ISSN 2189-1621

 

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DHM 151 【後編】

人文情報学月報/Digital Humanities Monthly


人文情報学月報第151号【後編】

Digital Humanities Monthly No. 151-2

ISSN 2189-1621 / 2011年08月27日創刊

2024年2月29日発行 発行数1117部

目次

【前編】

  • 《巻頭言》「「主語」・「述語」・「目的語」で歴史を表現する
    太田(塚田)絵里奈東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
  • 《連載》「デジタル・ヒストリーの小部屋」第19回
    デジタル解釈学・トランスメディア・Thinkering:歴史家 Andreas Fickers
    小風尚樹千葉大学人文社会科学系教育研究機構

【後編】

  • 《連載》「仏教学のためのデジタルツール」第15回
    Cologne Digital Sanskrit Dictionaries
    井野雅文SAT 大藏經テキストデータベース研究会
  • 《特別寄稿》「Elena Pierazzoによる「3. Modelling Digital Scholarly Editing: From Plato to Heraclitus」(『Digital Scholarly Editing: Theories and Practices』所収)の要約と紹介
    塩井祥子早稲田大学大学院文学研究科
  • 人文情報学イベント関連カレンダー
  • 編集後記

《連載》「仏教学のためのデジタルツール」第15回

仏教学は世界的に広く研究されており各地に研究拠点がありそれぞれに様々なデジタル研究プロジェクトを展開しています。本連載では、そのようななかでも、実際に研究や教育に役立てられるツールに焦点をあて、それをどのように役立てているか、若手を含む様々な立場の研究者に現場から報告していただきます。仏教学には縁が薄い読者の皆様におかれましても、デジタルツールの多様性やその有用性の在り方といった観点からご高覧いただけますと幸いです。

Cologne Digital Sanskrit Dictionaries

井野雅文SAT 大藏經テキストデータベース研究会

今回は Cologne Digital Sanskrit Dictionaries (https://sanskrit-lexicon.uni-koeln.de/) について紹介する。このサイトはドイツ連邦共和国のケルン大学インド学・タミル語研究所により1994年から提供されているものであり、主要なサンスクリット語辞書のデジタル化データを集成し、検索機能を装備したものである。

19世紀以降、主に英、独、仏といった諸国において学術的なサンスクリット語辞書が相次いで編纂された。その中には今日もなおサンスクリット語の学習および文献研究のための標準ツールとなっている辞書も含まれている。Cologne Digital Sanskrit Dictionaries にはサンスクリット語関連の辞典42種が収録されている。

収録されている辞典の一覧表は上記の URL にアクセスすることで参照できるので、本記事ではそのうちの主な辞典について簡単に紹介する。

  • Monier-Williams Sanskrit-English Dictionary 1899
    モニエル梵英辞典として知られる、おそらく日本のサンスクリット学習者の間で最も広く使用されている標準的な梵英辞典である。編者の Monier-Williams (1819–1899) は師であった Wilson の後継者として英国オックスフォード大学でサンスクリット語を講じた学者である。この辞典には18万語以上が収録されており、それぞれの単語の項目は多くの派生語を含み、出典が逐一略号で記され、所々に語源に関する他の印欧語との比較情報が付記されている。基本的に例文は無い。情報量が多いため、初学者には却って使いにくく感じられる可能性がある。序文には言語学的な考察やインド文字の発展に関する解説が含まれており、それもオンラインで参照することができる。この辞典は何度か改訂が行われているが、Cologne Digital Sanskrit Dictionaries には1899年版と1872年版が収録されている。

  • Apte Practical Sanskrit-English Dictionary 1890
    モニエル梵英辞典と並んでサンスクリット学習者に広く使われているのがこのアプテ梵英辞典である。モニエル梵英辞典と比較して内容は簡潔であり、大まかな意味に基づいて訳語が分類され、それぞれに番号が振られて整理されており見易い。例文が豊富に収録されているのが大きな特徴である。編者Vaman Shivram Apte (1858–1892) はインドのサンスクリット学者である。先行する Wilson, Monier-Williams, Böhtlingk 等による梵語辞典編纂の業績を評価しつつも、その価格が高価であり、内容に関しても不満足な点があるため、より実用的な梵英辞典を自ら編纂するに至ったという経緯がその序文に記されている。巻末付録としてサンスクリット語の韻律に関する解説が収録されており、その内容もオンラインで参照可能である。

