ISSN 2189-1621

 

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イベントレポート(3) 人文科学とコンピュータシンポジウム 「じんもんこん2011「デジタル・アーカイブ」再考‐いま改めて問う記録・保存・活用の技術‐」

◇イベントレポート(3)
人文科学とコンピュータシンポジウム 「じんもんこん2011「デジタル・アーカイ
ブ」再考‐いま改めて問う記録・保存・活用の技術‐」
http://www.jinmoncom.jp/sympo2011/
(永崎研宣:一般財団法人人文情報学研究所)

 2011年12月10日~11日、京都駅にほど近い龍谷大学大宮キャンパスの、重要文化
財として指定されながら今なお現役として活用される校舎にて「じんもんこん2011
「デジタル・アーカイブ」再考‐いま改めて問う記録・保存・活用の技術‐」が開
催された。情報処理学会・人文科学とコンピュータ研究会によって毎年開催される
シンポジウムとしてすでに十数回を数える「じんもんこん」は、人文科学における
コンピュータの応用に関して、より幅広く、より高度な議論の場を形成すべく、有
志のプログラム委員による査読を経た発表と開催校による特別プログラム等といっ
た形で毎年開催されてきた。本年は、龍谷大学と花園大学の共催という、ともに仏
教資料のデジタル化に力を注いできた大学によるものであり、特別プログラムはそ
れにふさわしいものであった。龍谷大学はブリティッシュライブラリーが主催する
国際敦煌プロジェクト( http://idp.bl.uk/ )にはやくから参加するなど、仏教に
関わる資料のデジタル画像がとくに有名である。また、花園大学では、国際禅学研
究所( http://iriz.hanazono.ac.jp/ )による電子達磨や花園明朝フォントなど、
禅学に関わるテクストの電子化に先進的な取り組みを行ってきており、その一方で、
文学部では情報歴史学を提示し教科書を出版するなど、この分野での教育にも力を
注いでいる。このような二つの先進的な大学の共催によるシンポジウムは、とりわ
け特別プログラムにおいてその魅力が発揮された。特別セッション「大規模災害に
際し人文科学とコンピュータ研究がなしうること」では、東日本大震災を受け、文
化資料の保存と活用についての現在の取り組みと課題が紹介され、当該分野の研究
者からの様々な問題提起が行われた。そして、「仏教資料のデジタル化と公開・活
用をめぐって」では、龍谷大学・花園大学のそれぞれのこれまでの仏教資料のデジ
タル化と公開に関わる国際的な幅広い取り組みと今後の展開についての紹介があり、
また、研究・教育においてそうした資料をいかにして扱うかということについての
様々な議論が行われた。

 個々の研究発表は、発表数が多かったため、2会場に分かれ、パラレル・セッショ
ンという形で行われた。全発表数60のうち、対象とする資料の種類で見た場合には、
テクスト研究に関わるものが30、それ以外には、画像、音声、舞踊、地理情報、メ
タデータなどがあり、分野として見た場合には、文学、国語学、言語学、歴史学、
博物館学、仏教学、舞踊学、美術史学等、多岐にわたる分野に関わるものがあった。
大学院生による発表も多くみられ、この分野の将来が期待されるところでもあった。
また、Linked Open Data(LOD)に関わる発表が増えてきており、今後これが人文学
にどのように応用されていくかということも注目されるところである。なお、これ
らの発表の論文については、すでに無料で公開されている。情報処理学会電子図書
館( https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ )より、「シンポジウム」→「シンポジウム
シリーズ」→「じんもんこんシンポジウム」→「2011」とリンクをたどっていくと、
個々の論文がPDFで閲覧できるようになっている。

 じんもんこん2011は、参加者総数187人と、なかなかの盛り上がりを見せただけで
なく、例年以上にTwitterへの書き込みが多かった。これをまとめたものが以下のURL
から閲覧できる。もちろん、会場での議論を再現しているのではなく、あくまでも
それについての(ほぼリアルタイムな)感想が拾い上げられているに過ぎないが、
会場の雰囲気を垣間見せるものとしては有用だろうと思われる。あわせて参照され
たい。

・じんもんこん2011 開催前~初日
http://togetter.com/li/226013

・じんもんこん2011 2日目~終了~その後
http://togetter.com/li/226440

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