ISSN 2189-1621

 

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DHM 078 【後編】

2011-08-27創刊                       ISSN 2189-1621

人文情報学月報
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Digital Humanities Monthly

             2018-01-31発行 No.078 第78号【後編】 707部発行

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 ◇ 目次 ◇
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【前編】

◇《巻頭言》「人文情報学と日本研究:北米からの報告」
 (ホイット・ロング:シカゴ大学准教授)

◇《連載》「Digital Japanese Studies寸見」第34回「国立国会図書館オンラインが公開」
 (岡田一祐:国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター)

【後編】

◇人文情報学イベントカレンダー

◇イベントレポート(1)「IIIF(International Image Interoperability Framework)ワークショップ in 沖縄 開催報告」
 (大谷周平:琉球大学附属図書館、ORCID iD: 0000-0003-0175-8641)

◇イベントレポート(2)「第133回MLA年次大会(MLA 2018 Convention)DHセッション参加記」
 (浜名恵美:筑波大学、東京女子大学)

◇編集後記

◇奥付

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【人文情報学/Digital Humanitiesに関する様々な話題をお届けします。】
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◇人文情報学イベントカレンダー(■:新規掲載イベント)

【2018年2月】

■2018-02-10(Sat):
第7回 知識・芸術・文化情報学研究会
(於・大阪府/立命館大学 大阪梅田キャンパス)
http://www.jsik.jp/?kansai20180210

■2018-02-14(Wed):
日本文学・国語学の学生のためのDigital Humanities勉強会
(於・大阪府/大阪大学 豊中キャンパス)
http://nichibunkokugo.blog.fc2.com/blog-entry-48.html

■2018-02-15(Thu):
情報資源利用研究センター(IRC)設立20周年記念セミナー「人文情報学の現在」
(於・東京都/東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/event/upcoming

■2018-02-17(Sat)~2018-02-18(Sun):
キックオフ・シンポジウム「デジタルアーカイブが開く東アジア文化研究の新しい地平」
(於・大阪府/関西大学千里山キャンパス)
http://www.kansai-u.ac.jp/ku-orcas/

【2018年3月】

□2018-03-03(Sat):
人文系データベース協議会 第23回公開シンポジウム「人文科学とデータベース」
(於・大阪府/大阪府立大学)
http://www.jinbun-db.com/news/23th_cfp

■2018-03-03(Sat)~2018-03-05(Mon):
国際ワークショップ「日本の古地図ポータルサイト」
(於・京都府/立命館大学 衣笠キャンパス ほか)
http://www.arc.ritsumei.ac.jp/GISDAY/2018/workshop.html

□2018-03-09(Fri)~2018-03-10(Sat):
デジタルアーカイブ学会第2回研究大会
(於・東京都/東京大学 本郷キャンパス)
http://digitalarchivejapan.org/1562

■2018-03-12(Mon):
第6回CODHセミナー 歴史ビッグデータ「過去の記録の統合解析に向けた古文書データ化の挑戦」
(於・東京都/国立情報学研究所)
http://codh.rois.ac.jp/seminar/historical-big-data-20180312/

Digital Humanities Events カレンダー共同編集人
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小林雄一郎(日本大学生産工学部)
瀬戸寿一(東京大学空間情報科学研究センター)
佐藤 翔(同志社大学免許資格課程センター 助教)
永崎研宣(一般財団法人人文情報学研究所)

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◇イベントレポート(1)「IIIF(International Image Interoperability Framework)ワークショップ in 沖縄 開催報告」
 (大谷周平:琉球大学附属図書館、ORCID iD: 0000-0003-0175-8641)

 2017年12月15日、琉球大学にて沖縄県大学図書館協議会の研修事業としてIIIFのワークショップを開催した[1]。東京大学大学院 人文社会系研究科人文情報学拠点に共催、人文情報学研究所に後援いただき、永崎研宣氏による講演とワークショップを実施した。企画者の立場から概要を報告する。

 デジタルアーカイブを巡る動向について県内の大学図書館で情報を共有するとともに、筆者の所属する琉球大学のデジタルアーカイブ事業の今後の展開に繋げることを意図して企画した。