  • Böhtlingk and Roth Grosses Petersburger Wörterbuch 1855
    この梵独辞典は19世紀ヨーロッパにおけるインド学最大の研究成果ともいわれる7巻に及ぶ大辞典である。ドイツ語圏を中心に今も広く使われている。編者 Otto von Böhtlingk (1815–1904) はロシア生まれのドイツ系インド学者である。この辞典はモニエル梵英辞典などとは異なり、インドの伝統的解釈学や文法学者の権威を考慮せず、言語学的見地に基づく方針で編纂されている。例文が多く収録されている。Cologne Digital Sanskrit Dictionaries には例文を省略した縮約版である Böhtlingk Sanskrit-Wörterbuch in kürzerer Fassung も収録されている。

  • Macdonell Sanskrit-English Dictionary 1893
    上記の諸辞典に比べて小型のものであるが、日本で編纂された梵和大辞典 (いわゆる荻原梵和辞典) のベースとなった梵英辞典である。編者 Arthur Anthony Macdonell (1854–1930) は Monier-Williams の後任としてオックスフォード大学でサンスクリット語を講じた人である。本辞典はモニエル梵英辞典などに比べ、出典や活用形の情報が省略され、例文もほぼ無く、単語の説明がやや簡略であるため、学習用としては使い勝手が良いと感じられるかもしれない。

  • Edgerton Buddhist Hybrid Sanskrit Dictionary 1953
    Buddhist Hybrid Sanskrit (仏教混淆梵語) とは仏典の主に韻文の部分に見られる特殊なサンスクリットのことである。編者は米国の言語学者 Franklin Edgerton (1885–1963) である。仏教混淆梵語は初期大乗仏典にしばしば現れるものであり、本辞典はその分野の研究には必須の資料となっている。

  • Grassmann Wörterbuch zum Rig Veda 1873
    ヴェーダ聖典の古層にはパーニニが古典サンスクリット文法を確立する以前の言語学的な情報が含まれている。この梵独辞典はリグヴェーダに特化した辞書である。著者の Hermann Günther Graßmann (1809–1877) はヴェーダ研究を始める以前は数学者であり、外積の概念の導入や線形代数の研究者としても歴史に名を残している。

当該サイトの収録辞典一覧表において、各項目に付されている B, L, A, M, D などの記号の意味は次の通りである。

  • B: Basic Display. 基本的表示。入力された語に対応する項目のみが表示される。
  • L: List Display. 一覧表表示。入力された文字列を語頭に含む単語の一覧が表示され、そのうちの一つを選択すると該当する項目が表示される。
  • A: Advanced Search. 発展的検索。語頭、語中、語尾に含まれる文字列により検索が可能。また、逆引き検索も可能 (例えば梵英辞典では deity という英単語から、それに対応する deva などの原語や、説明文に deity が含まれる項目を検索できる)。
  • M: Mobile Friendly Display. 携帯端末適合表示。小型端末に適応するように表示を簡略化したもの。ただし、上記の Basic Display に対応する機能のみである。
  • D: Download. ダウンロード。辞書データをダウンロードする機能。
  • S: Scanned Images. スキャン画像。入力された文字列を語頭に含む単語の一覧が表示され、そのうち一つを選択すると該当するページのスキャン画像が表示される。
  • SD: Semi Digital. 半デジタル。入力された文字列を語頭に含む単語の一覧が表示され、そのうち一つを選択すると該当するページのスキャン画像の該当項目が黄色い背景により強調表示される。(Stchoupak 梵仏辞典のみ)

さらに、サンスクリット語の学習者や文献研究者にとって利便性の高い機能として、Monier-Williams Sanskrit-English Dictionary を基本データとする inflected forms、すなわち、動詞の活用および名詞/形容詞の格変化の検索機能が提供されている。例えば、動詞語根 gam(行く)の活用形の一つである gacchet を検索すると、当該動詞の願望法 (optative) の活用表が表示され、能動態3人称単数である gacchet が赤い文字で強調表示される。また、gam の過去分詞(中性主格、対格または男性対格)である gatam を検索すると、分詞であるため形容詞相当の語と解釈されて、その単数、両数、複数に対応する格変化の表が表示される。

