい
う事例が紹介され、後編でさらに最新の技術面も含めた応用事例を読めるという感
じで第70号という節目にぴったりな構成だったように思います。ご寄稿いただいた
皆さま、ありがとうございました!

 70号分を積み重ねても、創刊当初から変わらない部分と、どんどん進化していく
部分があるということがよくわかる内容でした。引き続き、さまざまな視点からの
ご寄稿をお待ちしています!

次号もお楽しみに。

◆人文情報学月報編集室では、国内外を問わず各分野からの情報提供をお待ちして
います。
情報提供は人文情報学編集グループまで...
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人文情報学月報 [DHM070]【後編】 2017年05月30日(月刊)
【発行者】"人文情報学月報"編集室
【編集者】人文情報学研究所&ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)
【 ISSN 】2189-1621
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【サイト】 http://www.dhii.jp/

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