 ここで本学のデジタルアーカイブ事業の現状について紹介させていただく。沖縄学の父と呼ばれる伊波普猷(いは・ふゆう)の文庫、近世八重山地方の行政資料を中心とした宮良殿内(みやらどぅんち)文庫、矢内原忠雄(やないはら・ただお)植民地関係資料データベースなど複数のデジタルアーカイブを公開している[2]。「使いやすい」データベースというコンセプトで、一部のデジタルアーカイブでは資料デジタル化に留まらず、利便性向上のためさまざまな付加情報をつけている。
具体的には、翻刻・現代語訳・英訳の作成、Flashを用いて原資料と翻刻した文字を重ねて表示するといった機能を提供している。また、沖縄関係資料専門のスタッフによるコラムを毎月作成しており、そこではデジタルアーカイブの資料を活用するなど利用促進に努めている。このコラムは館内と連携機関であるハワイ大学マノア校で掲示しているほか、図書館Webサイトでも公開している。

 デジタルアーカイブ事業は本学図書館の重要な事業であるが、いくつかの課題も抱えている。およそ20年に渡って外部資金獲得などで段階的に構築しており、複数のデジタルアーカイブシステムを維持している。システムによってはプラグインの開発が止まり開発当初の機能が提供できなくっているものもあるほか、2020年にはFlashのサポート終了が発表され、その対応も迫られている。メタデータも一部を除いて外部に提供しておらず[3]、アクセス経路は限定的である。今回のワークショップでは、これらの課題に対しても示唆を得ることができた。

 講演ではIIIFの概要や意義、コンソーシアムの活動や特徴的な機能が紹介された。個人的には以下の二点が特に印象に残っている。一点目は永崎氏がIIIFの普及に努めている理由の一つとして、(IIIFで実装されているわけではないが)Ukiyo-e Search[4]を見たときに現状のままでは日本の文化資源が海外から参照されなくなるのではないかという危機感を理由の一つとして挙げられた。それを打破するものとして、IIIFのコンセプトである「サイロからコンテンツを解き放つ」が語られたことである。
二点目は国際的な標準に準拠することの意義として、仕様書策定の労力が大幅に軽減できることを一例として挙げ、デジタルアーカイブの利用者だけでなく導入機関の負担を軽減するものでもあるということを強調されていた点である。二点とも本学が抱える課題と密接に関連したトピックであり、標準化の意義を改めて認識した。

 ワークショップでは沖縄の古地図をIIIF対応したものを題材に参加者でアノテーション作業を行った。身近な題材を用いていただいたお陰で参加者からも関心を持って貰えたようである。また、IIIFの機能を試すことができるデモ画面やマニュフェストファイルが整理されたHTMLファイルが配付され、その場でIIIFの機能を試すことができるだけでなく、参加者が所属機関へ還元しやすい形で実施いただいた。

 本ワークショップは県内の大学図書館職員を中心に、沖縄県立図書館・沖縄県公文書館・地域史協議会の加盟組織などデジタルアーカイブの構築運営や検討をしている組織、県内でデジタルアーカイブ構築事業を受託しているIT企業も交えて、40名の参加を得た。また、翌日16日には沖縄県立芸術大学にて永崎氏による講演「IIIFで拓く、イメージ資料活用の可能性」も開催された[5]。この両日は県内の多くのデジタルアーカイブ関係者がIIIFに触れる機会となった。
これを契機として県内機関での資料公開やメタデータの流通促進が活性化することを期待するとともに、筆者もその一端にかかわるものとして貢献に努めたい。

 末筆ではあるが、ご多忙の中、講師をお引き受けいただいた永崎氏、開催にあたり多大な配慮いただいた東京大学大学院 人文社会系研究科人文情報学拠点および沖縄県立芸術大学にお礼申し上げる。

[1] http://www.lib.u-ryukyu.ac.jp/?p=19338
[2] http://manwe.lib.u-ryukyu.ac.jp/library/okishi/
[3]宮良殿内文庫・矢内原忠雄植民地関係資料データベースはアジア歴史資料センターへメタデータを提供している。 https://www.jacar.go.jp
[4] https://ukiyo-e.org
[5] http://www.ken.okigei.ac.jp/lectures/news.html

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◇イベントレポート(2)「第133回MLA年次大会(MLA 2018 Convention)DHセッション参加記」
(浜名恵美:筑波大学、東京女子大学)

 MLA(Modern Language Association)の年次大会が、2018年1月4日(木)から7日(日)までニューヨーク市のミッドタウンの3つの一流ホテルを会場として開催された。会のプログラム等は以下のURLを参照されたい。 https://www.mla.org/Convention