このサイトに収録されている辞書の多くは大冊であり、高価であったり、入手困難であるため、このような形でウェブ上で容易にアクセス可能となっている意義は大きい。サンスクリット語習得を志す日本人の学生は英語はともかく、ドイツ語やフランス語に十分習熟していないことが少なくないと思われるが、内容がデジタル化されていれば機械翻訳と併用することで、おおまかな内容を容易に読み取ることができる。その意味でも有用なツールといえよう。

なお、収録されている辞書データについて修正意見がある場合は、各辞典の”Corrections”から送信することができ、GitHub でも受け付けている (https://github.com/sanskrit-lexicon/)。

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《特別寄稿》「Elena Pierazzo による「3. Modelling Digital Scholarly Editing: From Plato to Heraclitus」(『Digital Scholarly Editing: Theories and Practices』所収)の要約と紹介

塩井祥子早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程

Elena Pierazzo による本章[1]は『Digital Scholarly Editing』の理論篇の第2章に位置し、印刷出版によって形成された「ただ一つのテキスト」文化(原語は one-text culture)下の学術編集に対する批判的検証を通じて、テキストが本来持つ多様性を表現する適切な形式としてデジタル環境を挙げ、その特徴について論じながら次世代の学術編集に要求される態度について述べるものである。

テキストには複数のバージョンが存在しており、揺らいだ状態にある。著者は、そうした現実がテキストの信頼性に対するある種の疑念を呼んだことによって、多くのテキストの中から「唯一の、真の、「公式」バージョン」を作り出すことが編集作業の目的となったと述べる。こうしたテキストの揺らぎは著者曰く「印刷術が発明される以前は、テキストの違いは(中略)手作業によるコピーにおいて生じ得る写し間違いや写字生による考案」によって生じ、印刷技術が発明されてからは、印刷の過程で起こりうる「「災難」(誤りの訂正や混入、書式の組み換え)」や、出版社内における編集活動、現存する著者の草稿によって生じており、テキストが本質的には多様であるという事実が喚起されてきた。

上記のような性質があるにもかかわらず、出版においては単一の権威あるテキストを作成することに重きが置かれてきた。こうした動きの起源として、著者は15世紀イタリアの事例から、印刷技術の発展による同一テキストの大量生産が、テキストの品質に投資することを可能にしたこと、それに Lorenzo Valla や Agnolo Poliziano ら当時の人文学者が提唱した文献学的技術が合わさることで、思想の媒介となると同時に商業的価値を持つ商品となったこと、また爆発的な読書人口の増加によって、読みやすさの基準の導入が進められたが、テキストの多様さを受け入れられる状態ではなかったこと、という諸条件により、出版人と学者は権威あるテキストの提供を追求する様になったと述べる。ここに「「ただ一つのテキスト」という文化は誕生」したのである。

しかし「ただ一つのテキスト」文化は、20世紀初頭のラハマンによる文献学の方法論に対する批判や、1980年代半ばの Bernard Cerquiglini、 D. F. Mckenzie や Jerome McGann らの研究によるテキストの多様性への注目から亀裂を生じるようになる。これらの研究において、異文を生み出す写本はそれ自体として研究されるべきものとして扱われ、こうした認識は生成批評にも深い影響を与えた。ここにおいて、「テキストの多様性認識に基づく新しいテキスト理論は、その多様性を読者に提示できる自然な媒体、すなわちデジタル環境を見出す」のである。

