ISSN 2189-1621

 

現在地

人文情報学

《巻頭言》「デジタル化の粒度と人文情報学」

◇「デジタル化の粒度と人文情報学」
 (上地宏一:大東文化大学)

人文情報学において、人文情報のデジタル化は重要なトピックであり、多くの研究
者が関与しています。デジタル化というのは例えば音声情報の場合、標本化:アナ
ログ波形を一定間隔でサンプリングすること、量子化:サンプリングした波の強度
を(整)数値で表現すること、および符号化:決められた方式を用いて実際にデー
タ化する、の3段階となっています。文字情報の場合、文字コードと呼ばれる文字と
数値を1対1で結びつける表をもとに文字列を数値列に置き換え、その後符号化によ
りデジタルデータとなります。いずれにしても情報を数値化することがデジタル化
の本質です。

《巻頭言》 「人文情報学とコンピュータサイエンスのプリンシプル:IPSJ-ONE観覧記」

◇《巻頭言》
「人文情報学とコンピュータサイエンスのプリンシプル:IPSJ-ONE観覧記」
 (大向一輝:国立情報学研究所)

 2015年3月17日、京都大学にて情報処理学会第77回全国大会の併設イベント
「IPSJ-ONE」が開催された。IPSJ-ONEは、若手研究者が1名あたり5分の持ち時間で
一般向けに自身の研究のエッセンスを紹介するという形式で、同学会傘下の研究会
の中から推薦・審査を経て選ばれた19名が登壇した。当日の模様はニコニコ生放送
を通じてインターネット配信され、数万人がリアルタイムで視聴し、多数のコメン
トが寄せられた。現在はニコニコ動画にてアーカイブを見ることができる[1]。

《巻頭言》「文学部教員から見た人文情報学」

◇《巻頭言》「文学部教員から見た人文情報学」
 (小林正人:東京大学文学部)

 大学生の時なけなしの貯金で買ったMS-DOSのパソコンでawkを学び始めて以来、自
分なりに工夫してコンピュータを人文学に使ってきたため、人文情報学という言葉
をはじめて聞いたときは、かすかな違和感を覚えた。十六、十七世紀にヨーロッパ
の大学を人文主義が席巻したとき、旧来のスコラ的人文学は長い闘争の後、消えて
いったという。人文情報学というときも、ただの人文学と人文情報学の二種類があ
って、前者はいずれ駆逐される遅れた人文学という言外の意味を感じるのは、文学
部教員の妄想だろうか。そう考えていると、文学部の先輩で、筆者よりはるかに先
端的な情報技術の活用をしてこられた苫米地等流先生の記事を本誌10号で読み、人
文情報学の専門家にもよく似た懸念があることを知った。人文学から見える人文情
報学について自分でももう少し考えてみたい。

RSS - 人文情報学 を購読