 東部を襲った豪雪(snow storm)のおかげで多数の飛行機が欠航したために出席できなかった会員やキャンセルになったセッションもあるが、4日間で、討論セッション、講演等の総数は830。
この中の相当数が程度の差こそあれDHに関係している(か、その恩恵を受けている)はずだが、各国文学・時代・ジャンルなどによる分類では、DHは“Transdisciplinary Connections(TC)”の中で5つ、主題別索引では“Electronic Technology(Teaching, Research, and Theory)”の中で12(TCと重複あり)、“The Profession”の項目の中の“General”に1つがあげられているだけであった。

 シニアである筆者がDHに関心を寄せている事情を詳述することは避けるが、筆者が最初にイギリスに留学した1977~79年にすでにコンピュータを駆使した言語学や文体論が出現し、機械翻訳(machine translation)の話も耳にしていたこと、それから40年後の21世紀の日本の英語文学文化研究におけるDHの展開の遅れに強い危機意識を持っているとだけ述べておきたい。

 ADHOが主催したDH2017Conference(モントリオール)では見学するだけにしたが、MLAではセッション(実質的にはワークショップ)に参加申し込みをしておいた。

454. Digital Humanities Tools and Technologies for Students, Emerging Scholars, Faculty Members, Librarians, and Administrators
SATURDAY, 6 JANUARY 8:30 AM-11:30 AM
セッションの詳細については以下のURLを参照されたい。http://dhsi.org/events.php#DHSI@MLA

 このセッションの主宰者は、Raymond G. Siemens (Distinguished Professor in the Faculty of Humanities at the University of Victoria, in English and Computer Science).同氏の開会の辞の後で、参加者は前半と後半、2つのテーマのセッションに参加し、リーダーのプレゼンテーションに続いて質疑応答や討議を行った。

 9つのテーマが設定されていた。
1.Ctrl+Alt+Diss(伝統的な博士論文執筆とは異なる職業追求・選択の模索など)
2.DH after the Dissertation: Digital Humanities Postdoctoral Fellowships
3.DH for Department Chairs and Deans
4.Digital Humanities Tools and Technologies in the Classroom
5.Digital Mapping for the Humanities
6.On-Campus Spaces and Services for Digital Scholarship
7.Open Social Scholarship
8.Social Media for Academics
9.Project Management for Graduate Students and Early Career Scholars

 各グループ10名程度に均等に分かれた。私は4と9に参加を希望していたのだが、あいにく4のリーダーが豪雪のせいで来られなくなりセッションが開催されなかった。このセッションのdata visualization, data analytics, programmingなどの実践活動に参加することを楽しみにしていたので、非常に残念であった。急遽、前半で9を後半で3に参加することにした。

 9.Project Management(PM)のセッション。PM技術が人文学の院生や若い(early career)研究者にますます必要とされていることを前提として、プロジェクトやチームの組み方、目標・役割・責任等の明確化、コミュニケーション、交渉、リスク評価や沈静化、ソフトウェア、インターネット・リソース等々が論じられた。
筆者は長らくアメリカの大学の教科書を使用して、異文化コミュニケーション(特にコンフリクト・マネジメント)、多文化学(multicultural studies)の講義を担当してきたこともあり、DHの分野におけるPMの知識と技術の重要性はよく理解することができたし、学生に教える・経験させる必要があることもよく認識することができた。

 3. DH for Department Chairs and Deans. これは、リーダーがSiemens教授であり、参加者は欧米のDHセンター長や管理者、学科・学部長であったので、筆者は参加資格がないのだが、Siemens教授は大変フレンドリーな方であるし、同教授の本を読んでいたこともあり、シニア世代が集まっているグループでもあるので、同席させていただいた。
Siemens教授が、DH学部やセンターの管理者としての任務(リソース、評価、成功等)、DHの創設と維持、失敗経験の重要性、協力、DHの将来等について論じてから、グループのメンバーが自己紹介を行い、それぞれの課題などを述べた。私は、日本では英米文学科でDHのセンターがひとつもないことを指摘し、センターの早急の創設を望んでいるという立場を表明した。すると、Siemens教授は、日本では仏教学でDHが盛んであり、先ごろ日本の研究者と会ったと述べた(2017年11月にヴィクトリア大学で開催されたTEI 2017 Conferenceを指すと思われる)。

 筆者は、2つの質問をした。1つ目は、DHセンター長は、数百のプログラミング言語を覚えることは不可能であるとはいえ、例えばPython、Javaなどを習得する必要があるのか、またどの水準の知識やスキルが必要であるのか? Siemens教授は、これは昔からの課題で、20年前頃にHumanities Computingの領域を創設したときの苦労話をされてから、DHセンター長は、プログラミング言語を習得する必要はなく、プログラマーに任せればよいと言われた。
筆者は、安堵したとはいえ、プログラマーに仕事を依頼するにも進捗状況を確認するためにも、センター長はプログラミング言語やブログラミングについて相応の知識やスキルは必要であろうと思わざるをえなかった(そういう要望に応じる夏季研修, The Digital Humanities Summer Instituteも開催されている。例えば、以下のURLを参照されたい。 http://dhsi.org/ )。