ここで著者は再度「ただ一つのテキスト」文化の産物である学術批判編集版(原語は scholarly critical edition であり、通常「批判校訂版」と訳されるが、この訳語は古典作品に使われる傾向がある。著者の議論は古典だけでなく、近代の作品も念頭においてあると考えられるため、こちらの訳語を用いることは控えた)に注目する。学術批判編集版の目的は「信頼性が高く、引用可能なテキストを提供することであり、(中略)異なる証拠資料によって証明された読みの組合せで構成される」。テキストの揺らぎである異なる証拠資料は上述のようにテキストが伝達される過程において生じることから、「批判的な編集者はテキストの伝達の結果としての多様性の意義を作成しようとし、そして批判編集版は彼らのテキストへの理解を読者に提示するために選ばれた乗り物」である。そしてそれは「著者の意図の再構築を志向するテキスト理論に基づいており、そのような意図はただ一つであると理解されている」から、一つのテキストが提供される。しかし、「テキストの伝達段階を調査する編集者の批判的編集活動を、そのような調査を提供する媒体から分離することは、理論的には可能であるはず」である。

デジタル環境は、印刷物の限界であるスペースの制限が全く、もしくはほとんどない。そのため「印刷物に対応する試みよりもはるかにシンプルで直観的、かつダイナミックな方法でバージョン内のテキストとバージョンとしてのテキストを提供することが可能になった」ことを述べ、「作品の全ての証拠資料を提示する」試みが、「編集版ではなく「アーカイブズ」と呼ばれ」ていることを複数の事例とともに紹介している。

では、デジタル環境におけるテキストとはどのようなものなのであろうか。著者は以下で挙げられる3つの特徴から、「デジタル・テキストは本質的に可変的であると定義することが出来る」と述べる。1つ目の理由としてデジタル環境における読者は「様々なデバイスからテキストにアクセスし、その形状や寸法は編集者のコントロール下になく、劇的に変化し得るという」こと。2つ目は、デジタル媒体では、最初の出版後でも容易に修正が可能であるため、刻一刻と変化するものであること。3つ目は、「異なる方法で同じテキストを表示する可能性」を持っていることであり、テキストが TEI ガイドラインなどの何らかの形式に準拠した符号化を通じて作成されている場合、ディプロマティックな表示や、異文に注目した表示など「様々な形式でテキストを表示することが可能」であることである。

著者は、Michael Sperberg-McQueen の見解―これから編集者は全てが変化する場所に適応し、また編集版には知識の蓄積だけでなく、ハードウェア、ソフトウェア環境の変化に対応して取り組む能力が必要である―を引きながら、「編集の目的は安定したテキストの構築だけではなく、テキストの様々な状態についての説明を可能とする提供の仕方へと変わる必要がある」と述べる。

これまで論じられてきたことからも了解できるように、「「再メディア化(原語は re-mediation)」は単純な置き換えではない、というのもメディアは、メッセージを深遠かつ予期せぬ方法で形成するからである。しかし長期的な影響の一部は,おそらく次の世代の間にしか理解できないだろうが、私たちは、テキスト、メディア、読者が一同に会する場に居合わせることによって、テキストとテキスト文化に関する様々でより複雑な表現を生み出すことを目指して、こうした変化を部分的には導く機会を与えられているということもできる。」デジタルの変異性はテキストの多様性にうまく対応できるかもしれないが、それは後者が認識され、受け入れられ、バグと考えるのではなく、それを特徴とする場合のみ」行われるのである。

以上、原著の表現を用いながら、紹介と要約を行った。固定されたただ一つのテキストがあるという見方から、多様かつ複数のテキストがあるという見方への変化とそれに適用した技術は、異文の存在が前提である古典作品は勿論のこと、近代以降のテキスト研究にも大きな影響を及ぼすはずである。この論考でも指摘があるように、全ての証拠資料を提示するアーカイブズが近代以降のテキストにおいても実践されている。こうした試みは、著者によって決定され出版されたと考えられている本文に対しても批判的な目を向けることにも繋がる。こうした出版文化以降におけるテキストの揺らぎの発見と、その方面への研究的関心を喚起するという観点からもテキストの「再メディア化」は大きな可能性も持っていると言えよう。

[1] Driscoll, M. J., Pierazzo, E. (Eds.). (2016). Digital scholarly editing: Theories and practices. Open Book Publishers, pp.41–58.
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人文情報学イベント関連カレンダー