 筆者の2つ目の質問は、multiple authorshipの問題。9でも話題になったが、筆者は数年前から人文学分野でも個人研究・単独発表・単著から(国際)共同研究・共同発表・共著が主流になるべきであると複数の学会・学術誌で指摘しているし、国内外の演劇研究を含めた人文学分野の知人・友人・研究者でも共同発表・共著をおこなう者が増えてきている。しかし、この場合に、共同成果への個人の貢献度をどう評価するかはまだグローバルな基準がない。
この問題へは、3のセクションのグループのメンバーが強い関心を示した。Siemens教授は、複数で執筆しても各自の貢献度を100%にする方法がないわけではないと示唆されたが、研究業績としてmultiple authorshipの場合の各研究者の貢献度の評価に関しては早急に指針の作成が必要であろう。

 454.DHのワークショップは、広い会場に、総勢100名前後が集まり、生後数か月の赤ちゃんを抱いた若手のリーダーが率いる活気のあるセッションから、管理職世代の重厚な議論までが展開した。多数の参加者が開放的で、各セクションで熱心に討論をしている光景は希望を抱かせてくれるものであった。

 ワークショップの他に複数のDH関係のセッション(各セッションの発表者の人数は数名から6名くらいまで)を見学した。詳細な報告は割愛するが、いくつかの興味深い主張、状況、課題等を記録しておきたい。
1)Digital publicationの倫理。出版が概して容易・迅速である反面、商業的・低レベルなものも少なくない。個人で開設・運営していた優れたwebsiteがいつのまにか閉鎖されている場合がある(開設者の引退による場合もあれば、政情不安地域のために原因不明の場合もある)。
2)ディジタル・スカラシップの最大の強みはデータの「量」である。これにより新しい洞察が得られる。他方で、膨大なデータからどれだけをサンプルに採るのかバランスを図る難しさも指摘された。
3)“How does digital visualization of information persuade, enfranchise, mystify or mislead its readers?”データのvisualizationの功罪。統計・確率の知識があればある程度までは対応・解決できる課題だろうが、DHを広めるためにはこの領域の教育を充実させる必要がある。
4)大会に参加して、多様なセッションを聞くことによって実感できたこともある。比較的に潤沢な資金がありDHセンターを運営している有力大学と、各州の公立カレッジのような一人の司書か教員の尽力でDHが何とか維持されているような弱小大学との格差の大きさである。こうした大学所属の研究者が、DHの「カリスマのあるリーダー」がいたらという願望を表明した。
文学批評史をたどれば、フェミニズム批評、新歴史主義批評、ポストコロニアル批評など、MLAを中心とする英米文学研究に大きな影響を及ぼしたカリスマのあるリーダーがいたのは事実である。また、大学上層部が外部資金を獲得してきて、現場にDHを押し付けることがあるというような話もあった。

 文学批評分野で最先端の「アルゴリズム批評」を、別のセッションと重なり聞くことができなかったことは残念だが、MLAの2018年年次大会に参加して、DHを中心として多数のセッションを見学して得るところが多かった。今回の全体テーマが“States of Insecurity”であったように政治・軍事的不安はもとより、人文学自体が危機に瀕している。この危機を乗り越えるためにも、日本では、DHセンターの開設が望まれるし、開設するにあたっては、円滑な運営ができるような仕組みを考える必要があることを痛感した。

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 配信の解除・送信先の変更は、
    http://www.mag2.com/m/0001316391.html
                        からどうぞ。

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◆編集後記(編集室:ふじたまさえ)
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 2018年最初の人文情報学月報はいかがでしたか?巻頭言をはじめ、ご寄稿いただいたすべてのみなさまに感謝申し上げます。ありがとうございます!

 あっという間に1ヶ月が経とうとしていますが、今年もさまざまな視点からのご寄稿をたくさん掲載できたらうれしいです。

◆人文情報学月報編集室では、国内外を問わず各分野からの情報提供をお待ちしています。
情報提供は人文情報学編集グループまで...
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人文情報学月報 [DHM078]【後編】 2018年01月31日(月刊)
【発行者】"人文情報学月報"編集室
【編集者】人文情報学研究所&ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)
【 ISSN 】2189-1621
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