【2024年3月】

【2024年4月】

  • 2024-4-4 (Thu), 10 (Wed), 18 (Thu), 24 (Wed)
    TEI 研究会

    https://tei.dhii.jp/

    於・オンライン

【2024年5月】

  • 2024-5-2 (Thu), 8 (Wed), 16 (Thu), 22 (Wed), 30 (Thu)
    TEI 研究会

    https://tei.dhii.jp/

    於・オンライン
  • 2024-5-18 (Sat)
    第135回人文科学とコンピュータ研究発表会

    http://jinmoncom.jp/index.php?CH135

    於・京都大学人文科学研究所
  • 2024-5-25 (Sat)~26 (Sun)
    情報知識学会第32回(2024年度)年次大会

    https://www.jsik.jp/?2024cfp

    於・慶應義塾大学三田キャンパス

Digital Humanities Events カレンダー共同編集人

佐藤 翔同志社大学免許資格課程センター
永崎研宣一般財団法人人文情報学研究所
亀田尭宙国立歴史民俗博物館研究部情報資料研究系
堤 智昭筑波大学人文社会系
菊池信彦国文学研究資料館

◆編集後記

年度末に向けて、人文情報学(DH)関連のイベントも増えてきました。筆者が参加したものとしては、まず、2月2日(金)~3日(土)にピッツバーグのカーネギー・メロン大学で開催された「Unicode と人文学」という会議がありました。人文学の立場から Unicode について議論するという会議で、世界中から主に非ラテン文字について研究している人文学研究者と Unicode での文字符号化の仕事に関わっているエンジニアや文字コード研究者達が集まりました。その場では「発表」はなく、参加者全員が事前に発表論文を提出した上で相互に読んでから議論に臨むというスタイルで、ひたすら熱い議論を重ねた二日間でした。筆者が出した仏典外字の符号化提案を巡る経験と課題についての論文がカナダ先住民の文字の扱いにヒントを提供できたようだったのは、まさに人文情報学における議論の面白さと言えるものでした。

2月9日(金)には人間文化研究機構の DH 推進室が主催したDH 若手の会「デジタル・ヒューマニティーズで“繋がる×広がる”人文学」というイベントがあり、全国から若手研究者が集ってポスター発表をしつつ交流する場になっていました。公的な予算措置を伴う形での、DH の研究ではなく推進をするという立場の組織は希有なものであり、今後に大きく期待したいところです。  

2月13日(火)には西洋中世学会若手セミナーとして中世研究における DH 的な研究手法についてハンズオンも含めたワークショップが行われました。TEI や IIIF は西洋中世研究における応用が盛んで、IIIF 対応の西洋中世写本は大量に公開されていますので、この分野の研究者の方々には特に効果が高いものと想像されます。対面での開催でしたが40名近くの参加があり、とても盛り上がったような感じでした。  

2月17日(土)は情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会がオンラインで開催され、10件の発表がありました。物語分析から3D、音楽分析等々様々な分野からの発表があり、筆者も TEI 古典籍ビューワの最新版についての発表をしました。  

2月19日(月)はケンブリッジ大学にてCambridge Digital Humanities が講演会を開催してくださり、SAT 大蔵経テキストデータベースについて、SAT 研究会代表の下田正弘先生とともに、近年の取組みについて発表してきました。ケンブリッジ大学図書館の方々や日本研究・アジア研究の先生方や学生の方々など、30名程集まっていただき、議論も盛り上がりました。  

これらのイベントの合間には、毎週、TEI 研究会が開催され、TEI ガイドラインの翻訳などの取組みが行われていました。  

編集後記にしてはちょっと長くなってしまいましたが、3月はもっとたくさんの DH 関連イベントが開催されます。同日に3つ開催される日もあるようで、どれに参加すればよいのかと戸惑ってしまいますね。筆者としましては、3月15日(金)に一橋講堂にて開催される、イリノイ大学の Ted Underwood 先生と J. Stephen Downie 先生を中心とした国際シンポジウム「ビッグデータ時代の文学研究と研究基盤」を推しておきたいところです。英文学の内容の研究において機械学習を活用するという米国文学研究 DH の最先端の話を同時通訳で聞ける希有な機会です。よかったらぜひご参加ください。

(永崎研宣)


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